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参議院選挙の日程を変えてまで国会会期を大幅に延長したのは予想外だった。


天下り斡旋禁止を中心とする国家公務員改革法案と社会保険庁法案を、5日間の延長でなんとか上げるつもりだったが、それではおさまらないという激しいやりとりが官邸と参議院、官邸と衆議院の間であった。


最終的に6月15日の夜、極秘で政府与党首脳が集まって、12日間の延長、参議院選挙は一週間ずらして7月29日の投開票となった。


何でここまで無理するかというのは、ある種、一か八かの賭けに近い。この20年間で、89年の宇野内閣、98年の橋本内閣と2回参議院選挙が延長された。だがいずれも、延長したことが裏目になった。


3点セットと言われた宇野の場合は、リクルート事件、農産物自由化とかいろんな問題による逆風の中、選挙直前になって女性スキャンダルが出てきて、これが決定的になって国民有権者が完全にそっぽを向いた。その結果、自民党の議席は過去最低になり、即退陣となった。


橋本の時は一週間前でさえ、各マスコミの調査が自民党有利で、橋本内閣続投という見通しだった。それが、税制をめぐる橋本の発言が、減税をする、しないで二転三転して揺れた。


これがきっかけになって、消費税率を3%から5%へと上げたことや、医療費の引き上げなどで総額9兆円以上の国民の負担増が橋本内閣で行われたということが一気にクローズアップされて、野党は一点集中で攻撃した。そして、それまでの実績をいくら橋本内閣がうったえても、10兆円近い負担増を強いた内閣ということで、一週間でガラッと世論が変わって惨敗し、退陣に追い込まれた。


これは両方とも延長後、しかも投開票直前にそういう問題が出てきて負けている。今回もそれがプラスマイナスどっちになるか分からないが、色んな経験則から言っても、今回は強行採決を連発してやっていかねばならない安倍内閣にとって、プラスになると考える人は、まずいないのだと思う。


ただ、唯一言えることは、選挙には鉄則があって、受け身に回って言い訳釈明する選挙はまずダメで、必ず攻撃に出なければいけい。そうすると、今の安倍与党からすると、年金の逆風の中で反転攻勢の妙手が無いわけで、そうすると、何とか、社歩調改革と緊急性を要する年金の時効撤廃、それから、松岡大臣の自殺に絡む緑機構のかんせいだんごうの温床とか、どうしょうもないような組織である社会保険庁の組織だとか、その突破口がまずは天下り斡旋禁止だということで、攻勢に出られる選挙の戦略戦術として、これを何としてでも上げたい。


そうするとどうしても参議院から言っても時間的余裕は無い、大幅延長しかないということで、ようやく落ち着いた。その攻勢に出る説得を、この一ヶ月半で国民が納得するかどうかだろう。


特に年金については、謝ってなおかつ「これだけのことをします、やっています、だから安心してください」というのを、参議院選までに有権者に訴えて、有権者が納得するかどうが、すべてそこにかかってくる。でも綱渡りだと思う。


それから、責任論が色々出てきて、自民党の青木参議院会長も今度の選挙は責任を明確にしなければいけないと言っている。そして、当の安倍総理自信も自分が最高責任者として全ての責任を負うと言っている。


責任論については、一般的には過半数を割れば責任を取って辞めると聞こえるが、必ずしもそうではない。ここが曰く言い難い微妙な所で、総理が辞めるほどの負けがどれくないのものなのか、その瀬踏みがこれから一ヶ月間、ずっと続くのではないだろうか。


私の場合は、47議席±2と手堅い数字を読んでいるが、例えプラス2でも49議席で、これは過半数割れ。でもこの数字なら、国民新党との連立も可能性としてはありえるから、即辞める必要は全くない。


これがマイナス2以上、45議席以下の場合は、橋本時代は44議席ということもあり、ひとつの目安となる。


※この記事は《ざ・こもんず》 に6月27日に掲載されたものです