【雑談】理論上予測されていた木星の高エネルギーX線を検出 | 大放言・毒を吐くブログ アメーバ版

大放言・毒を吐くブログ アメーバ版

独断と偏見で言いたい放題言ってるブログです。主に政治、世相、時々科学や食材について書きます。


科学関係の記事を読んで個人的に興味深く思うのは

「理論上の存在でしかなかったものが実証される」

事である。理論が証明され、科学は新たなステップへと進む。そんな実感を持てるからだ。その実感は例え100億光年彼方の事でも太陽系の中での事でも変わらない。例えば木星。理論で予測されていた「高エネルギーX線」が初めて観測に成功した、と言うのだ。


※技術の進歩でよりリアルな姿が拝める。

太陽系最大の惑星である木星。地球の10倍もの大きさを誇り、「恒星になり損ねた存在」なんて言われたりもするが、それはちょっとばかり過大評価。確かに「赤色矮星」と呼ばれる小さな恒星には木星程度の大きさのものが多数存在する。だが、木星が安定して自力で核融合を起こして輝く為には質量があと80倍程必要なのだ。太陽以外の太陽系のあらゆる質量を木星にブチ込んでも全然足りないのだ。

だが、木星は自分で熱を発しており、それは木星付近で太陽から受け取る熱の2倍にもなると言う。実際木星の表面温度は-140度と言われているが、太陽からの熱だけで計算すると木星の表面温度は-186度あたりになるらしい。

※木星のシンボル大赤斑。地球よりデカい。

さて、木星も様々な活動をその表面や内部で起こしている。木星のシンボルとも言える大赤斑、発見されてから350年以上存在し続けるが、これは地球で言う「高気圧性の嵐」らしい。嵐、と言ってもその範囲は地球が数個収まる規格外レベル。最近小さくなっているそうだが、それでも地球並みの大きさの嵐である事に変わりはない。また、地球のそれと同じ原理での「雷」も確認されているが、木星サイズなだけあって規模は何と地球の1000倍。木星内部を探査機が突入してこんな物に当たれば間違いなく一撃で撃墜されるだろう。

※木星の雷の様子。

さて、今回の発見である「高エネルギーX線」だが、理論上では存在が予測されていた。理屈としては

「衛星イオが火山活動で噴出した物質がイオンやプラズマ状態で木星の磁気圏に捕まり、木星の極地に運ばれ、そこで木星大気と反応する際に高エネルギーX線を放つ」

と言う事になる。電子は「制動放射」と言って自由に運動出来る状態の電子が原子に捕えられるなどして運動エネルギーを失う際にそれをX線として放射する。理屈はそうだが、今まで検出された試しはなかった。その理由として

「X線の発生メカニズムも様々で同じX線でも特徴が違うのだが、既存の探査機の検出機では今回のX線発生メカニズムに対応した仕様ではなかった」

と言う事らしい。一口に「X線」と言っても紫外線に近いものから「波より粒子」の性質を持つ物まである。恐らく記事で言われている「高エネルギーX線」とは「硬X線」の事だろう。これこそ透過性が高く、「波より粒子の性質」を強く打ち出す性質のX線だ。探査機の仕様が対応していないのもやむを得ないと言える。

※NASAのX線天文衛星NuSTAR。

NASAのX線天文衛星NuSTARが木星からの「高エネルギーX線」の検出に成功したが、やはりそちらに特化した衛星であるが故の快挙であろう。このNuSTARは銀河の中心にある巨大ブラックホールの自転速度の計測に成功したり、超新星残骸のカシオペア座Aが爆発時「対称でなかった」事を明らかにしたりと言った成果を挙げている。今回の「木星からの高エネルギーX線検出」で更に新たな勲章加わった事になる。

木星の磁場は地球の2万倍だと言う。だが、上には上がおり、中性子星やその一種で特に強力な磁場を持つ「マグネター」と呼ばれる宇宙最強の磁場を持つ天体の観測にこの木星の「高エネルギーX線の観測」の経験が役に立つと言う。そういう意味でも非常に大きな成果だと言えそうだ。宇宙には謎がまだ沢山ある。その謎に迫る為にもこの様に「理論を実証する」成果が上がる事の意味は大きい。今後の新たなる発見に期待がかかる。