五感教育研究所-a
私は残念ながら、お酒は全くだめで飲めないが、仕事柄お酒には詳しい。本日(11日、木曜日)に日本テレビの取材から、若者のお酒離れ、ビールや日本酒などが美味しく感じないのは何故かについて説明した。
確かに、若い人たちが片手に缶ビールなど飲む姿を見かけなくなってきた。
だから上司が部下にお酒を飲みに誘っても断れるることが多いという。では、若い人たちはそんなにお酒を飲まなくなったのかというと、そうでもないのである。若い女性はさすがに片手に缶ビールは少ないが、甘い梅酒や缶チューハイなどが好まれているようである。だから、男女とも口当たりのよい飲み物、お酒が好まれている。
では、何故ビールや日本酒が好まれなくなったかというと、従来のビールより、発泡酒やゼロカロリービールなどは飲まれているようである。
これらから、若者たちの味覚が変化しているのである。刺激の強い飲み物や食材は毛嫌いされるのです。それは、幼い頃から好きな物を好きなだけ、好きな時間に食べてきた事とも関係している。
現在のように偏食傾向、ワサビや梅干しなど刺激が強い味や匂いの食材は食べられない、嫌いである。これらは子どもの頃から避けて食べると「味覚が未発達」のまま大人に成長するのである。食事でも同様に鼻にツーンと来るとか、刺激の強い食材、ワサビ、コショウ、苦み、辛みなどの刺激がある食べ物や飲み物は毛嫌いされる傾向にあるのです。
ですから、ビールはポップの匂いと苦みの味、日本酒は独特の鼻にツーンと来る味から、これらのお酒を美味しいと感じないのです。ところが、私たちは最初は口当たりや苦みや鼻にツーンと来ても、次第にこれらが美味しいと感じるようになるのです。これらを「味覚的記憶」と言いますが、美味しい味も、不味い味も体験し、記憶することで、美味しい料理や飲み物の味が一層美味しく感じるのです。これらの味覚の体験が不足しているので、ビールや日本酒が美味しく感じなくなるのです。
味覚だけではなりません。人の味覚は嗅覚、つまり匂いが大部分を担っているのです。現に、風邪などをひいて鼻が詰まった状態でご飯を食べると美味しくなく感じるのは、匂い刺激がないからなのです。
以前に何度か、目隠し、鼻をつまんだ状態でプリンとお豆腐を食べると味が分からず、全く違う食材なのに一緒に感じてしまうほどである。
ですから、人の味覚は「曖昧で繊細」なのです。人の味覚は嗅覚との関わりも深くこれらを「共通感覚」と言います。
つまり、匂いも良い匂いを嗅ぐのでなく、臭い匂いも、危険臭も嗅ぎ分けることで良い匂いがより一層心地良い香りなどに感じるのです。
これら、五感を総動員し、体験し、記憶することで五感が鍛錬され、敏感になるのです。現在のように偏った一方的な刺激が脳に記憶されているので、その記憶にない、味、臭いなどに対して極端に抵抗感を感じ、嫌うのです。
人の脳は、快感、楽しい、楽だ、美味しいなどが好きで、不快、楽しくない、辛い、不味い、臭いなどが嫌いなのです。
ですから、五感を総動員して感じる重要性がここにあるのです。美味しく感じない、食べ物も、飲み物も味わってみること、そして味の違い、好みの物だけでなく、時には嫌いな食べ物、飲み物などにもチャレンジしてみることです。
そうすれば、味覚は発達し、同時に嗅覚も発達する。人の五感は日々変化し、鍛錬しなければ衰え行くのです。
私は今後とも、五感研究から若者たちにビールや日本酒の美味しさを再認識して貰い、味わって良さを理解して欲しいと願っている。これらは和食の日本の食文化であり、伝承に繋がるのです。ご飯を食べなくなってきた若者たち、勿論、日本酒も飲まなくなってきている。
今一度、日本食を見直し、日本の食文化を守るためにも今後とも私はマスコミ等を通じて「日本食の重要性」を提唱して参ります。
五感教育研究所、主席研究員、荒木行彦