新ローマ法王/宗教対話の一層の深化を期待 | 世界日報サポートセンター

新ローマ法王/宗教対話の一層の深化を期待

 故ヨハネ・パウロ二世の後継者を選ぶ法王選挙(コンクラーベ)で、第二百六十五代ローマ法王にドイツ人のラツィンガー枢機卿が選出された。

 新法王がサンピエトロ大聖堂のバルコニーに姿を現すと、広場をうずめた十万人近い信者たちが喝采(かっさい)の声を上げた。

 新法王はベネディクト十六世を名乗る。ドイツ人の法王としては十一世紀以来九百五十年ぶりで、十一億人を擁するカトリック世界の重責を担う。

 

保守派の中でも最右翼

 

 新法王の選出を祝うとともに、宗教的リーダーシップを発揮し、現代世界が直面する深刻な精神的諸問題の解決に当たることを願ってやまない。

 

 コンクラーベは十八日、バチカンのシスティーナ礼拝堂で始まり、四回目の投票で決定した。

 

 信者が急増している中南米やアフリカなど新興勢力から選出を望む声も強く、選挙の焦点は「イタリアを含む欧州勢」と「非欧州勢」の駆け引きとも見られていた。しかし、両者とも候補者を絞りきれず、前法王の右腕と言われ、首席枢機卿として葬儀を取り仕切った同枢機卿が選ばれた。保守派の中でも、最右翼と言われている。

 

 一九二七年、ドイツ南部の村マルクトルに生まれ、三九年神学校に入学し、大戦中はドイツ軍の対空部隊に所属した。戦後、捕虜生活の後、神学校で学び直し聖職者に。七七年ミュンヘン大司教となり、同年枢機卿に。八一年にヨハネ・パウロ二世の下で、教理省長官となった。

 

 前法王は、外交的に積極的で、教義や規律面では保守的だった。新法王も同様に、女性の聖職者や聖職者の結婚には、否定的な思想の持ち主と伝えられる。

 

 倫理的に厳格であることは重要だが、「新しいぶどう酒は新しい皮袋に入れるべきである」(マタイ福音書)というイエス・キリストの言葉にあるように、旧来の教義や伝統にとらわれず、新しい時代の要請に応える姿勢も必要だ。

 

 カトリック世界が直面している最大の課題は、霊的な刷新をいかに図るかという問題である。

 

 ドイツはカトリック信者の多い国だが、信者も聖職者も減少し続けている。聖職者がいなくなって修道女が職務を代行している教会もある。教会収入の減少でベルリン大司教区は事実上破産し、アーヘン司教区もバンベルク司教区も似たような状況を迎えている。

 

 オーストリアのサンクト・ペルテン教区神学校では、教師や神学生がホモ行為や児童ポルノをインターネットで閲覧していたことが発覚し、昨年八月閉鎖された。

 

 米カトリック司教協議会委託の報告書によれば、米国では一九五〇年から二〇〇二年までの間に、聖職者四千四百五十人が未成年に性的虐待を加えてきたことが判明した。被害は一万一千件に上っている。

 

 これらのスキャンダルは、身体を蔑視(べっし)してきた修道生活の破綻を物語っているし、その独身制度や女性聖職者問題など、見直しが迫られるものだ。

 

柔軟な対応と和解が必要

 

 ユダヤ教やイスラム教、ギリシャ正教との和解など、前法王が進めた他宗教との交流は、カトリック自体の発展的変容をもたらす契機となろう。これからも積極的に進めてもらいたい。世界平和への道は、宗教指導者たちの柔軟な対応と和解なくして困難だからだ。

 

 新法王の直面する課題は多い。しかし、何よりも、宇宙の根本である神と人類との関係をいかに回復すべきか、この問題の取り組み方に、世界の行く末が懸かっている。

 

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