今回の記事は豊島岡女子学園中学校の2018年の入試問題からになります。
入試の国語の問題には学校からのメッセージが込められていると思っています。
入試問題を見ればどのような生徒に入学して欲しいのかが読み取れます。
場合によっては学校から見た保護者の理想像が書かれている場合もあります。
そのような意味で、親子で様々な学校の問題を見ておくのは非常に有効な受験対策になります。
基本的に中学受験をすれば6年間同じ学校に通うわけですから慎重に選ぶべきだと思います。
確かに進学実績や偏差値をメインに考えれば単純な話です。
しかし6年間は短くありません。
さらに言えば、進学実績は「先輩たち」の結果です。
最終的に近いレベルの大学には進学できるとは思いますが、そうならない場合も多々あります。
学校見学も重要ですが「入試国語」は学校が求める人物像を色濃く反映しているはずです。
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さて、豊島岡の問題を見てみましょう。
榎本博明「『やさしさ』過剰社会 人を傷つけてはいけないのか」からになります。
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以前に書いた女子学院中学校の入試問題とは全然方向性が違います。
女子学院の方は「読解力」に特化した問題だと思われます。
つまり問題文を読んでいるときに自分の考えを持つようなことがほとんどないと思われます。
言い換えれば、文章の好みでの点数の変化が表れにくい問題です。
それを根拠にいえば「読解力」を純粋に見ようと考えたものだと思います。
一方、今回の豊島岡の方は学校からのメッセージが強烈に表れた問題だと思います。
さらに言えば、求める生徒像というより保護者に対してのメッセージだと思われるような内容です。
豊島岡を受験予定でしたら必ず数年分の国語の文章は読んでおくべきです。
内容
前置きが長くなりましたが中学受験の国語も教える人間として伝えたいことが多い「教材」だと思っています。
この文章は「親子関係」についての話です。
現代文特有の「二項対立型」になります。
対比しているのは「やさしい親」と「厳しい親」になります。
簡潔に言ってしまえば出題範囲だけで見ると豊島岡の求めている保護者像は「厳しい親」だと読み取れます。
確かに新興の進学校ですから大学入試に向けて「どのような子が受験に強いのか」を逆算しての考えだと思われます。
問題の選択肢に関しても「やさしい親」に対して批判的なものが正解になる傾向がみられます。
問1に関して言うと文頭にある「厳しく育てるもの」とは何かと聞いていますが、答えは中盤以降にあります。
育てるものは「自立の力」だとある意味先制攻撃を仕掛けてきています。
言い換えれば、この学校の求めているのは「自立の力」なんだと思います。
逆に言うと、甘い保護者に育てられたような子どもは向いていない学校だともなります。
「やさしい親」と「厳しい親」を対比させながら話は進んでいきます。
また、厳しく育てるべき理由については「将来の人間関係」を挙げています。
「子どものころにしつけられないと社会生活が上手く営めない」と考えているようです。
実際の入試問題を是非読んでみてください。
塾講師論
入試問題には全く塾講師の話は出てきませんが「親」を「塾講師」に読み替えてみると非常に面白い話になります。
つまり「生徒の機嫌をとってやさしく振舞う」ような講師は否定されていると考えてよいと思います。
「親子関係」とは「深い結びつき」だと書かれている部分を「師弟関係」に読み替えれば「やさしい講師」は生徒と深い結びつきができていないのだと思われます。
「子どものため」と言葉に出すような講師は信用しない方がいいと思っていますが、根底に「子どものため」がないような指導も同様にダメな講師のすることだと思います。
最後に
非常に面白い問題です。
確かにこれを小6の子が解くのかと思うとちょっと驚くとは思います。
とはいえ面白いです。
白百合女子大学の「友だち幻想」論も面白い問題です。
こちらは大学入試の問題になりますが元の文章のレベルから考えると同等だと思われます。
この本が豊島岡で過去に出題されたかどうかは調べていませんが、今後出題される可能性の高いものだと思います。
これから夏期講習の時期になります。
後悔のないような受験戦略で合格を勝ち取ってほしいと思います。
予告
この記事を書きながら「中学入試の偏差値」「60%合格とは何か」など近いうちにと思いました。
こちらも参考にしてください。