都知事選が終わって1週間になります。
この選挙は全国民が注視する(実に特殊な)地方選挙ですが、
今回もN党によるポスター枠販売など、
新手の「都知事選活用術」が見られました。
落選はしましたけど善戦した石丸伸二氏は、
一気に全国区の政治家として名を売ることに成功しています。
このような副産物を生み出すという意味において、
改めて都知事選は特殊な地方選挙だと、私は思います。
さてその結果についてですが、
様々な識者が考察や総括を述べられています。
予想通り順当に当選した小池百合子氏に関しての記事評論は少なめですが、
番狂わせが起こった2位と3位に関して争論が活発です。
私は蓮舫氏の敗因について
報道や識者が述べていることと異なった観点を持っているので、
今回はその主張をしてみようと思います。
蓮舫氏はそもそも勝てる候補ではない
3位に沈んだ蓮舫氏、2位を堅持できなかった理由に、
共産党との共闘が主要因であるとの意見が多数を占めています。
確かに保守勢力にとってこの共闘は、
蓮舫候補を叩く材料として有効活用できたと思います。
しかし「共産党との共闘」だけが要因だったのでしょうか。
2年前、令和4年の参院通常選挙の東京選挙区の数字を見ると、
[3位当]山添 拓(共産/現)685,224
[4位当]蓮 舫(立民/現)670,339
蓮舫氏個人で得た票と、唯一の共産党公認の票を足して135万票でした。
これが共闘陣営から見て保証された固定(基礎)票と考えます。さらに…、
[8位落]松尾明弘(立民/新)372,064
もう一人の立民公認候補の票を足すと172万票になる。
これくらいは絶対に読める数字で、
加えて打倒自公で歩調を合わせてきたれいわ・社民からの支援があれば、
200万は超えると目論んだはずなのに、結果は1,283,262票と、
「保証された固定票(135万票)」にも届きませんでした。
これだけ得票の目論見が外れると
「共産党との共闘」以外にも大きな敗因があると考えなければならないと思いますが、
私は、戦う以前の問題、候補者の人選が初めから間違っていたと考えます。
100万人以上の支持者を裏切った12年間
蓮舫氏といえば、民主党を源流とする反自民勢力の急先鋒であり、
広告塔でもありました。
平成22年の参院選では菅内閣で初入閣した直後ということもあって、
東京選挙区で史上最多の171万票を得票して当選しています。
このころからメディア、とりわけテレビでの露出が増えたわけですが、
元々の高慢な態度や刺々しい説法が際立つようになりました。
さらに閣僚としての東日本大震災対応の失敗が決定的になり、
民主党政権・菅内閣の急激な支持率下落が伴って人気を落とします。
二重国籍問題も評価を下げる要因になりました。
そして最盛期の171万票は、6年後の平成28年に112万票に減り、
12年後の令和4年には67万票まで減らしています。
実に100万人以上の支持者を失いました。
数字で見れば、反自民勢力の広告塔であったのは過去の栄光です。
なのに立民・共産共闘陣営が「蓮舫氏は最強・最良の候補」と持ち上げた。
これはまったくの見当違い、
つまり人選を間違えていたとしか言いようがありません。
期待を裏切られ幻滅させられたファンというのは、
おおむねアンチ勢力に姿を変えます。
100万人も支持者を減らしておきながら反省の色なし…。
舌鋒鋭く敵の上げ足取りに徹するスタイルを頑なに変えない。
竹田恒泰氏がYOUTUBEで語っていましたが、
都知事選での主張についても何も新鮮なものがなく、
国会での論争の延長のような現職批判と自公批判に終始していた。
これではアンチ勢力を増幅するだけです。
アンチ対アンチで盛り上がった選挙戦
その蓮舫氏が出馬会見を開いたのが5月27日。
実際は会見を予告した数日前が、蓮舫氏の始動です。
石丸氏は5月16日に出馬会見を開いていたので蓮舫氏より早かったのですが、
この時はまだ泡沫扱いに近かった。
したがって蓮舫氏の視界には現職しか映っていなかったと思います。
蓮舫氏の出馬は、現職ならびに自公勢力に緊張を走らせました。
上記のように数字で見れば往時よりも弱体しているのは確かですが、
知名度で言えばこの人に勝るものなしという存在です。
さらに現職も決して高い評価、厚く硬い支持層を持っているわけではありません。
前回選挙で公約した7つのゼロも褒められるほどの結果が出せていません。
そしてこの選挙戦で妨害勢力が現れた通り、
「アンチ小池」の存在も明らかになりました。
さらに自公が表に出るとマイナスに作用する…。
「現職は苦戦するのではないか。」そんな空気が一時流れたと思います。
しかしこの緊張がアンチ蓮舫の勢力が結集する原動力になりました。
敗者の傷に塩を塗るわけではありませんが、
蓮舫氏の嫌われ方は尋常ではありません。
「あの人、なんか感じ悪い。」という感情・感覚のレベルではなく、
「蓮舫が知事になったら東京が日本でなくなる。」
「国家機密が中国に駄々洩れになる。」「外国人優遇が突き進んでしまう。」
アンチ勢力から見ればテロリストかスパイ、危険人物の類です。
「故に蓮舫だけは絶対に当選させてはならない!」
こういう集団意識が蓮舫氏出馬会見を機に形成されたと思います。
投票率を前回比5ポイント近く上げた要因になったかもしれません。
そして「誰かを落選させるために」選挙運動に参加し投票する人というのは、
原則に死に票を投じることはありません。
故にアンチ蓮舫の9割以上が「小池百合子」を推し、投票したはずですし、
選挙では常に多数派である変化を求めない保守的な有権者層も、
消去法で「小池百合子」を選んだはずです。
ではアンチ小池はどういう選択をしたのでしょうか。
アンチ小池の願いは現職を墜落させることですから、
この人たちの票は、
支持率調査で2位に躍り出た石丸氏に集中したはずです。
遊説の妨害があったりして後味の良くない選挙になったのは、
アンチ対アンチというこれまでにあまり類の無い図式の賜物です。
「アンチ蓮舫」は小池氏の順当勝ちを支える勢力となり、
「アンチ小池」は石丸氏の大健闘を支える勢力に加わりました。
高橋洋一氏はYOUTUBEの自身のチャンネルで、
蓮舫氏にはまったく浮動票が流れなかったと説いていますが、
それは私も同じ見解です。
当選枠が複数ある議員選では悪目立ちも戦略の一つですが、
首長選や定数1の選挙で悪目立ちはマイナスにしか作用しません。
蓮舫氏は再起できるか!?
蓮舫氏に対して、或いは蓮舫氏の支持者に対して、
かなりきつい物言いになってしまいました。
敗戦したご本人も深く傷ついていることと察するのですが、
もう一度政界復帰を目指すということであれば、
現状で、定数1の衆院小選挙区での当選は難しいと思います。
ファンよりもアンチのほうが多いという特殊キャラも理由の一つですが、
このままのキャラでは党支部が快く受け入れてくれないのではないか。
新しい支部を預かるのであればまずは「低頭平身」を貫かなければ、
スタッフが苦労することになります。
まず100万人の支持者を失った事実と向き合い反省をして、
もう一度参院東京選挙区でトップ当選できれば、
今回の敗戦は糧になると思いますし、
次に咲かせる花はより大きな花になるのではないかなと思います。
私は思想的にリベラルを受け付けられないので、
蓮舫氏を応援することはありませんが、
党を背負って命がけの戦いに挑んだ勇者を称え敬います。