「流通革命」というと、流通経路の短縮(中抜き)による価格の低
下のことだととらえている人が多いようです。
ですが、「革命」とは、「主権者」が交代することを意味します。
「流通革命」の場合、製造業から流通業(特に小売業)へと主権が
移動することを指します。
具体的には、商品の企画・開発を、製造業者ではなく小売業者が担
うようになることです。いわゆるPB商品がそれに相当します。
小売業者が商品を企画し、製造業者に発注するとなると、個人経営
の商店では、ロットが小さ過ぎてどうにもなりません。
そこで、チェーン化することにより大ロットで発注できる態勢を整
えるわけです。小規模ではできないことも、大規模化すれば可能に
なります。
1日付けの日経産業新聞に、「東日本旅客鉄道(JR東日本)の広
告子会社ジェイアール東日本企画は、電子看板(デジタルサイネー
ジ)を使った広告配信のネットワークを拡充する」という記事が掲
載されています。
━ 日経産業新聞 2011.12.01【5面】
「三大都市圏の主要駅で計227面を展開し、幅広い企業の利用を見
込む」とあり、そうなれば、チェーンストアのような大規模化のメ
リットを享受できます。
この取り組みでは、JR東の136面、JR東海の36面、JR西の55
面の電子看板がネットワークされます。
すべて同じコンテンツを流すことも可能ですし、場所と時間帯を選
んで表示させることもできます。
当社も広告代理店とのおつきあいがありますが、従量制手数料ビジ
ネスの常として、トータルの金額が大きくないと、代理店は熱心に
売ろうとしてくれないものです。
ネットワーク化することにより、たとえ場所や時間帯を絞ったとし
ても、十分な金額ボリュームを確保できます。
これだけの規模になると、JR3社間の連携・連絡も難しくなるも
のですが、電子看板がネットワークとしてシステム化されれば、そ
れも容易になります。
販売効率が高まり配信コストが下がれば、JR3社のトータルの広
告費収益は増加することが見込まれます。ネットワークで連携すれ
ば、1+1+1が3を超えるわけです。
「規模の経済」というと、効率化やコストダウンの印象が強いです
が、小規模では得られなかったビジネス展開を可能にするという点
では、収益向上にも貢献します。
逆に、大がかりなビジネス構想を描いても、規模が小さければ実現
不可能です。その構想が実を結ぶには、まずは最低限の規模は確保
しなければなりません。
今回のケースでは、グループとは言え、他社と組むことにより、一
挙に「規模の経済」の収益メリットを得られる形を実現しています。
このようなコラボは、非常に価値が高いです。
<今日の教訓>
あなたの企業が提供する商品・サービスは、それを集積化・大規模
することで新たなビジネス展開を生む可能性がある。場合によって
は、他社とのコラボによりそれを実現することも考えてみよう。