桜の花の散るころ | せんたろうのブログ

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こんにちわ。いつの間にか歳を重ねていろんな経験をしてきましたが、まだまだ生涯学習の勢いで頑張ってます。
 
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 いままで自由な服装で、ファションにまったく疎い僕は毎日同じようなトレーナーとジーンズで、通っていた。
 同級生は毎日個性的なコーディネイトで、学活前にはファッションショーが繰り広げられていた小学校は3週間前に「蛍の光」と共に後にした。

 これからお世話になる一回り大きな体育館で行われた採寸はつい1ヶ月前だった。
今日着ている新しく出来上がった学生服は、腕の指先さえ隠れてしまうサイズを測ったと思えないようなブカブカ。

 僕の入学式は必ず雨が降る。せっかくのお祝いにと咲いてくれた沿道の桜たちも、はなびらが雨にうたれ震えていた。

 水溜りのできた新しい通学路が、おろしたての白いシューズを、まだ履いて1時間も経っていないのに泥だらけした。

 これからお世話になる新しい運動場と傘越しにあいさつを交わして、新入生の集合場所へと急ぐ。

 今日から中学生。まばらだけども周りには、この前まで同じ小学校に通っていたおなじみの顔が、同じようにブカブカの学生服をおんぶしていた。
 みんな同じ学生服を着ている。これから始まる新しい生活と出会いに緊張感が一気に高まった。

 最初の関門。

入学式の前に、体育館の入り口に張り出された新入生全員の名前。ニュータウンと駅前に急速に立ち並んだ高層マンションが、この中学を近年一気にマンモス校にした。
 1学年10クラス。400人以上の名前のなかから自分の名前を探し出す。

「あったー、4組やー。あっもりやんと同じクラス。」
「えー、8組。なっちゃと離れるのいややー。」
まだ規律の知らない同級生達の歓声が、雨音さえかき消していた。

「名前とクラスを確認したら、館内にお入りください。」若くて少しイケメンの先生が、ハンドマイクで呼びかけを始めた。

 ぼくも『坂本』という名前をさがす。

..「あっ、3組..、えっ健二じゃない...。もっと後ろ。」
..「あっ、8組..、大輝じゃない。...」
9組まで見終わったとき、
..「おっ、10組かぁ。一様確認のため....坂本、坂本...」
 小林の次が佐々木になっていた。
..「えっ...ない?うそ。なんで?...あっそうか8組かぁ。名前を間違えた。」

「大輔、あった?」と母。
「いや、それが8組だと思うけど、名前がまちがってんねん。たいきになってる。」と自信なさげに報告。
「えっ、なんて?」
「...名前、間違っている。8組やけど」もう、心は8組になっていた。
「えっどこ?」
「こっち..」といいながら、母を連れて掲示板へ。
「あらー、これはあかんね。ちょっとここで待っといて。」
「うん。」
..「もうええやん、名前間違ったくらいで。どうせ上から3つ目までは合ってるし...」
次々、名前を確認した同級生は体育館のなかに入った行った。出遅れたような気持ちが、不安を掻き立てた。

ずいぶん長く感じられた。時間にしたら5分ほどなのに。
8組って誰がいるんだろうと張り出された掲示板をぼんやり見つめていると。
しばらくして戻ってきた母は、すこし呆れた様子で
「大輔、こっち...」
「うん」
連れて行かれた先には、年配のすこし貫禄ある先生らしい人。後にわかったが、学年主任だった。
「坂本さん、大変申し訳ありません。1組に入れておきましたから..」
..「入れておいた?どういうこと?8組じゃないの?」
「8組じゃないの?」もう心は8組になっていた。
「あのね、抜けていたらいんよ。よかった言いに行って。」
「うん。」さすが大人って思った。一緒に来てくれてなかったら、8組の席に座って、実際にいた「坂本大輝」と出くわして、泡を吹いていだろう。

入学式当日に僕の君と出会うための第一関門は、あの学年主任の先生が振ったサイコロで決まったんだ。

(つづく)