たとえば、古代の職業について記述した粘土版が残っている、約4千年前のものだ。そこには、エンシ(王様のことらしい)、サンガ職(神殿の行政官)、通訳、料理人、外科医、印象彫師、宝石細工師、歌手、蛇使い(蛇を使った呪術師)、理髪師、校長などなど220もの職がのっている。現代とあまり変わらない職業も多く、案外、人の生業というのは4千年もの間でそう大きな変化はしていないのかもしれない。
文字についての章も興味深い。僕などは教科書的に楔形文字という暗記しかしていないのだが、本書によると、まず、現在わかっている範囲だと、シュメール文明がもっとも最古の文字を使っていたこと、その文字は楔形文字が使われるはるか前のものであり、絵文字であるとのこと。p135に古代の決算書と思われる粘土版文書の絵文字が紹介されているが、どこか、小学生の落書きみたいで、可愛らしくもある。
古代人の男と女のもめごとについて触れた章も面白い。「もし人が姦通した若い男の妻を姦通のゆえに訴え、『河の神判』が彼女の無罪を証明したならば、彼女を告発した人は銀20ギンを払うべし」とウルナンム法典に書いているそうだ。河の神判とは、河に落とされて、溺れないで生きて帰ってこれれば、無罪というもの。これで本当に納得したのか(仮に不貞をはたらいてなくても、溺れたら有罪になるのだから)と思ってしまうが、このあたりは、川で穢れを落とすという日本の古来の発想にも近いようにも思う。
なお、本書では、シュメールだけでなく、古代ローマや日本史、はては現代世界にも通じる点を縦横に言及してくれており、視野がタテ(時代の流れ)、ヨコ(地理的な広がり)に広がる。
これは、メソポタミアに行ってみたくなる本である。
- 文明の誕生 - メソポタミア、ローマ、そして日本へ (中公新書)/中央公論新社

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