今回の自民党惨敗に関しては、中国のメディアも29日深夜から速報を流しているが、新華社・中国新聞社・人民日報ともに淡々と事実を報道するにとどめ、論評をできるだけ避けているように見える。一方で、分析記事として日本問題の専門家の意見を紹介している。見出しは「選挙に負けた安倍首相はどう“残局”を収拾するのか」。“残局”というのは囲碁で詰められたあとの状況を指す中国語だ。
もともと小泉時代のような批判のトーンはなく、復旦大学の日本研究センター副主任の郭定平氏は安倍首相続投についてこう分析している。「安倍首相は、自民党のためというよりはむしろ自分の政治生命のためにもう一度頑張ることを選んだのだろう。」
しかし、私は、中国政府の真の関心事が、必ずしもこれらのメディアによって伝えられているとは思わない。
まず、せっかく改善された日中関係の現状から考えて、胡錦濤政権が安倍さんの退陣を希望することはない。彼らの目下の関心は、長期的な問題よりまず今年秋に予定されている安倍首相の訪中、それに続く胡主席の訪日を成功させることだ。
首脳の相互訪問で日中友好ムードをさらに盛り上げようと考えていたところに相手の安倍首相がこのような大敗を喫したことで、中国側が、安倍首相は果たして続投できるのか、続投しても支持率がさらに低下するのではという不安視していることは確かだろう。
また安倍首相は8月後半に内閣改造を予定しているが、その前の具体的な問題として、安倍首相の訪中の日程を固めなくてはならない。中国共産党の人事が発表される第十七回代表大会の前か後かという微妙な問題もある。
年内にはAPECもアジアサミットもあり、日中間だけでも3~4回の首脳会談が予定されている。不安定な“選挙管理内閣”と思われるのは対中国に限らず、外交上、不利となるだろう。