【雑談】太陽系外縁天体の探査チャンスが目の前にある? | 大放言・毒を吐くブログ アメーバ版

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※冥王星の外側にも天体は多数太陽の周りを公転している。

我々の地球のある太陽系は冥王星の外側にも太陽の周りを公転する天体が存在している事が明らかになっている。その一つ「セドナ」と呼ばれる天体への探査ミッションの機会が訪れていると言う。実現に向けたハードルは高いが、可能性はあるのだろうか?


「セドナ」は冥王星の外側の公転軌道を取る天体で直径は約1000キロ程の赤い天体だと考えられている。非常に長大な楕円軌道で公転するのが特徴で、近日点では76AU、遠日点では900AUと推定されている。「AU」とは地球と太陽の距離約1億5千万キロを「1」とした単位で太陽系内の距離を示すのに多用される。因みに冥王星でさえ太陽との平均距離は40AUだから「セドナ」が如何に太陽から離れた場所を公転しているかはお分かり頂けるだろう。

※「セドナ」の想像図。

冥王星以遠の太陽系については判っていない事だらけである。それなりの大きさの天体が存在して太陽の周りを公転している事は判っているが、その実態や「惑星」と呼べるだけの天体があるのかないのか?判らない事だらけであり、それらを知る為にも探査機を飛ばす価値はあるだろう。

具体的な探査ミッション計画だが、ロシアの研究グループによると2029年、2031年、2034年に探査機を打ち上げるのが都合が良いらしい。惑星探査は目的の惑星に向かって直線的に探査機を飛ばせば良い、とはならない。推進材が幾らあっても足りないからだ。最も効率が良いのは他の惑星の重力を利用して軌道変更&加速する「スイングバイ」と呼ばれる手段で、スイングバイ対象の惑星も探査対象に出来るメリットもある。例えば2029年に打ち上げれば金星と木星も探査対象に出来、2034年打ち上げなら海王星の探査も可能になると言う。勿論何処の国が打ち上げるにしろ、莫大な予算が必要なのだから探査機にはそれ位働いて貰わないと割に合わない。

※打ち上げコスト以上に働いてくれたであろうボイジャー2号。

そもそもの疑問として「セドナ」を探査するのは良いとして何故「この時期なのか?」と言う疑問は出るだろう。セドナは現在近日点に近付いており、2075年8月に近日点を通過するとされている。このタイミングを逃すと次に似たタイミングが来るのは約1万2千年後(=セドナの公転周期)。後世への課題がどうとか言う話ではない。複雑難解な計算が要るので不肖筆者は理解不能だが、結果としてそれ故にセドナの探査をするならそこまでの道程も含めて考えると「今しかない」のである。

※目的地はこちらの冥王星より先。

…とは言ってもそんな気軽に出来るものではないし、先述したタイミングも「提案」レベルだ。 まぁプランの採用や機体建造、予算確保、打ち上げの可否など言い出したらキリがないのでそれら全部クリアしたとしても今まで人類の技術をつぎ込んでもセドナ探査は難しい。

まずは距離。ここまで離れた場所の探査ではタイムラグが無視出来ない。海王星でさえ30AUの距離があるが、ここでも通信するのに片道4時間はかかる。要するに何か指示を出して返信があるまで8時間かかる、と言う事だ。近日点付近でセドナの探査を行うとしても76AUあるから片道10時間弱かかる計算だ。冥王星探査を行った「ニュー・ホライズンズ」の時には冥王星到着直前にトラブルがあり、ギリギリで対処が間に合ったのでミッションは成功したが、一つ間違えていれば目前で全てが水の泡になる所だったと言う。そういうリスクはもっと大きくなる。

また動力について疑問を持つ方も居るかも知れない。現在太陽圏の脱出を果たしたボイジャーは1977年に打ち上げられたが、いまだに通信が可能だ。45年近くも稼働可能なのは何故かと言うと、実はこの手の探査機の動力は「原子力電池」と言うものを使っているからだ。これは簡単に言うとアルファ崩壊を起こす放射性物質を探査機に搭載しておく。この放射性物質は勝手にアルファ崩壊を起こすが、その際に熱を発生させる。この熱で発電を行い、それを探査機の動力としているのだ。セドナ探査を行う探査機もこれを搭載する事になるのだろうが、本格的な探査を行うまで20~30年近く待たなくてはならない。技術的な問題はないが、セドナ探査後の事まで考えると搭載する放射性物質の中身や量など難しい問題が付きまとう。勿論量を増やせば稼働期間は長くなるが、打ち上げロケットに搭載する限度、と言うものはあるし、重くなればそれだけ速度も落ちる。兼ね合いが難しいのだ。現在の技術なら木星付近までなら太陽光発電でどうにでも出来るので、木星探査であれば太陽光発電で十分なのだが、ここまで離れた場所では太陽光発電など出来る筈もないのは言うまでもないだろう。

要するに映画や漫画と違って人類の技術では太陽系からの脱出など夢物語でしかないのだ。太陽系の本当の意味での外縁には「オールトの雲」と言う小さな岩石などが無数に球体状に太陽系を包み込むエリアがあると考えられている。ここを通過して初めて「太陽系を脱出した」と言えるのだが、ボイジャー2号がそこに到達するのは6万年以上後の事、と言われている。また、ボイジャー1号でも5万年以上かかると言われており、人間の一生の時間からすればどうにかなるとかならないとかの問題ではない。それだけ太陽系とは広大で、判らないことだらけなのだ。宇宙のスケールの大きさを実感出来る話である。