国会が終わって、いよいよ参議院選挙一色のところに、赤城農水相の疑惑が明らかになった。これはただでさえ逆風を受けている政府与党にとってはもの凄い痛手となるだろう。
国民・有権者というのは政治とカネの話にはとても敏感だから、これを受けて有権者の動向がどう動くかにも注目されるが、少なくとも政府与党にプラスになるはずがない。
それにしても、2か月足らずで、消えたと言われる5000万件の不明記録の問題、続いて松岡農水大臣の自殺、久間防衛大臣の原爆投下「しかたがない」発言による辞任と、政府与党は嵐の中の選挙戦で大変だろう。
人によっては89年の宇野内閣の時の惨敗、つまり底が抜けるような惨敗があるという見方が出てきてもおかしくない。
しかも松岡農水相の政治とカネ、特に事務所経費の問題があった後任を選ぶ時に、こういう問題がチェックできなかったのか、安倍内閣には危機管理、脇の甘さを感じる。
任命権者の責任と言われているが、ここは本当に安倍政権のアキレス腱となっていて、論功行賞人事内閣、仲良しチーム内閣と言われている印象を国民・有権者も改めて感じていることだろ思う。
ただ、テレビ番組でも言っことだが、今回の事務所経費問題、特に後援会事務所経費の問題は昔からくせ者と言われているものである。
これは政治資金規制法上、議員個人の政治団体はの扱いが大きく分けて3つあって、この中での線引きがあいまい。
まずこの3つを整理すると、
1. 政治資金管理団体経費(→佐田行革大臣の問題)
2. 議員個人事務所経費 (→松岡農水大臣の問題)
3. 後援会事務所経費 (→赤木農水大臣の問題)
がある。
1つ目の「1. 政治資金管理団体」は、以前、民主党の小沢代表の10億円にのぼる事務所経費の不動産投資が指摘されたのもこれで、この経費の不透明さで安倍内閣の佐田行革大臣が責任をとって辞任したもの。
2つ目の「2. 議員個人事務所経費」は、政治家としての本拠地事務所関するもので、自殺した松岡農水相が「ナントカ還元水」といって問題なった経費がここに属するものだった。
3つ目の「3. 後援会事務所経費」は後援会の事務所に関するもの。後援会とは有り体に言えば、支持者の集まり。大した政治活動はしないが、とりわけ保守党の議員にとっては大事な団体。そして、この事務所をどこに置いて、どう経費を処理するかという問題は昔から多いところでもある。
そしてこれこそが、先日の国会で成立した「改正政治資金規制法」がザル法と言われる所以となっている。
「ザル」と言われるポイントは、松岡ナントカ還元水問題で火が付いて、5万円以上の経費の経費については領収書を添付することを義務化したが、この「3. 後援会事務所経費」は、実は対象外となっているところにある。
議論の時点から「それじゃ、抜け道を作っているようなものだ」という危惧があって、ザル法をザル法のまま改正するのはおかしいという野党からの追及があった。
そして、赤城の今回のケースは、まさにここに引っかかったもの。
しかし、私の知る限り、特に保守系はそうだが、野党も後援会事務所はもの凄く曖昧。中身を言えば、大体はバス旅行とか温泉旅行、国会見学や飲み会といったものが後援会活動で、政治資金規正法上計上しにくいし、そもそも今でも公表の義務がない。
赤城の立場から言えば、これは法律で定められた通りで、何が悪いんですかという立場だろう。この後援会事務所経費は、そういう釈明が通る分野と言えなくもない。
安倍総理も「自分もそうだった」と言っていたが、特に2世、3世議員の後援会事務所というのは、祖父の家とか、代々の生家など実家に置くことが多い。
今回はそこに焦点を当てたわけだが、これだけ政治とカネの問題と言われいるのだから、そこをきちっと処理しておかないと、現代の政治では通用しないだろう。
「昔からだから」などといった感覚のある議員がいまだいるとすれば、赤城農水相に限らず、認識が甘いと言わざるをえない。
