韓国はどこまで北に擦り寄るのか? | 世界日報サポートセンター

韓国はどこまで北に擦り寄るのか?

突出する韓国の対北支援
大規模なエネルギー・食糧の提供検討
国内保守層や米との摩擦も

 南北対話の本格的な再開をきっかけに韓国が北朝鮮に大規模なエネルギー、食糧を支援する方針であることが明らかになった。六カ国協議再開や核廃棄に明確な道筋が見えない中、対北支援が突出することに難色を示す国内保守層や米国との間で摩擦が生じかねない。訪米中の韓国統一相と米政府との意見調整が難航することも予想される。(ソウル・上田勇実)


 今月十七日に韓国の鄭東泳統一相が北朝鮮の金正日総書記と会談した際に言及した「重要提案」について、韓国有力紙の東亜日報は二十八日付で、大規模なエネルギーおよび食糧の支援と経済特区開発などを通じた北朝鮮経済の回復などを柱とする「北朝鮮版マーシャルプラン」(注)がその中身だと報じた。


 同紙は政府関係者などの話として、鄭統一相が北朝鮮の六カ国協議復帰と核廃棄の前提条件として北朝鮮経済の抜本的立て直しにつながる経済支援を提案し、①重油の提供②韓半島エネルギー開発機構(KEDO)による軽水炉建設再開③電力支援――などを提示し、開城工団に韓国から電力を送り、北朝鮮の他地域にはロシアの余剰電力を提供することも伝えた。これらの提案に対し金総書記は、肯定的な反応を示したという。


 また韓国通信社・聯合ニュースは同日、韓国政府が金総書記に提示した「包括的かつ具体的な南北経済協力計画」の構想と関連し、エネルギー支援や白頭山観光など七項目にわたる事業を検討していることが統一省の内部資料から明らかになったと報じた。


 この内部資料には、「エネルギー支援」「鉄道の近代化」「白頭山観光」「南浦港の近代化」「山林の緑化」「南北共同による営農団地造成」「河川の共同利用」など、統一省が関係省庁との協議を経てまとめた「七大新動力事業」が記されているという。前述の「重要提案」とは直接的には関係ないが、どちらにも長期的に北朝鮮に核廃棄を迫るプロセスとして有効との判断が働いている。


 韓国では「核廃棄すれば二十年間にわたり北朝鮮経済を支援」といった報道もあり、南北対話の再開をきっかけに韓国政府が北朝鮮に大規模な支援を開始するのではないかという見方が急速に強まっている。今のところ統一省も外交通商省も報道内容を否定するなど慎重な姿勢だが、核問題で主導的な役割にこだわっている韓国が北朝鮮への支援を拡大していくのは間違いないとみられる。


 しかし、こうした韓国政府の方針に対しては批判も多い。最大野党であるハンナラ党の朴槿恵代表は、先日の記者会見で次のように指摘した。


 「人道的レベルで北に食糧や肥料などを支援するのはいいとしても、韓国も北に人道的答礼を要求できる十分な資格がある。国軍捕虜や拉致被害者の生死確認と送還問題、離散家族再会、脱北者問題などに対し韓国も北に言うべきことは言い、北は約束を守らなければならない。韓国政府がこうしたことを堂々と処理できずにいるので、北の機嫌ばかりうかがっていると批判される」


 韓国政府は二十六日、北朝鮮が要請していた十五万㌧の追加肥料支援に応じることを決め、二十八日には五千㌧を積んだ船が韓国南部の麗水港から北朝鮮の南浦港に向けて出港した。これで先の南北閣僚級会談で決定され、既に支援が完了した二十万㌧と合わせ肥料支援は計三十五万㌧。韓国政府はこれとは別途に五十万㌧の食糧支援も検討中だ。


 しかし、この人道支援についても「食糧難にあえぐ一般住民に届いているか疑問」という指摘が少なくない。


 現在、訪米中の鄭統一相は、米政府首脳部に「重要提案」をはじめ韓国の対北支援政策を説明しているとみられるが、支援の効果に疑問を抱く米国の理解を得るのは容易ではない。韓国政府は「人道と同胞愛」を強調して支援拡大の正当性を強調するが、支援をテコに核問題のソフトランディングを導き出そうという韓国政府の思惑通りに北朝鮮が動き出すか依然として不透明なままだ。



 (注)マーシャルプラン=第二次大戦後、米国が欧州に対し実施した大規模な資金援助。これにより戦争で壊滅的な打撃を受けたドイツ経済を救ったとされる。


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