アナン改革案/抜本的だが楽観視できない | 世界日報サポートセンター

アナン改革案/抜本的だが楽観視できない


 アナン国連事務総長が国連改革についての報告書を発表した。
 最大の特色は日本が期待する国連安保理常任理事国の拡大のほか、米国が最大の関心事としている国際テロ対策、人道的危機に対処するための安保理の予防的な軍事力行使の容認、人権委員会に代わる人権理事会の開設など抜本的な改革案が提示されていることだ。


日本にプラス面多い案

 アナン総長は同改革案について、九月に開かれる国連特別首脳会合前の合意を求めているが、わが国にとってもプラス面の多い案であり、支持の方向で詳細に検討すべきである。

 同報告は同総長の要請を受けたハイレベル諮問委による昨年末の答申を受けて作成されたもの。

 安保理改革については、答申を受けて拒否権なしの常任理事国六カ国と非常任理事国三カ国を増やす案と、四年任期で再選可能な「準常任理事国」八カ国を新設する案の二つを併記した上で、選択を各国に委ねるとしている。わが国はもちろん前者案を支持し、常任理事国入りのための外交活動を活発化すべきだ。

 「より大きな自由の中で」と題した報告書は、自由拡大のために安全保障、人権擁護、開発対策の一体化の必要性を訴えている。的を射た観点だ。

 安全保障面で注目されるのは、テロ対策である。報告書はテロを「社会、政府、国際機関を脅迫するために民間人や非戦闘員を殺したり、重大な傷害を与える行為」と定義し、来年九月までにテロを禁止する国際協約を締結することを提案している。イラクなどでの自爆テロ禁止を呼び掛けたものとして高く評価できる。

 また、ブッシュ米大統領が提案した核、化学、細菌兵器の不法取引を停止させるための拡散防止構想(PSI)支持をも表明した。さらに核テロ反対条約の速やかな締結と核兵器用の濃縮ウランとプルトニウム拡散禁止条約交渉をも呼び掛けた。いずれも米国への歩み寄りだ。

 国連はアフリカのルワンダの虐殺を防げなかったし、旧ユーゴのコソボ危機でも無力だった。その反省に立って、安保理が予防的に軍事力を行使できる基準作成を報告書が求めたことも大きな前進だ。この基準は、ジェノサイド(民族大量虐殺)、民族浄化活動、その他、人道に対する犯罪などに適用されるべきだ。

 人権擁護面の柱は国連人権委の廃止提案だ。ジュネーブに本部を置く同委は米国などから批判の的となっていた。代わって、新設を提案された人権理事会は安保理や総会と並ぶ重要機関となるもので、メンバーは最高水準の人権基準を持つ国が総会で任命されることを提案している。米国の批判に応えた国連組織改革だ。

 開発面の柱としては、二〇一五年を目標にすべての富裕諸国が国民総生産の0・7%を開発援助に振り向け、開発途上国は来年末までに、初等教育の実施、保健衛生制度の前進、エイズ拡大阻止などを中心にした貧困脱出計画を採択することを求めている。

寄せ集め国連の限界も

 報告書は、二十一世紀の脅威に対処するためには密接に絡み合った国際安全保障、人権、貧困対策の三つと包括的に取り組むことが必要とのアナン事務総長の哲学を示したものとして評価できる。

 しかし、問題はエゴで動かされやすい主権国家の寄せ集めという国連の限界だ。報告書は超大国の米国と多数派の途上諸国双方の要求を立てた内容だが、前途は決して楽観視できない。

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