それぞれの時代に選ばれたL章作品を

振り返ることで先輩たちの思いを探ります。

 

回顧録(31

■L章作品推薦文

第三九四回(平成213) 藤村亜成

第三九五回(平成214) 森 茜

 

第三九四回(平成21年3月)

洗剤を入れて心を洗いたい

             太田 とし子

     推薦文        藤村 亜成

 今回はユニークな表現による作品を採り上げてみた。この作品の表現から九十歳にもなる方の作品と想像できますか。はるかに若い私でさえ、偶々題が「洗う」にしても、洗剤と心との結びつきは容易に思いつかない。以前とし子さんの作品を評した時にも、その柔軟な発想に驚かされた記憶がある。

 長い人生を振り返ってみると、それと気付かずに人を傷つけ、自身も深く傷ついてきた。歳を重ねた今もなお、日常の生活において家族や友人、親族等、人間関係の上で悩みは尽きない。

 そんな業の深さに思いを巡らす作者の深い自省の念が、この句には秘められている。

故に作者は、漂白剤のように、積もり積もった心の垢を真っ白に洗い落とせば、さぞかしすっきりするという切ない思いを託しているのではないか。しかしながら日常ありふれた、洗剤という言葉は、句の内容の深刻さを開放し、むしろユーモラスな表現にも見える。あるいは作者の年輪のなせる技であろうか。

上七の「洗剤を入れて」という言葉の発想が実に見事に作者の内奥を表すのに効果的となっている。

 

第三九五回(平成21年4月)

 うっかりに忘れられない悔いがある 

             籠島 恵子 氏

推薦のことば     森  茜

 宿題「うっかり」の恵子さんの句に、思わず立ち止まってしまいました。うっかりやミスは数知れずの私などは、うっかりと心ならずもしてしまったと言ういささか手前勝手な事実に甘んじて、許されていたこともあったのではないかと思いました。この句から「うっかり」の重さに気づき忸怩たる思いにかられました。

 「うっかり」とは、ぼんやりして気のつかないさま(広辞林)とあります。「ついうっかりして」と逃げ口上に言ってしまうことも間間あります。後になってみて、その言動を振り返った時、恥じ入ったり、冷やっとしたり、時には大笑いしてしまうようなことさえあります。

 「忘れられない悔いがある」への思いは、「うっかり」を決して疎かにしてはならない深い自省を伴った、細やかで優しい作者の眼差しが真っすぐに心にひびいてきます。

 そして、決して教訓めいた句ではないところも魅力です。味わい深い恵子さんの佳句です。

 

■L 鐘

・一月出席者が少なく杞憂していましたが、今月二十四名

 の出席で投句者数を大きく上回り喜んでいます。

・今回も初出席者として、寝屋川市本町在住の後和代さん

 の参加があったことも嬉しく、今回は見学だけでしたが

 引き続き参加されることを切望します。このように、川

 柳の愛好者が少しづつでも増え輪の拡がることを願って

 やみません。 

・今年から会報の内容を編者の独断で変えつつありますが、

 出来ればこの機会に是非、皆様のご意見をとりいれ魅力 

 ある、会報作りを目指したく、今月句会のあと意見交換

 会を持つため別に会議室を予約しています。特に急ぐ用の無い方は残っていただき、参考意見をお聞かせ下さいますようよろしくお願いします。     (亜成)

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◇ アキさんの映画三昧

      2024.01・30

                     高橋 晃國

 パーフェクトデース」

監督 ヴィム・ヴェンダース

脚本 ヴィム・ヴェンダース

   高崎 卓馬

主演 役所 広司

 

 東京スカイツリーが見える公衆トイレ。

 こんなきれいなトイレが本当にあるのか、とその存在を疑うほどにピカピカに磨き上げられた便器の存在に、これまたこじゃれた建物。

 そこに毎日掃除道具をもってやってくる男が居る。平山周吉である。

 平山はアパートでの独身暮らし。

 近所を竹ぼうきで掃く音に目を覚ました彼は、粗末な布団をきれいにたたんで階下に降りて歯を磨き、そそくさと朝食を済ませて狭い玄関戸を開けて眩しげに空を見上げる。

 それがどうやら平山の毎朝のルーティンのようである。

 そして出勤。家の前から出してきた車に掃除道具を積み込んで発進。日々見慣れた風景の中

を通り過ぎて彼の愛する職場へと向かう。

 平山は男女便器の汚れをきれいにぬぐい、その個室の内外のドアも拭いていくその姿はまるで修業僧のようである。

 昼休みには、夕食のパンを近くのベンチに座って食べ、大きな樹々の間から洩れてくる陽光を満億げに眺め、時には小型カメラで写真を撮ったりしていて、時間は男の周辺で止まっているような感じだ。

