はじめに、たぶん誰もが思う感想を書くと、タイトルがあまり良いとは言えない。”自工程完結”って何?とみんな分からない言葉だし、「あ~、トヨタの工場の現場力が強い話ね、また?」的な反応を示す人も少なくないのではないか?しかし、本書は、逆で、トヨタの現場が世界一スゴイと言われているのに、本社や事業部のホワイトカラー、スタッフ部門はどうだったのかを扱っている。
序章で述べられている例が分かり易い。上司にこれやっといてと言われた資料を出したら、こんなに細かいものじゃなくてよかったと突っ返された、AとBの選択肢を示したら、Cは検討しなかったのか?と言われたなどの経験ってありませんか?僕は、しょっちゅう。。。また、会議はたくさんしているのに意思決定が遅い、思い付きであれもこれも判断材料を求めるからホワイトカラーの生産性はいつまでも高まらない。まったく自分にとっては、耳の痛い話が続く。
後戻りが発生したり、意思決定に必要な最小限の材料や基準を定めないまま仕事を進めることは、要するに、「自工程完結」できていないのだ。自工程完結とは、本書を通して読んだ感想としてざっくり要約すると、自分の仕事の意味(なぜやるのか)とアウトプットイメージを明確にもって、これがクリアーすれば次の人や部署(=後工程)に渡せるというものを達成するために必要なプロセスを洗い出し、無駄や非効率な点を点検して改善していくこと。トヨタでは、もともと工場で始めたこの考え方と実践を、ホワイトカラーを含めて全社的に展開している。
工場の話となるが、この考え方をもとに見直し、自動車の水漏れをゼロにしたという例は、とても興味深い。
水漏れにかかわる作業だけで、2000を超えるものになりました。しかし、その作業一つひとつを精査していったのです。
どの工程でも、もちろん懸命に作っています。聞けば「ちゃんと作っています」という声が返ってくる。しかし、問題はその「ちゃんと」というのが、どういう意味なのか、ということです。
要するに、この「ちゃんと」を厳密に定義していかなければ、単なる「心がけ」にすぎない、ということなのです。科学的な裏付けに基づいた取り組みにはならない。抜本的な解決にはつながっていかないということなのです。(p64)
本書は、美談ばかり書いているのではない。トヨタはここがダメだったと告白していて、案外トヨタでもそんなものなんだな、と思った。むしろ、トヨタでさえ、こういう問題や苦労があるのだから、日本の多くの企業等では、ひょっとすると、もっとひどい状態かもしれないな、と疑ったほうがよいと思う。
何度も書くが、僕自身の仕事の仕方としてもとても反省するきっかけになった。で、あまりよそのことを言うのもなんだが、僕が関心がある公務員の仕事の仕方とか、学校の仕事の進め方などにも十分応用できる考え方だと思った。アウトプットイメージがあいまいなまま仕事している、あれもこれも、ともすればアドホックに判断材料を求めたがる(まあ慎重にやらないといけない仕事内容ということもあるが)、長く会議して多くの人を意見を聞いたから正しいだろう、と意思決定の基準がないまま進む、などなど、本書で言われている問題点がよく出ている職場だと思うのだが、どうだろうか?
本書では、いくつか自工程完結の例も紹介されているが、もう少し非定型業務の例もほしかったところ。だが、自工程完結の考え方と実践の肝は十二分に伝わる良書だと思う。
そのひとつが、先に紹介した水漏れの話のように、2000もの作業を洗い出したということ。いわゆるBPR(ビジネス プロセス リエンジニアリング)のひとつだろうが、この徹底ぶりがさすがトヨタだ。じっくりぶれずにやってみることができるか、それが問われていると思う。
○こちらの出版社の記事で導入部分を紹介しています。
http://diamond.jp/articles/-/81396
- 現場からオフィスまで、全社で展開する トヨタの自工程完結―――リーダーになる人の仕事の進め方/ダイヤモンド社

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