こんにちは、こんばんわ。

 

 

今回は西加奈子さんおまじないという本の感想を綴ろうと思います。

 

 

西加奈子さんは2回目のブログで紹介した、僕が大好きなオードリーの若林さん長濱ねるさんが好きな作家さんであり、それがきっかけで僕は西加奈子さんの本に興味が湧くようになりました。(直木賞を受賞した「サラバ!」という小説もめちゃくちゃ良かった。。。)

 

西加奈子さんのことで印象に残った話が一つあって、2018年10月7日放送のトーク番組「僕らの時代」に出演した時に、結婚の話になって、その中で

「結婚してよかったことは、『結婚しないの?』と聞かれなくなったこと」

と答えていたことです。

 

そんな理由で、、、と思っちゃいますよね。。。

 

でも西加奈子さんが

  • 「みんなは結婚をいいもの、幸せになるものだと思い過ぎてる」
  • 「結婚して変わると思ったけど、変わらへん。人間ってひとりよ、やっぱり。基本孤独やと思う。悪い意味じゃなくて。」

と言っていてちょっとだけ分かるような気がしてきます。。

 

確かマツコデラックスも、「人間って結局孤独なのよ」と前にテレビで言っていました。

 

本当にそうなのかもしれないですね…でも孤独死だけはしたくない。。

 

 

 

こんな感じで西加奈子さんの言葉には一つひとつ重みがあって、すごく心にグサグサ刺さるんです。

特に女性目線の心情を描くのが上手です!(僕は男ですが、、)

 

 

 

西加奈子作品史上最も"刺さる"珠玉の短編集 待望の文庫化! 【西加奈子×長濱ねる 特別対談収録】

長濱ねるさん絶賛! 
「何回読んでも、自分にとってのヒントやおまもりになる言葉が見つかる魔法の本です。」

悩んだり傷ついたりしながらも生きていく、すべての人にそっと寄り添うキラメキの8編。

(Amazon紹介文より)

 

 

 

この本は8つの話を含んだ短編集ということで、その中で一番印象に残った話の

「孫係」(まごがかり)

という話を紹介します。

 

この話は、自分のことをひねくれ者だと思っている小学6年生の女の子(すみれちゃん)の家に、1ヶ月おじいちゃまが住むことになるのですが、あることをきっかけにすみれちゃんとおじいちゃまがお互いの気持ちを理解するようになり、結果としてすみれちゃんの悩みが解決されていくという話です。

 

 

すみれちゃんは、父と母がすごい素直なだけに、自分だけひねくれていると感じています。

運動会ってなんだよとか、同級生のことをガキっぽいとか、いつも何かを観察しているところがあるんです。

(僕も結構ひねくれていて、飲み会とかでたまに『なんだよコイツ…』とか人間観察をしてしまうことがあるので、すみれちゃんの気持ちはなんとなく分かります、、、)

おじいちゃまのことも、口では「おじちゃまがきてくれて嬉しい」なんて言っておいて、部屋で一人になるとホッとするし、おじいちゃまが帰るまでの日数を数えてしまいます。

 

そんなある日、家に帰ると誰もいなくて、すみれちゃんは自由をしみじみと感じるんです。

そしてつぶやきます。

 

「ひとりになりたいなぁ」

 

すると部屋にはおじいちゃまがいて、聞かれてしまったのです。

でもおじいちゃまは予想外にホッとした表情でこう言います。

 

「私もです。」

 

そう、おじいちゃまも実はひとりになりたかったんです。

母がおじいちゃまのことが大好きで、色々気を遣って家に招いたが、それが疲れるんだと。

それをすみれちゃんに打ち明けると、二人は徐々に打ち解けていきます。

(僕のおじいちゃんも実は僕の実家に来るのは嫌なのかもしれない…)

 

 

二人の会話の中で、すみれちゃんが

 

「娘って可愛いものなんじゃないの?」

 

って聞くとおじいちゃまは

 

「娘だからって無条件に可愛いなんてことはない。婆さんも言っていた、子供が生まれたら直ちにが発動するわけじゃないって。」

前回のブログで湊かなえさん「母性」のことを書いたのですが、なんとなく繋がっている気がしますね。。。全ての親が子供に、無償の愛を注ぐわけではない、、。

 

 

見てない方はぜひ前回のブログもご覧ください(笑)

 

 

 

それからおじいちゃまは提案します。

 

「係(かかり)だと思いましょう。」

 

すみれちゃんは孫係。おじいちゃまは爺係。それぞれ係を務めあげようと約束するのです。

すみれちゃんは友達の前では「優しい友達」、先生の前では「優秀の生徒」をきちんとこなすように。

 

 

その話の中で一番印象に残った文を紹介します。それが

「私たちの体のすべてが私たちの意志で動くわけではないんですよ。何か大きなものに動かされているんだ。それを社会と言うかもしれませんがね。とにかく、委ねられるところは委ねましょう。私たちは、この世界で役割を与えられたなんだ。」

 

グサッと刺さりました、、

 

「係を全うする」という感覚でいれば、何か救われる気がしますよね、、

「気が効く後輩」という係、「バイトで優秀な人間」という係などなど。

西加奈子さん、すごい。。。

 

 

 

そして帰ってきたら、おじいちゃまの前で悪態をつく。

おじいちゃまは言います。

 

「人はそれを陰口だとか卑怯だとか言うかもしれない。でもそれは思いやりの心からくるんです。」

正直なこと優しいことは別なんだ。」

 

誰かを騙しているのとは違う、それで得をしようと思ってらダメだと。

 

この言葉も素晴らしいですよね。

誰かを傷つけなければ、その人の耳に入らなければ、愚痴をこぼしていいんだと。

優しい嘘、人を傷つけない嘘ってありますよね。やっぱりそれらは必要なんだなぁって感じました。

 

こうしておじいちゃまが帰っても、二人は電話をして悪態をつく約束をしました。(終)

 

 

 

 

自分らしくいられる場所で生きてけとか、自分らしくいられる職場を選べとかたまに言いますけど自分らしくいられる場所なんてほんの僅かなところしかなくて、結局一人でいる時が一番楽だったりしますよね、、。だからこの孫係を読んで、「自分は今こういう『係』を務めているんだ!」と思えばすごい気持ちが楽になると思います。

 

 

「あの女の人、男の前だと可愛こぶるよね」とか「あの人、先輩がいると全然喋らなくなるな」とかあるじゃないですか。「あの人、裏あるよね」とか言うけど、その人の何が表で何が裏かも分からないのにって(笑)

結局その人らしくないと思う部分も全部その人の一部であって、その人のことを知らないだけだと思うんですよね。

 

 

だからすみれちゃんだって「優しい友達」でいるのも、「優秀な生徒」でいるのも、「おじいちゃまの前で悪態をつく孫」でいるのも全部「すみれちゃん」あることは変わらないし、何も裏の顔とか二重人格とかではないと思うんです。

 

 

家族、友達、仕事などすべて「同じ自分」でいなければいけないことはなく、それぞれに決まった「係」がある。

そういう風に考えさせてくれるこの話は、まさに気持ちが楽になる「おまじない」を読者にかけてくれるかもしれませんね、、(笑)

 

 

他の話にもいっっっっぱい心に残る言葉があるので気になった方はぜひ読んでみてください!

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。