現代社会を生き抜く上で、時として歴史の中の人物をヒントに知恵を得ることがある。
今の世の中での日常でも、情報を集め、分析し、問題点について考え、解決策を練り、決定し、実行して、結果を出すことが繰り返されている。
これは現象は違えどいつの世にも訪れるサイクルでもある。
そう考えると、戦国時代や明治維新の歴史の中で奮闘した人物がとった行動や対応策も、今の世に応用できる考え方や手法として重なり合うことがあり、将となるリーダーや、参謀となる管理職としてとらえなおすと、歴史の中にも大いなるヒントを見つけ出すことができる。
そんな歴史の中の将と参謀に光をあてなおし、探りだした書籍が
童門冬ニ著「将の器 参謀の器」(青春出版)
徳川家康、武田信玄、蒲生氏郷、加藤清正、豊臣秀吉、徳川吉宗、西郷隆盛、島津斉彬などを引き合いに、現代の様相と照らし合わせながらそれぞれのエピソードを書き記している。
将たる器とは、いかなる人間をも受け容れ、活かしきる器量がある。
徳川家康や武田信玄を引き合いにだし、懐の深さを説く。
人育ては、まず人をみることから。どんな人間にも必ず見どころがあるととらえ、長所をいかに活かせるか。
命をもかけさせるほどの忠誠心を育ませるためには、人を見て長所を活かしきる洞察力から成ることを記す。
随所に記されている、トップの役割は、
「すべての人に道標を与えること」と説く。
仕事に対する納得を得るための条件として3つあげており、
目的、寄与度、評価の必要性がある。
何のためにこの仕事をするか、の「目的」
自分のやった仕事が、どれだけ役に立ったかを示す、「寄与度」
その寄与度に対し、どんなご褒美や罰が与えられるかの「評価」
この3つをすべての人材に明らかにし、道標を与え、それを意識づけることがリーダーたる将の役割だとまとめている。
その道標をスムーズに与えるためには、組織内に2本のパイプが必要で、トップダウンの回路とボトムアップの回路を設けること。
この2本のパイプは、円筒形で、中にゴミがたまらないことが大切だ。
まして、途中で折れ曲がったり、切断されるようなことがあってはならない。
この実践をおこなったのが、徳川吉宗の「目安箱」や島津斉彬の西郷隆盛登用のエピソードだった。
歴史の中から学ぶべきもの多くあり。
積み重なれてきたこの歴史の中から、刹那な経験を、自らの知識へ入れ込み、実社会で成すことで、知恵へと転化消化する。
手軽に読める良書に出会えたこと感謝。