逮捕までいってしまいましたね。

 私はこの人とは学校時代に面識があった。10年前、業務でリスク管理体制強化を検討することになり、任用したコンサルタントとしてテーブルの向こう側に彼がいた。顔合わせ後、直ぐには気がつかなかったが、履歴をみて思い出した。日銀退職-独立の話は風の便りに聞いていたが、「頑張っているなぁ」と改めて感心したものだ。

 もっともコンサルの内容はやや不十分だった印象がある。これは仕方のないところがあって、いろいろとリスク分析を試みても、事業法人のリスクは金融系のそれに比べて定量化が難しいし(流動性が全く違う)、彼の会社自体が会計事務所でないこともあり、仮に対応できるリスクがあっても会計上に落とし込むにはまた別の判断が必要だったからだ。そういう点から、彼の会社は金融とかトレーディング系のみに中核能力があったのだろう。

 その後はニュースでいろいろと露出していたが、評論家に留まっていればいればいいのに、実際の経営にいってしまったところが大きな蹉跌だったのか。

 事業法人向けのコンサルタントとしては決して最適解を提供できず、純粋金融の世界で理論を展開することは得意としていた木村氏が、リスクの高く評価の難しい中小企業向けの貸し出しビジネスで躓いたのはなんとも平仄が合いすぎる。

 当時も彼のコンサルタント会社の社員は「社長の人遣いが荒い」と愚痴っていたのを覚えているが、今回報道で漏れ聞く経営スタイルはその延長のようにも思える。ここでも平仄が合ってしまっている。しかし、管理体制整備は、執行箇所/管理箇所/決済箇所の分離こそが肝心ですよ、と力説していた彼が、自分の興した銀行ではまるでかけ離れていた運営をしていたのには、舌と身体は別物なのか、との思いを禁じ得ない。

 そもそも、コンサルタント業が儲かる、メディア露出が多かったといっても、振興銀行の実質創設者になれる程稼げるのだろうか?という疑問を抱いたこともあったが、どうなのだろう。ここまで捜査の手がのびたのは、政権交代、特に亀井大臣が金融相についたことと何か因果関係があるのだろうか。

 皮肉ではなく、洗いざらい白日の下に晒して、リスク管理、コンプライアンスの神髄を語ってほしいものだ。