五感教育研究所-g
去る8月4日(水)丸の内JVLケンウッドショールームにおいて、恒例のレコードとCDの音比べ、聞き比べが行われた。客席は20人も入るといっぱいになる狭いスペースだが、いつも熱気のあるコンサートを開催している。
講師はJVLケンウッド在勤、この8月で定年退職になられる萩原光男氏がレコードとCDを持参して、ジャズを中心にクラシックなどを聞き比べた。
私たち50歳以上の人たちにはレコード盤の音は懐かしく、70年代全盛を思い出す。レコードはプチプチという雑音が入り、音にも暖かみがある。それに対してデジタル音(CD)は雑音が無く、クリアな音が特徴でリアル感を追求した音である。
私が以前に音楽大学でアナログ音とデジタル音、人の聴覚と脳の認知というテーマで講義したときに、レコード盤とCDを聞き比べて生徒に感想を述べて貰った。予想はしていたが、音楽大学だけに皆耳の肥えた生徒なのだが、一部の人を除いては、レコード(アナログ音)は雑音がやかましく、心地よいと思わないが殆どだった。
それに対してCDの音は聞き慣れて、親しみやすい、心地よいと感想を述べてくれた。やはりレコードのアナログの音は殆どの人たちが初めて聞く人も多く、古くさいとか、プチプチ音がして音楽が聴きづらいというのである。
私は、これらアナログもデジタル音も聞き慣れており、音記憶として体験もある、だから耳が肥えているし、拘りもあるのです。
ところが、現在の子供たちや若者たちは生まれた頃から「電子音の洪水の中で育ち成長してきた」。これらの音環境では、デジタル音、電子音に耳がなれてしまい、アナログ音が時には喧しく感じるのだろう?
例えば、自然界の音はアナログ音なのだが、野鳥の鳴き声、樹木を風が揺らす音、川のせせらぎの音、風鈴の音色なども心地よくないと答える若い人たちが多くなってきたことに私は危機的状態も危惧している。
だから、テレビ等で「現代人の五感が危ない」と指摘しているのです。
アナログの音は雑音が多い、これらは人の聴覚の範囲を広げ、そして音に対する反応や認知力を高めてくれる。例えば私たちの聴覚では聞きづらい音などを脳の聴覚野で「補完」して聞き取ろうとする。理解するのです。
例えば、電波状態の悪い場所での電話などがそうであるように、聞き漏れした言葉などを補完能力で駆使して、私たちは補正します。そして正しく理解するのです。ところが現在の子供たちや若者たちはこの補完能力が欠如しているのは、やはりデジタル音中心で生活しているからです。遊びも一人室内に籠もり、テレビゲームやコンピュータでインターネットゲーム、聴く音楽も携帯プレーヤーだから仕方ないかも知れないが、だから自然界の音を聞き取る重要性を私は提唱している。つまり、アナログの音も理解し、体験することでこれらの能力が高まるのです。同時に脳も活性化するのである。
聴覚だけではありません。自然界に身を置けば、樹木の匂い、花々の臭い、風邪が頬を伝わる触覚、野鳥の鳴き声がどの方向から聞こえてくるのか、樹木や植物に触る。など五感を総動員して感じ取ることができます。
これら私は「野外体験、自然体験」の重要性を説いておりますが、これらは成長段階にある子供たちには重要な教育の場でもある。
私共は、これらから「五感塾」の開校を目指している。脳科学と感覚生理学を応用し、日本で初めての人の五感を刺激し、賢く、真に頭脳明晰な子供に育成することを目的とします。自然に触れ、「自然は教科書以上のことを教えてくれる」をモットーに、「生きる力を学び体験」することで、社会適応能力、判断力、観察力や洞察力といった、生きて行く上で必要な能力、子供の才能、個性を伸ばし、好奇心という最も子供たちの脳の武器である。才能を伸ばしてあげることで、精神的にも身体的にも免疫力が強く、逞しくそして人に優しい人になって頂ければと願って、五感塾の開校と構想した訳です。
進学塾で小学生の高学年から「お受験」をさせてその子の個性、才能を押しつぶし、それで高学歴と名門大学に進学したからと「生きる力、社会適応能力」コミュニケーションができないと、社会に出ても若年性鬱病が急増しているように、高学歴でプライドが高いとすぐに精神的に折れてしまい、思い悩みます。これら新型鬱病といわれ「未熟型鬱病」と言われているのです。
先ほどのアナログ、レコードの音楽が心地よく珍しい音ですと理解できるような子供たちや若者たちに成長してくれたから、感覚も精神も安定しており、五感も鋭く、勿論、生き抜く力と感性という素晴らしい能力までも体感できるようになります。
今後、私共研究所は、無音、無味、無関心、無カロリーなど様々な「無傾向」に対して、警鐘を鳴らしながら警告も含め、人の五感の重要性を提唱し続けます。そして、五感塾などの開校から、私共の後継者の育成も目的とし五感研究に励んで参ります。
五感教育研究所、主席研究員、荒木行彦