妹尾昌俊 アイデアノート ~学校づくり、地域づくり、人づくり~ -38ページ目

妹尾昌俊 アイデアノート ~学校づくり、地域づくり、人づくり~

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たくさんの学校や地域活性化の取組を見てきた経験や、4人の子育ての中での喜怒哀楽から、
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☆学校づくり×地域づくり
☆子どもが大きくなったら語り合いたいこと など

中原淳監修、脇本健弘・町支大祐著『教師の学びを科学する―データから見える若手の育成と熟達のモデル』について。若手研究者による、若手教師の育成についての実証研究の本。先月出たばかりだ。

熟読したわけではなく、関心のあるところのみ読んだので、見落としや誤解があるかもしれないが、ちょっとした感想を。

都市部を中心に、ベテラン層が大量退職し、若手教員が大きく増えつつある。実際、すでに横浜市では10年経験者までの教師の割合が全体の5割を占めているという(p.3)。同時に、教員の多忙化や精神疾患、離職なども少なくない。こうした中、若手教員の育成やケアが重要な課題となっているが、どのようなプロセスで若手教員は育つのか、横浜市の教員へのアンケート調査をもとに統計的に検証したのが本書だ。

学校において、教員同士の学び合いを活性化にはどうすればよいか。横浜市ではメンタリング(先輩教員が若手のことを聞いたり、アドバイスしたりする)に着目しているという。しかし、そうしたものも、理念はよくてもしっかり運用されているかどうかはあやしいところだ。本書では、効果的なメンタリングを実証した11~12章がとくに読み応えがある。

メンタリングによって若手教員の問題解決につながるのは、「メンタリング活動が自律的に行われていること」、「先輩教師の成功談や失敗談を聞くことができること」、「若手自身が話をすることができること」といった各要因が効くことが統計的にも明らかになった。

ちなみに、管理職がメンタリングに参加するかどうかは、若手の問題解決につながるかどうかに有意の差は生まれないというのも面白い(もっとも、授業相談を兼ねて管理職が参加する場合は効果的だそうだから、一概に管理職の参加がダメなわけではない)。

はやっているからとか、民間で効果が高いと言われているから、といって、学校でも採り入ればよいというほど、事は単純ではない。やり方があるのである。そこを本書は横浜市のデータという限定付きではあるものの、統計的に明らかにしている点で、今後の指針にもなると思う。

一方で、本書の分析からの示唆は、やや当たり前のものが多いように感じる。たとえば、先ほど紹介した問題解決につながるメンタリングの方法についても、そりゃ、先輩教師が一方的にしゃべって、若手本人の話を聞かないようじゃダメでしょ、なんてことは、統計的にやらなくても、現場の知見としては十二分に実感できるはずだ、ある程度やってみれば。

また、メンタリングが自律的に行われていることが大事と言われても、じゃあ、やらされ感じゃなく、自律的・自発的な活動になるためにはどのような点がポイント(推進要因や仕掛け)となるのか、という点こそが学校現場が知りたいことではないか?たとえば、メンタリング活動の意味づけや方法論がどこまで教員に浸透しているかといった点も要因になりそうな気がする。

こうした点で、おそらく、本書の研究にはもっと深く掘っていけるところや、統計的な分析が難しい場合は事例研究などでもっと補完できるところは少なくないように思えた。逆に言えば、今後の発展や拡張可能性という意味で、メンタリングへの着目はとてもよかったのではないか。本書の知見も参照させていただきながら、学校現場の方の感覚や実践ももっと聞いてみたいと思った。


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