選挙の武器である印刷物、ポスターや名詞と様々な形態がありますが、
中でも一番重要なものがリーフレットであると、私は位置づけております。
リーフレットはA4を巻三つに折るのが標準的な大きさですね。
この大きさは、男性の上着のポケットに入り、女性のハンドバッグにも入り、
長3という、最も安価に送れる定形郵便サイズの封筒に入り、
ポスティング業者も追加料金なしで預かってくれ、
支持者がポスティングするときも、運びやすく、投函しやすい…。
ですから私の場合も、
よほどの例外を除いては、このサイズでリーフレットを作ることを奨めています。
このリーフレットの役割を営業に照らし合わせて言い換えると、商品のカタログです。
まずデザインが目に飛び込み(表紙の候補者の写真と名前)、
性能・スペックが明記され(裏表紙のプロフィール欄・連絡先)、
一枚めくると開発ストーリー(あいさつ文)が書かれており、
全開した中面に汎用性や諸機能(政治信条)が箇条書きされている。
つまり、候補者のセールスポイントが簡潔にまとめられ、
この資料さえあれば、候補者が「どんな人」であるのかを示す基本情報が得られます。
さらには、購買意欲を喚起する(支持を拡大する)パワーが
リーフレットには刷りこまれていなくてはいけません。
ですからこれを作るとなると、まずは良く撮れた写真が必要です。
次に履歴書のような年次に従っただけのプロフィールではなく、
人生の軌跡が伝わるドラマ仕立ての、経歴の演出が必要であり、
さらには、人から人に意気込みが簡潔に伝わるコピー。
政治的思考と正義感と本気さが伝わるあいさつ文。
そして、それらの情報を際立たせるデザインが必要です。
このように手間暇かかる代物ですから、
ちょっくらちょいとできるものではありません。
選挙に出ると決めたら早めに企画していただきたいのですが、
制作が早すぎると他人に真似されてしまいます。
遅すぎると政治活動に影響しますから、
選挙の3か月前に企画をはじめ、2か月前に出来ているというのが目安です。
そういうと制作に一カ月もかかるのかということになりますが、
実はここが大事なところです。
再びこれを営業に例えて考えますが、
このリーフレットを作るという作業が、営業戦略会議なんですね。
写真の選定、コピーの決定、プロフィールの構成、あいさつ文の校正、
こういうことを、できれば陣営のみんな(幹部の2~5名くらい)でやる。
そうすると、皆で商品知識について熟知することになるし、
セールスポイントも共有できる。
そしてリーフレットの書かれた内容ついて、スタッフにも責任感が芽生えます。
選挙運動が始まってから、「●●(候補者)さんの主張って、いまいちわかんない」
なんてことを陣営内で言われなくても済むわけです。
そして、苦心して手間をかけてリーフレットを作れば、
あとのポスター、政策ビラ、ハガキ、選挙公報、車載看板、連絡所看板と数があっても
リーフレットのデザインや内容の踏襲ですから、
その後、産みの苦しみを味わうことはありません。
デザインにもこだわり、手間暇かけて、
垢抜けたものを作る重要性はわかっていただけたと思いますが、
一つ注意しなくてはならないことがあります。
それは「選挙臭さ」を残すことです。
私自身、全国の選挙の現場で、他陣営の印刷物を何百と見てきています。
中には、CDのジャケットかコンサートパンフかというほどカッコいいものもありました。
中面を開いてみても歌詞カードを思わせるカッコ良さです。
そういうコンセプトですから、候補者の写真の表情も暗に物言いたげだし、
服装やポーズも嫌味なく自然でカッコいいんだけど、
演出しすぎなのか、凛とした潔さがないんですね。
常識を打ち破った技法の良し悪しが、とても気になりましたので、
これを持ち帰り、いろいろな人に見せては感想を聞いたのですが、
「なにこれ選挙なの!」との反応が多かったという結果です。
名刺も室内用ポスターも政策ビラもそうですが、
政治活動用の道具には「●●議会議員候補」と書けません。
ですから何を差し置いても、これが一目見て選挙であると伝わることが大事です。
そして主張する政治信条に合ったデザイン・写真を選ぶべきです。
若い人の場合はポップになりすぎないよう、
年配の場合でも、カラオケスナックに貼ってあるような演歌調にならないよう、
とことんデザインにこだわったとしても
あえて選挙臭さを残すことが大事です。