いよいよ29日の参議院選挙まで2週間となり、私自身、先週9日月曜日のTBSのニュース番組「ニュース23」での大胆予測コーナーを皮切りに、今日15日に出演したテレビ朝日の報道番組「サンデープロジェクト」でも、選挙結果予測を聞かれるようになってきた。
そこで《ざ・こもんず》で、出演した両番組での内容とその議論を補足しながら、今回はまず発足からこれまでの安倍政権の評価を考えてから、次回参院選の結果がどうなるのかを予測する。
■安倍政権9か月の評価
昨年9月末に発足した安倍内閣は、支持率73.4%、不支持率23.7%と発足時としては歴代内閣最高の支持率に支えられ、就任早々韓国、中国を訪問して華々しいデビューを飾った。
しかし、その後の郵政造反議員の復党問題で支持率は急落、さらに年末には佐田行革担当大臣の政治資金管理団体をめぐる事務所経費問題での辞任、年が変わってからの1月には柳沢厚生労働大臣の「女は産む機械」発言により、その支持率は下がり続けた。
その後安倍内閣は、国会で防衛庁を防衛相へと昇格したり、国民投票法案、教育関連3法案などを次々に成立させて、ここで支持率は一応下げ止まり、若干持ち直したかに見えた。
ところが、3月には松岡農水相のナントカ還元巣問題に端を発する政治をめぐるカネの動きは松岡自身の自殺という結果に終わった。さらに会期末に向かって急浮上したのが「消えた年金問題」だった。
そして今月に入って久間防衛大臣の原爆投下「しょうがない」発言での辞任、先週末には赤城農水相の後援会事務所経費問題へと続いている。
私は安倍内閣の評価はまだ分からないところもあるが、とにかく就任から9か月でこれだけ次から次へとアップダウンのあった内閣は珍しいと感じている。とりわけ参議院選挙間近に迫って2か月足らずの間だけを見ても、波瀾万丈だと思っている。
ニュース23に一緒に出演した田勢康弘大学院教授、星浩朝日新聞編集委員はこれに関連したいくつかの質問に次のように答えている。
Q. 安倍は選挙の顔としても戦えるとして総理に選ばれたのではなかったか?
【田勢康弘氏】
----それは幻想で、安倍さんが幹事長の時に参院選に大敗しているから、必ずしもそうとは言えない。これまで、安倍政権の出だしからいくつかの実績を残していて、その中でも一番は日中首脳会談をやったことだと思う。
しかし、ひとつひとつ実績が支持率に結びついていない。この原因には対応のまずさ、あるいは総理大臣を中心としたチームワークの弱さなどがあるからで、運も悪いというか、気の毒な面もある。----
Q赤城農水省の問題に至るまで、政治とカネをめぐる問題がいくつか浮上した内閣だが、全体的にはどういう印象か?
【星浩氏】
------- 安倍政権の9か月をフェーズという考え方で見ると4つの見方ができる。
▼第1フェーズ:まずは若い総理大臣で、日中関係を構築したという時期。
▼第2フェーズ:郵政造反組の復党を典型として小泉改革の修正をいろいろとやって、支持率が下がり始めた時期。
▼第3フェーズ:独自色を出し、国民投票法案、教育関連3法で、支持率が持ち直した時期。
▼第4フェーズ:年金問題などを発端に続々と問題が噴出。年金の問題を含めて、有権者が損得だけの問題ではなく、安倍さんのハンドリング、処理能力に疑問を感じはじめた時期。
つまり年金という非常にシビアな問題が起きたときに、問題はここだというのを国民に上手に説明する能力が足りなくて、これは赤城さんの問題にもつながっている。
本来なら問題がここにあるから、これからどう処理して行きますと提示すればいいところを、安倍は強弁してしまう。処理能力という点からすればやや未熟という点が出ているような気がする。-----
Q. 松岡大臣や久間大臣は早く罷免したほうが良かったのでは?
【田勢康弘氏】
------松岡さんの場合は罷免する理由があまり無かったと思う。事務所経費の問題は本音で言えばああいうことをやっている政治家は多い。
しかし、久間さんはこれまでにも失言が問われていたこともあったが、今回の原爆に関する発言はこれまでの失言とは違って歴史認識も間違っているし、ああいう人を我々日本が防衛大臣として頂いていたのかということと、辞めた理由も選挙に負けるからというとで、非常に悲しい。-------
【星浩氏】
------政権を発足した時の論功行賞人事を引きずっているから、なかなか首が切れない。それから安倍自身、官僚などを上手に巻き込んで纏める大臣を経験していないから人事を見る目、その眼力が無い。------
そして、私はどう思うかと言えば、安倍内閣には処理能力を含めて内閣としての全体の安定感が醸成されていない。それを醸成する前に色んな問題がどんどんどんどん出てきて、その対応の拙さが目立ってしまう。
例えば松岡、久間、赤城の各大臣への対応でも分かるように、安倍はまず全体的に何でも庇うというところから入る。それで色んなこと追求されて攻められると、強気で応じる。
しかし、後になって庇いきれないといなって、そのダメージと傷をさらに広げてしまう。
これまでの歴代総理の相場で言うと、当選10回、議員在職25年というひとつのものがあった。これが安倍は両方とも半分だから、若さは売りなのだが、こういうことが続いてくると、やはりまだ若い、未熟というところに結びついて、安定感を失ってしまっている。
3人もの大臣が9か月の間に辞めたことも異例。これは「トカゲの尻尾切り」という政権末期の症状と昔からよく言われていることで、こういう現象がこれだけのことが続くということも、珍しい内閣だと言える。
このことを踏まえ、次回は田勢、星の両氏の話と、今日のサンプロでの話を織り交ぜながら、選挙結果を予測する。(続く…)