数学講師ですが、一番好きなのは漢文かもしれません。
高校生の頃、代ゼミの本部校で中野清先生の授業を受けていたことが大きく影響していると思います。
漢文は中国語の古典ですが、聞くところによると、中国では古典をあまり勉強しないようです。
数千年の歴史を持つ古典を学ばないのってもったいないなと思います。
また、中国語を日本語の文法に変換しようと思った昔の日本人もすごいですよね。
そこまでして、中国の優れた文化を学ぼうと思っていたのでしょう。
郭若虚「図画見聞志」
山口大学の2005年度の漢文からになります。
あらすじを書きます。
ある偉い人が掛け軸を手に入れ、虫干しをしていました。
軸は牛や虎の絵を得意とした有名な画家の作品で、この軸には闘牛の絵が描かれていました。
偶然そこへ年貢を納めるために小作人がやってきます。
小作人は、偉い人が愛でている掛け軸を見て笑ってしまいます。
これを見た偉い人はカチンときます。
小作人を呼びつけてなぜ笑ったのか聞きます。
聞くと言っても「マトモに答えられなかったら許さないぞ」という感じです。
小作人は答えます。「この牛はおかしいです。牛は闘うときには尻尾を後ろ足の間に挟みます。しかし、この絵の牛は尾を立てています。それゆえ笑ったんです」と。
偉い人は恥ずかしく思ったのかもしれませんが、そのあとの記述はありません。
ただ、筆者の感想が書かれています。
絵描きの才能はすごいとしても、小作人の普段から見ている景色には及ばないと。
入試問題の言いたいこと
入試問題には学校からのメッセージが込められていると思います。
この問題から伝わってくることはなんでしょう?
例えば、ある程度の知識を持って塾講師も予備校講師も教えています。
一流であれば生徒からも同僚からも素晴らしいとされていることでしょう。
とはいえ、その分野を本当の意味で極めたような人間から見たら、笑ってしまうような指導をしているかもしれません。
つまり、一流とされている講師だとしても、知らないことや勘違いもあるはずです。
自分の無知を認め努力すべきだということになるのだと思います。
受験生に関して考えてみましょう。
簡単に言ってしまえば「合格したくらいで調子に乗るなよ」という感じでしょうか。
合格したのだから浮かれるのも分かります。
ただ、これから学ぶことからみたら現状は「笑われる程度だ」とのメッセージなのかもしれません。
いつまでも勉強は続けましょうねということなのでしょう。