64.愛を感じますか?
遠まわしに彼の愛を感じないといったメールを送る。
私の駄目なところ。
相手に「私のこと好き?」そんな直接的な言葉を言えない。
彼女の事も気になっているのに聞けないで、このままズルズルと・・・。
私は私の気持ちに正直に生きるだけで、それだけでいいのだろうか。
好きな人に受け入れてもらえる、それだけでいいのだろうか。
うぅん、愛されたい。
愛した人から愛されたい。
<俺がお前にキスしたのはいい加減な気持ちではないよ。お前の事を愛していると思った。お前は俺の事どう思ってる?時間が絶てば薄らぐ感情なのか?>
彼はまっすぐな人だなと思った。
いや、違う。
彼は感情をこんなに表に出すような人ではなかった。
ずっと言葉にしないで、心で会話してきた。
相手はきっとこう思ってるだろうな・・・って。
私が思った通りの人だっただけ。
彼はずっと心の中でまっすぐだった。
そんな彼の心をずっとみてきた。
そして、彼は、あやふやな言葉を吐く私をよそに、まっすぐな私の心を見抜いてる。
<大好き。ずっと大好き。時間で薄らぐ感情ならとっくに忘れちゃってるよ。でも不安なの・・・>
それでも私は素直になりきれなかった。
彼への想いは伝えられても、不安材料になってることは「・・・」で誤魔化した。
私は「普通」というものに拘りすぎてたのかもしれない。
普通、過去の事なんてきかないよな・・・。
そんな事を頭で考えていた。
でも、私は彼の過去を中途半端に知っている。
聞かねばいけない事なのに。
彼も残念がるだろうか。
こいつは簡単に浮気相手になるような女なんだと。
素直になるって何処までの事をいうのだろう。
思うが侭に動いてちゃいけない事は解かってる。
好きだから、受け入れられたからって・・・。
彼の「愛している」という言葉は、少しだけ軽く感じた。
だけど、それを彼の心だと思うのはやっぱり、私が彼を知っているからなんだと思う。
昨日今日出会った相手ならきっと、私は彼を軽蔑していただろう。
<俺は俺の愛しかたでお前を愛すよ。俺はお前の愛を感じてるよ。お前も感じ取って。こんなこと言いたくないけど・・・多分、今までの恋愛だって、お前は男に愛されてきた筈なんだよ>
私が?
浮気相手の男たちから愛されていた?
愛って一体なんなんだ・・・。
私は「愛」というものを見た事がない。
・・・だからきっと自分の愛も他人の愛も気付かずに来たんだな。
私の愛はどんな風に伝わっているんだろう。
それも不安。
彼の愛か・・・。
なんだか、ほっこり幸せ気分だ。
これが、愛?
彼氏から、否、彼氏だった男からの着信を携帯が知らせる。
メロディーは流れない。
無音でランプだけが静かに点等している。
君には私が愛していないことを感じ取ってもらわないとね。
無理かな・・・濡れない女に対して自慢気に腰を振ってた男だもんね。
愛って感じるんだよ。
ビンビン感じちゃうんだよ。
そろそろ気付いて欲しいな。
男の所為で直ぐに携帯の充電が切れてしまう。
ウザったい。
登録名を「馬鹿」に変えた。
着信があるたび液晶には、馬鹿・馬鹿・馬鹿と点滅する。
少しだけ、面白い。