数日俺は考え込んでいた。

あの時行為までは至らなかったものの、俺はしてはいけない罪を犯してしまったのだから。

しかも、俺と莉子はその高校ではある程度有名なカップルだった。

もちろん夕紀も俺には莉子という彼女がいることは知っている。

莉子は捨てられない・・・。

事が露呈してしまえば、莉子を傷つけ、夕紀には悪い評判がたつ。

それだけは避けたい。

今思えばこの姿勢がいけなかった。

遠回しに俺は保身に走っているとしか思えないから。

だがこんなことはやめなければいけない。

まず話をつけるべくして、俺は次の日曜、夕紀の家へ向かう約束を取り付けたのだった。

夕紀の家は、地元では唯一と言っていいほどの、大型書店のすぐ隣に位置していた。

そして次の日曜。

俺の高校生活を狂わせる更なる事件が起ころうとも知らずに彼女の家へ向かった。


約一日何も口にしていない。

布団の上、朦朧とした意識の中で自分の過去が蘇る。

俺が人生を自らの手で狂わせたのは、間違いなく高校生の時。

当時の俺には隣のクラスに自慢の彼女、莉子がいた。

幼い恋ではあったが、俺は彼女を大切にし、彼女もまた、俺を大切に考えてくれていた。

彼女と付き合い始めて半年くらいが経った頃、同じクラスで勉強を教えていた夕紀と仲良くなっていった。

休みの日にでも勉強教えて欲しいと言われ、図書館で勉強。かと思いきや、俺は彼女の家に呼ばれた。

はじめは俺もまじめに勉強を教えていた。

彼女はもともとやれば出来るほうの様で、見る見るうちに実力をつけていった。

必死に問題を解くその横顔に、俺は次第に惹かれていったのかもしれない。

我に返った頃には遅かった。

俺は彼女に・・・

キスをしていた・・・・・・・。

俺には大切な彼女がいたのに・・・。

あの時ここまでで止まっていれば俺と莉子にはまだ未来があったかもしれないのに・・・。