こんにちは、こんばんわ。

 

 

 

今回紹介する本は

 

朝井リョウさんの「正欲」

 

 

あってはならない感情なんて、この世にない。
それはつまり、いてはいけない人間なんて、この世にいないということだ。


息子が不登校になった検事・啓喜。
初めての恋に気づいた女子大生・八重子。
ひとつの秘密を抱える契約社員・夏月。
ある人物の事故死をきっかけに、それぞれの人生が重なり合う。

しかしその繋がりは、"多様性を尊重する時代"にとって、
ひどく不都合なものだった――。

「自分が想像できる"多様性"だけ礼賛して、秩序整えた気になって、
そりゃ気持ちいいよな」

これは共感を呼ぶ傑作か? 
目を背けたくなる問題作か? 

作家生活10周年記念作品・黒版。
あなたの想像力の外側を行く、気迫の書下ろし長篇。

 

 

 

今更感はありますが、先日映画が公開されたということで映画の感想も交えながら紹介できればなと思います。

 

 

 

 

 

朝井リョウさんは大好きな作家の1人なのですが、

 

『どういう経験をしたらこんな作品思いつくんだ?』

 

という作品ばかりでとてもじゃないけど同じ平成生まれとは思えません…。

 

 

 

 

その中でも「正欲」というのは現代を生きる人にとってとても考えさせられる作品であり、

 

最近なら誰もが口にしたことがあるであろう「多様性」という言葉が持つある種の凶器性といいますか

 

一人ひとりの個性を尊重しましょうね、という救いの意味で使われる言葉だと誰もが信じて疑わなかったはずが、

 

実はそう思っていたのは僕を含めこの世界のマジョリティに属している人だけであり、我々が考える多様性の範疇に存在しないマイノリティの方々はこの言葉に憤りを感じているのかもしれない…。

 

 

 

そんなことに気付かされると同時に、本を読んだ後は容易に「多様性」という言葉を使っちゃいけないような気持ちになりました。

 

 

 

また、近年障害を持つ方々などを社会的マイノリティと呼びますが、それは本当に全てのマイノリティの方もカバーできているのか。

 

我々が想像し得る障害を持つ方々や外国人居住者だけを助け、「正欲」に登場するような特殊性癖を持つ方々は”異常者”とみなして社会的に突き放してしまっていいのか(そもそも”特殊”という言葉を使っている時点で突き放してしまっているのかもしれないが)。

 

というような現代の社会問題に訴えかける側面もこの物語にはあると感じました。

 

 

 

 

かなり人間のリアルな部分まで描写しているため、

 

『どこまで原作を再現するんだ?』

 

と、期待と疑念を抱きつつ映画を拝見をしましたが、

 

 

自分の想像以上に”人間のリアル”を映し出していて圧巻でした。

 

 

 

そのシーンも再現するのか…!というシーンもあり非常に胸が熱くなりました。

 

やはり映画って最高だなと。

 

読解力がそこまで高くない僕にとって小説を映像化カメラしてくれるのは非常に有難いことです(映画化をよく思っていない方もいらっしゃると思いますがお許しを)。

 

 

でもどうしても原作全てを2時間ほどの映画に詰め込めるわけではないので、描かれていない部分を読める本も最高です。

 

結局映画も本も最高ということですキメてる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それでは最後に心に残った言葉を紹介して終わりにします。

 

 

 

「その人、ひとりじゃないといいね」

うん、と、佳道は頷く。

「誰も、ひとりでいないといいよ」

うん、と、夏月が頷く。

ーーーーー

どんなふうに生まれたって生きていける、生きていいと思える。そんな社会なら一番いいけれど、そうではないので、そんな空間を自分で作るしかないのだと感じる。

 

「誰も、ひとりでいないといいよ」

 

この言葉だけでは真意は伝わらないとは思いますが、映画でこのセリフのシーンが流れた時は目頭が熱くなりました。

 

この言葉の重みは本を読んだ人、映画を見た人ならきっとわかると思います。

 

 

人間に生まれてきた以上、社会というものが存在しそれはつまり人との繋がりが必要不可欠であるということ。

 

決して1人では生きていけない。しかし、親にも友人にも打ち明けられない悩みがあり、人間関係がめんどくさくなってしまい、1人で生きていきたいと思うこともある。それは決して悪いことではない。

 

でも、やっぱり改めて、何でも打ち明けられる、自分と同じ考えを持つ人を見つけて繋がりを持つことは大事だなと、この物語を読んで強く思いました。

 

 

だから、我々マジョリティ(と思っているだけで実はマイノリティなのかもしれない)が想像することができない悩みや考えを持つ人々が、同じ悩みや考えを持つ人と繋がっていればなと、誰も1人じゃないといいな、と強く願います。

 

 

 

 

「自分が想像できる”多様性”だけ礼賛して、秩序整えた気になって、そりゃ気持ちいいよな。お前らが大好きな”多様性”って、使えばそれっぽくなる魔法の言葉じゃねえんだよ。自分にはわからない、想像もできないようなことがこの世界にはいっぱいある。そう思い知らされる言葉のはずだろ。多様性って言いながら一つの方向に俺らを導こうとするなよ。自分は偏った考え方の人とは違って色んな立場の人をバランスよく理解してますみたいな顔してるけど、お前はあくまで”色々理解してます”に偏ったたった1人の人間なんだよ。目に見えるゴミ捨てて綺麗な花飾ってわーい時代のアップデートだって喜んでる極端な1人なんだよ。」

 

 

マイノリティ側にいる人の魂の叫び。

 

我々現代人にグサッと刺さる言葉たちなのではないでしょうか。

 

 

こんなことを言われたら、同じ苦しみを味わってない身からすると何も言い返せないような気がしますが、

 

この物語では、ここで決してこの台詞を放った人(=諸橋大也、特殊性癖を持つ大学生)を見放したりはしません。

 

同級生の女子大学生(=八重子)が必死に諸橋大也に寄り添おうとするのです。

 

 

本の帯にある、西加奈子さんの

 

「この小説は、安易な逃亡を許さない」

 

という言葉の意味はこのシーンのことではないかと僕は推測しています電球(違っていたらすみません)

 

 

ここの、諸橋大也と八重子が言葉で己の本音をぶつけ合うシーンは映画でもありましたが、

 

本の方が詳細に、そして激しい言葉でぶつかりあってるので、ぜひ本を読んでいない方は見てみて下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

という感じで、個人的に今を生きる全ての人が読むべきなんじゃないかと思えるくらい、

 

我々現代人に訴えかけてくる作品となっておりますので、

 

映画もしくは本をご覧になっていない方はぜひ読んでみて下さい。

 

 

 

また映画だけ見たよって方は、本には映画で描かれなかった細かいシーンやセリフがたくさん潜んでいるので

 

本も是非読んでみて下さい。

 

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

 

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