【雑談】恐竜と鳥 | 大放言・毒を吐くブログ アメーバ版

大放言・毒を吐くブログ アメーバ版

独断と偏見で言いたい放題言ってるブログです。主に政治、世相、時々科学や食材について書きます。



※恐竜と鳥を語る上で外せない始祖鳥。

「鳥が恐竜の一種である」と言うのは最早系統学では「確定事項」と言っても過言ではない程である。学術的にはそうでも一般的には

「鳥は恐竜の子孫である」
「恐竜は鳥に姿を変えて生き延びている」

と言った表現の方が判り易いだろうが、鳥類は「紛れもなく恐竜」である。今回はそんな雑談である。

恐竜、と言うと「巨大な爬虫類」と言うイメージが先行しがちだが、恐竜には爬虫類と「決定的な違い」がある。それは「直立姿勢」。爬虫類は手足の退化した蛇を除いて例外なく手足は体の横から出ている。従って爬虫類が移動する時には這う様なスタイルになる。「爬虫類」と言う名前の由来でもある。一方恐竜は最初期の頃から手足は地面に対して直立している。その姿は鳥類にも受け継がれていると言える。

※恐竜???
※恐竜。

上は何処にでも居る鳩、下はティラノサウルスだが、どちらも真っ直ぐ足を伸ばせば地面に対して直立姿勢が取れる事は容易に理解出来るであろう。

進化には「収斂進化」と言って全く種族が異なる生物同士でも生息環境が似ていれば似た様な形質を獲得するケースが多々ある。一番判り易いのはイルカと鮫。イルカは哺乳類で鮫は魚類だが、姿は似ている部分が多い。言うまでもなくどちらも海でその一生を過ごすからである。他にも人間(と言うか陸上生物)とイカの目も実は似て非なるもので「物を見る」と言う目的が共通している為、似た様な姿と機能を持った器官になった、と言われている。が、鳥類と恐竜が似た様な生息環境だった、なんてどう考えてもそういう話にはならない。従って鳥類の「直立二足歩行」は恐竜から受け継いだ形質だと考えるのが自然であろう。

また、骨格にも鳥と恐竜にしか存在しない特徴、と言うのもある。例えば叉骨。自分の肩を触ると判るが人間は鎖骨が左右1本づつある。しかし、鳥と一部の恐竜にはその左右の鎖骨が癒合した「叉骨」となっている。鳥にとって叉骨は羽ばたく際にバネの様に機能する事で空を飛ぶ力の一端となっているが、どう考えても羽ばたくどころか前足の機能が謎のままのティラノサウルスにも叉骨があった事が化石から判明している。

※上からティラノサウルス、始祖鳥、ペンギンの骨格。叉骨の存在が判る。

上記の画像は上からティラノサウルス、始祖鳥、ペンギンの骨格だが、U字型の叉骨の存在が判るだろう。どう見てもティラノサウルスが空を飛べたなんて思えないのは明らかであり、始祖鳥も飛べたのかどうかは非常に怪しいとされる。ペンギンも空は飛べないが、水中では「飛ぶように泳ぐ」事は出来る。知られている限りこの3種の生物の生息環境は明らかに異なり、また、共通の目的があってこの様な類似形質になったとは到底思えない。従って鳥類の叉骨は

「恐竜から受け継いだ形質であり、鳥類が空を飛ぶ能力を獲得した際にこの機能が羽ばたきの補助に転用された」

と見るのが妥当な見解だと言える。

更に「羽毛」の存在。羽毛は現生生物では鳥類のみ、化石種を含めても恐竜にしか確認されていない。羽毛は最初は「体温保護」の為に獲得した形質であった事はまず間違いないが、同様の目的で哺乳類が獲得した毛皮は全く構造が異なる。そもそも我々が思っている以上に羽毛の構造は複雑で、「偶然の一致」レベルで説明出来る様な代物ではない。従って羽毛も「恐竜から受け継いだ形質」と考えるのが自然なのである。