 平山周吉は一分のスキもなく仕事をやり遂げ、清掃道具を車に積み込んで帰途につく。

車内に流しているのは、古いカセットテープの平山好みの曲である。

 帰宅すると、彼は自転車に乗り換えて近くの銭湯に行き、ずぶりと湯に浸かって恍惚となる。それからは風呂上がりの一杯だ。

 行きつけの飲み屋では馴染みの親父とビールとが待っている。

 そして帰宅。

 読書家らしい平山は、就寝前電気スタンドの下へ寝そべり、ウイリアム・フォークナーや、

幸田文などを読んだりする。

 睡魔が彼を優しく誘うと、電気を消してそれに身を任せてしまう。

 ではいったいこの男、平山周吉なる男の家族はどうなっているのか…カメラは終始彼の行動をあたかもドキュメンタリータッチで撮っていて、背景が皆目見えてこなくて少なからずイライラしていたのだが、突如として彼のアパートへ転がり込んできた姪の存在によって、その辺のところが伺えてくる…。

「お父さんも前のお父さんとはずいぶん変わったから、兄さんもいいかげん家に帰ってきたらどう?」

 姪を迎えに来た平山の妹の口から出た言葉によって、彼が父親との衝突によって家を飛び出して行って今に至っているらしいことがようやくにして解る。

 ヴィム・ヴェンダースはそういったごちゃごちゃしたところはバッサリ省いて、現在の平山周吉という男の日常だけを切り取り、ドキュメンタリー風映画にしたかったのかもしれぬ。

 ややもすれば単調な画面にアクセントをもたす意味で、前述の公園の樹々の動きやその木漏れ陽をさなが隠し味のかのように画面に振りかけていたのかもしれない。

 隠し味といえば、平山が出勤の行き帰りに流しているカーステレオの音楽もそうであっただろう。

 この映画と前後してフィンランドの「枯葉」というのを観たのだが、偶然にも両者ともにドラマチックなところはなく物足りなさは否めないところではあるが、それは昨今の騒々しい映画を見慣れているせいなのかもしれぬ。

 どちらがどうとは言わないものの、たまにはお茶漬けの味を味わうのもいいのではないだろうか。               (了)

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■川柳ねやがわ 三月句会ご案内

☆会場 産業振興センター 3階

京阪寝屋川駅西側出口下車。徒歩約5分

☆日時 三月十九日(火)十二時十分開場 

☆出席会費  七〇〇円       

☆出句各題 3句  締切り 十三時

☆席題 「   」   お客様   選

 兼題 「水玉」    久世 高鷲 選

    「まぐれ」   小霜 眞弓 選

    「自由吟」   籠島 恵子 選

☆投句 切手四二〇円分同封の上左記事務局宛

十八日必着でお願いします

 事務局 〒573-1104

      枚方市楠葉丘一--十三

        川柳ねやがわ事務局  藤村 亜成

※句箋(A4コピー紙八つ切り)又は便箋でも可

     句箋の場合裏に題と雅号を記入。

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★四月句会 予告 各題3句吐

四月十六日(火)於 寝屋川市産業振興センター3F

席題   「    」  お客様    選     

兼題   「じっくり」   藤田 武人 選

      「ときめく」   栃尾 奏子 選

              「自由吟」    伊達 郁夫 選

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■  五月 吟行句会 予告

五月は暖かくなるので久々に雰囲気を変え、吟行句会を予定

しています。会場の都合で人数限定になりますが、繰り合わせ

ご参加をお待ちしています。 集合場所は直接会場になります。

☆ 会場 大阪市中央公会堂 第4会議室 

☆ 日時 令和六年五月二十一日(火) 

   十三時開場  十七時迄

   出句締切   十四時

 ※昼食は出ませんので先に済ませておいてください。

(開場までは自由に公会堂の見学や中之島バラ園の散策等でお過ごし下されば結構かと思います)

・句会終了後は「ビンゴゲーム」等で 楽しんでいただく予定です。 

出席会費 一〇〇〇円(当日徴収)

☆投句 切手四百二十円分同封の上左記事務局迄 

    五月二十日(月)必着 

申し込みは 三月句会の会報に再度ご案内と申込書を同封しますので、申込書により四月末までにお申し込みください。

なお席数に限りがありますので先着、二十七名様までと

させて頂いてます。何卒ご了承のほどお願いします。 

         

川柳に興味のある方は 

LINE・TELにて廣田和織までご連絡ください。

発行 川柳ねやがわ 会  長 廣田 和織

      TEL&FAX 072-822-5823

              090-4905-3024  

  《 事務局 》編集兼印刷 藤村 亜成 

    〒573‐1104 枚方市楠葉丘1―9―13

     TEL&FAX 072-867-4603