今回紹介する本は、
町田その子さんの
52ヘルツのクジラたち
2021年本屋大賞第1位。待望の文庫化。
52ヘルツのクジラとは、他のクジラが聞き取れない高い周波数で鳴く世界で一匹だけのクジラ。何も届かない、何も届けられない。そのためこの世で一番孤独だと言われている。
自分の人生を家族に搾取されてきた女性・貴瑚と、母に虐待され「ムシ」と呼ばれる少年。孤独ゆえ愛を欲し、裏切られてきた彼らが出会い、新たな魂の物語が生まれる――。
丁度今日映画を観てきたので、その感想も交えながら粛々と綴らせてもらえればなと。
この物語は大分県のとある小さな港町に1人で移り住んできた女性・貴湖(役者:杉咲花)の描写から始まり、
ある孤児との出会いをきっかけに女性の波瀾万丈の過去と現在が混じり合いながら展開されていくのですが、
その過去がとても複雑であり残酷でもあるため、小説を読んだ時に読み応えがあるなと感じていました。
それが2時間という限られた時間の中でも反映されていまして、
こんなこと言ったら「偉そうだなぁ!」って言われるかもしれませんが、観ていて飽きないというか、
次第に女性が抱え込む傷の真相が明らかになっていくため、徐々に惹きつけられていくんですよね。
若干のミステリー要素もありつつ安易に何らかのカテゴリーで括ることもできない、
絶望、残酷さ、苦しみを感じながらも鑑賞後には心がほんのり温まるストーリーです。
これ余談なんですけど、先日杉咲花さん主演の
「市子」
という映画を観まして、
この作品でも「52ヘルツのクジラたち」の主人公の女性・貴湖のように、家庭環境に恵まれない可哀な女性の役を杉咲花さんが演じていました。
こんなこと言ったら「失礼だな!」って言われるかもしれませんが、杉咲花さんは不遇な人生を生きる役がすごく合っているというか、演技を見てて絶望感やリアリティをヒシヒシと感じることができるので、映画の世界に没入できるんですよね。
こりゃ、大物女優になること間違いねえ
アマプラで配信されているので、興味ある方はぜひ。
それでは、2つほど印象に残った小説の描写を紹介して終わりとしましょうか。
52ヘルツのクジラ。世界で一番孤独だと言われているクジラ。その声は広大な海で確かに響いているのに、受け止める仲間はどこにもいない。誰にも届かない歌声をあげ続けているクジラは存在こそ発見されているけれど、実際の姿はいまも確認されていないという。
ーーー
本当はたくさん仲間がいるのに、何も届かない。何も届けられない。それはどれだけ、孤独だろう。
タイトルにもなっている52ヘルツのクジラ。普通のクジラと声の高さが全く違うらしく、他のクジラたちにはその声は聴こえない。
「52ヘルツのクジラたち」というのはまさに↓に写っている3人の登場人物のことを表しています。
母から虐待を受けている少年、家族に自分の人生を搾取された女性・貴湖、そして貴湖を救った「アンさん」と呼ばれる人物。
それぞれが誰にも打ち明けられない傷を抱え、誰にも助けの声をあげることもできない。
そんな人たちの声を聞けるような、人の心の痛みを理解できるような、やさしい大人になりたいなと。
まあ、これはイチローの名言なんですけど。
これが僕が死ぬまでに目指す人間像です。なれるか分かりませんが。
「あたしは、あんたの誰にも届かない52ヘルツの声を聴くよ。いつだって聴こうとするから、だからあんたの、あんたなりの言葉で話しな。全部、受け止めるよ。
ーーー
わたしも、昔52ヘルツの声をあげてた。それは長い間誰にも届かなかったけど、たったひとり、受け止めてくれるひとがいたんだよ」
貴湖が少年に放ったセリフ。
「アンさん」が貴湖の声を聴こうとしたように、貴湖が少年の声を聴こうとするシーンです。
思いやり、なんて安い言葉で片付けられないけど、こういう思いやりって人から受けることで自分も誰かにしてあげようっていう感情が芽生えて、それが次第に伝播していくと思うんですよね。
こんなこと言ったら「綺麗事言うんじゃねえよ!」って言われるかもしれませんが、優しさや思いやりを与えられる人間になりたいなと。
まだまだ未熟なので受け取る側かもしれませんが。ひとつよしなに。
という感じで、最後はなりたい人間像の話になっちゃいましたが、
すごく心に残る作品だし、少々ネタバレになっちゃうので明言は避けますが、昨今注目されているジェンダーの問題も関わってくるので
興味ある方はぜひ映画もしくは小説をご覧ください。
僕的にはどちらも見る価値はあると思いました!
それでは、お後がよろしいようで。
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