ETV特集「パンデミックが変える世界~紛争地帯からのSOS」を観る | 世日クラブじょーほー局

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 さる9月19日、ETV特集「パンデミックが変える世界~紛争地帯からのSOS」が放送された。

 

 2018年にノーベル平和賞を受賞したコンゴ民主共和国の医師、デニ・ムケウェゲ氏をフィーチャー。ムケウェゲ氏はこの20年間で、6万人の女性を治療してきた。加えてコロナワクチンをめぐる、ビル・ゲイツの財団による世界的取り組みも紹介された。

 

 コンゴ民主共和国の特に東部は、150の武装勢力が入り乱れ、20年以上紛争状態。レアメタル・タンタルの埋蔵地でもある当地において、武装勢力が住民支配の戦略武器としているのが女性に対するレイプ。そのやり方はこうだ。

 

 「公の場で集団的に性暴力が行われる。すると人々はそこで女性に対する非人道的な残虐行為を目撃してしまう。そして激しい恐怖に襲われる。被害者の女性たちは共同体を追われ、家族を守れない男性たちは恥じて村を去る」(ムクウェゲ氏)。

 

(ムクウェゲ氏)

 

 当地にあるムクウェゲ氏の病院に運び込まれて来た被害者の姿が映し出されたが、顔や腕に激しい裂傷(骨が剥き出し)。手首を切り落とされた者。医師が被害者を見て、「膣と肛門がつながってしまっているのか!」との声。まさに酸鼻を極める地獄絵図。敵の子を宿す者も多数。さらに心の傷が大きい。

 

 印象的なシーン.。社会復帰を目指す被害者の女性を集めて体験談を語り合い、口に出すことで解放させようとするムクウェゲ氏の試みで、ある女性が、自分は名誉や勉学の場所、そして、純潔を失ったと嘆く。ムクウェゲ氏は、それは違うと。本当の純潔はあなたたちの中にあると。そして私(ムクウェゲ氏)が望むのは、君たちがここ(保護施設)を去ること。軽やかな足取りで、美しくエレガントな姿で、と語りかけた。

 

 ムケウェゲ氏は度々の殺害予告にも屈せず、「人のために尽くせるのが人間である証」「悲劇から目を背けるのは共犯と同じ」と信念を訴える。ノーベル賞受賞によって、ムケウェゲ氏の環境はてっきり、劇的に改善されたかと思いきや、コロナ禍も手伝って、人、モノ、金すべてにおいて、ひどく不足しているのが実情で、病院の運営はすこぶる厳しい。多くの人々の関心とともに支援が望まれる。

 

 なお、このコロナ禍で、武装勢力のシノギが枯渇する中、その矛先は住民に向かい、家を失い、町を追われ、難民となって国境に押し寄せる事態に。コロナは弱者に対してもっとも厳しい状況を出来させている。ただこのグローバル時代にあって、自国だけを終息させても、他国で感染が続けばいずれまた舞い戻ってくる。それこそ世界が一つとなって取り組むべき課題と番組は言うが、同感だ。

 

 他方、番組では「COVAX」という仕組みを紹介。これは、世界20社以上のワクチン開発会社、先進国の資金、ビル&リンダ・ゲイツ財団の寄付、ODAなどを集め一括で管理し、その資金で20憶回分のワクチンを共同購入する。そして分配にあたっては、先進国、途上国の差別なく、各国人口の20%分を公平に分配するというもので、世界172か国が参加を表明し、日本もその中に入っている。20%分で、基礎疾患のある人、高齢者、医療従事者などを優先的にカバーすることで、一どきに感染終息を狙う。ただ、米・中・露は参加表明しておらず、自国でワクチンを囲い込むスタンス。

 

 ところで、コンゴ民主共和国の首都キンシャサといえば、ボクシングヘビー級チャンピオンのジョージ・ファアマンをモハメド・アリが破ったキンシャサの奇跡(74年)が有名。それはともかく、同国は旧ザイールであり、その隣にはコンゴ共和国が存在していて、こんがらがるのだが、元々は両国は19世紀末まで、コンゴ王国という一つの国だった。コンゴ王国はポルトガルの支配を受けたが、その19世紀末にベルギーとフランスによる分割統治となり、コンゴ民とコンゴ共に別れた。1960年にそれぞれ独立し、今日にいたるというわけだが、読売新聞9月29日付国際面によると、コンゴ民のリテ人権相が旧宗主国であるベルギーに、植民地時代の補償を求める旨、表明したという。ほかのアフリカ諸国(ブルンジ、ナミビア)でも同様の動きがあるとのこと。これに対して、ベルギーのフィリップ国王は、当時の自国による植民地支配に対して遺憾の意を表明したとのこと。

 

 コンゴの現下の状況に、このような歴史的背景があるということも踏まえて、考えていかなければならない。