※始祖鳥の羽根も風切羽である。

現在の鳥類が空を飛ぶ為に獲得した羽根は「風切羽」と呼ばれ、左右非対称の形状をしている。前方が短く、後方が長い。そういう構造が空気の揚力を得るのに最も都合の良い形状なのだそうだ。だが、始祖鳥の羽根も実際に飛べたかどうかに関わらず風切羽を持っていた事が確認されており、更にはミクロラプトルと言う「恐竜」にまで風切羽が存在していた事は化石から判っている。しかもコイツは後ろ足にまで羽根があった事も判っている。こうなると恐竜と鳥境界線からして不明になってしまっているのが現状なのだ。

※ミクロラプトルの化石。後ろ足にも羽根があった事が判る。

とは言うものの、反論もかなりあった。その最有力とされたのが「三本指のパラドックス」と言うものであった。

※鳥類に最も近い種の一つのヴェロキラプトル。

こちらは「鳥類に最も近縁」な種の一つであるヴェロキラプトル。前足が三本指なのは明らかだが、これら恐竜の三本指は「親指、人差し指、中指」である事は判っていた。一方の鳥類は?と言うと

※こちらも鳩。食用のだが。

此方の食用鳩の前足を見るとやはり三本指なのが判る。(注:そこら辺の鳩を捕獲するのは犯罪行為。写真の鳩は食用として養殖された鳩。)だが、鳥類の胚からの発生状態を見るに「人差し指、中指、薬指」ではないのか?と言う反論があったのだ。同じ三本指でも構成する指が違えば全くの別種ではないか?だから恐竜と鳥は種としては関係ないのではないか?そういう反論があったのだ。これが「三本指のパラドックス」だったのだが、日本での研究において鳥の指は

「人差し指、中指、薬指の位置から発生するものの、実態(何故か本来の位置に移動する)は親指、人差し指、中指」

である事が判明し、この問題に決着が付けられた。「恐竜と鳥の関係」について最有力とされた反論を葬り去り、オイシイ所を持っていったのは実は日本だったのだ。

※ニワトリの指の発生状況。

写真はニワトリの胚における指の発生状況である。左の写真は発生後8日程のものだと言う。この時点ではまるで四足歩行で歩く為の様な形状だ。写真では上から親指、人差し指、中指で薬指の痕跡らしきものも確認出来るだろう。一方右の写真は発生から10日程。つまり左右の写真の時差は2日程度である。右の写真では明らかな鳥の手の形になって来ている。手羽先の肉をを食い尽くすとこういう骨の構造である事が多分判るだろう。またこの写真では判り難いが手首の骨(手根骨)が半月状になるのが鳥類の特徴なのだが、これも恐竜に同質の特徴が確認されている。これによって鳥は翼を折り畳む事が可能になっているが、恐竜はこれによって手首から先を前後左右に自在に動かせた模様だ。恐らく叉骨もそうだが、前足で捕らえた獲物を引き寄せる動きをする進化が空を飛ぶ為に転用されたものだと思われる。また、先のヴェロキラプトルの前足と比べて見ると形が似ているのも判ると思う。大まかに言ってもこれだけ「恐竜と鳥の共通の形質」は存在するのだ。他にも「恐竜と鳥にしか存在しない形質」はあるが、書き出すとキリがない。

「鳥の起源が恐竜」となれば鳥のDNAには恐竜のそれが含まれている事になる。それを見つけ出して足りない部分を補う事が出来れば種類は限定されるが恐竜の再生も理論上は可能でそういう研究をしている人も居るらしい。そういう研究には賛否あるだろうが、少なくとも人類の恐竜への好奇心や探究心が鳥類の起源の解明に繋がったのは確かだろう。その意味では恐竜は色々な事を教えてくれる存在だと言える。人類の過去への探究は終わらない。

※ティラノサウルスの歯。隣のタバコと比べると巨大さが判る。