素人日銀ウオッチャーの日銀考

素人日銀ウオッチャーの日銀考

日銀の金融政策について日々感じたこと・考えたこと(実態はツッコミ)を、マーケット関係者・エコノミスト・経済学者でない素人の立場で綴っていきます。メインメニューは金融政策決定会合議事要旨や政策委員の講演・記者会見テキストの鑑賞およびそれに対するツッコミです。

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挨拶に引き続き、片岡君の記者会見を取り上げます。

 

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2019/kk190228a.pdf

 

3つ目の質疑応答からまいります。

 

(問)※4~5ページ

『2点お聞きします。1点目は、講演で、金融緩和が「長期化するほど、出口戦略の負荷が高まりますし、金融緩和の副作用も累積的に高まります」とおっしゃっています。出口戦略の負荷が高まるというのは具体的にどういうことか、何が起こり得るのでしょうか。また、金融緩和の副作用が顕現化した、あるいはもっと強まり累積的に大きくなった場合には、何が起こるのかについて、具体的に教えて頂きたいと思います。
2点目は、「財政・金融政策のさらなる連携を図る工夫を講じることで、市場や経済主体の期待や予想に働きかけていくことも重要である」とおっしゃっています。金融政策と財政政策の色々な協調は既にされていると思いますが、この「さらなる連携」とは具体的にどういうことをイメージされているのか教えてください。』

 

(答)

『1点目については、ご案内の通り、物価の現状は、2%の「物価安定の目標」から非常に遠い状況です。そうした状況を考えますと、現状、出口政策までは非常に距離が遠いことが前提としてありますので、出口政策を具体的にどう進めるのかについては、この場でお答えは差し控えさせて頂きます。ただ、直感的に申し上げて、緩和が長引けば長引くほど、そこから平時の状態に戻すには、時間もコストもかかることは明らかであると思いますので、そうした意味を含めて、講演では出口政策へのコストが強まるのではないかと申し上げました。』

 

前半の部分は「別に聞いてないんですが」って感じですけども、まあ要は「元に戻すのがより困難になる」ということですな。

(既に元に戻すのは十分困難だと思いますけど)

 

『副作用については、現状、私どもとしましては、金融機関等について具体的な副作用があるとは認識していません。ただ、低金利環境が長引くと金融仲介機能が阻害されるのではないかといった点については、金融システムに対する副作用だとして、注視しています。』

 

無難に逃げました。

 

『2点目については、色々な手段が考えられると思います。アベノミクスのもとで、2013年以降、金融、財政、成長戦略といった3本の矢を使ってデフレからの脱却に邁進していくという基本的な方針は、私自身、変わっていないと認識しています。そうした中で、足許の内外の経済動向を勘案しながら、「物価安定の目標」を早期に達成するために、何をやっていくかという視点で、財政との連携をより考えていく余地があるのではないか、というのがお話した趣旨です。具体的に何かということについては、この場では申し上げられないとご理解頂ければと思います。』

 

おそらく本音のところは「梯子を外すな(外したままにするな)」ということだろうと想像してますが、果たして。

 

(問)※5~6ページ

『1点目は、委員は、講演で、追加緩和が必要だという従来の主張をされています。日銀は球切れだとよく言われていますが、具体的に、今どのような手段があるのか、考え得る中でのベストなものを可能でしたら
具体的にお話し頂けますでしょうか。

(2点目は割愛)』

 

(答)

『1点目ですが、私自身は、過去の金融政策決定会合の公表文、ないしは議事要旨などにも記載されている通り、追加緩和の手段としては、10年以上の国債金利をさらに引き下げるように金融緩和を強めるべきだ
という点と、コミットメントの強化という観点から、中長期の予想インフレ率が下振れするという判断がなされた場合には間断なく金融緩和を行うとのコミットメントを結ぶべきだという点を申し上げています。ですから、現状、追加緩和の手段としては、これら2つが私自身の主張であるとご理解頂ければと思います。』

 

具体性に乏しいですよね。であるからこそ議案の形で出せないとも言えるでしょうが。

 

(問)※6~7ページ

『そもそも論になりますが、2013年の異次元緩和の導入以降、かなり大規模な金融緩和をしているのに、なぜ物価が2%になかなか達せず、むしろ弱めの基調になっているのでしょうか。振り返ってみて、何か日銀の政策が足りなかったのか、それとも、日本経済の持つ根本的な問題があるのか、片岡委員ご自身のお考えを教えて頂ければと思います。
それにあわせて、先程、追加緩和の措置として、10年以上の幅広い国債金利の一段の引き下げや、コミットメントの強化を挙げられていましたが、既にこれだけ緩和しても2%にいかない中、そういった措置で果たして物価目標の達成ができるのか、達成できるとするならば、その根拠を具体的にお聞かせください。』

 

(答)

『先に2点目からお答えします。できていないことの根拠を示すのは難しいのですが、できるまでやるといった行動を伴う意思を示していくことが重要なのではないかと私自身は考えています。』

 

まあそれは否定しないが一歩間違えれば太平洋戦争と同じ惨禍を繰り返すことになりますよね。

 

『1点目のご質問ですが、これまで何が足りなかったかについては、色々なご意見があると思います。基本的には、2016年9月の政策変更の際に、「総括的な検証」という形で日本銀行がまとめていますが、その際
には、大胆な金融緩和を行う中で、なかなか目標が達成できない理由として、当時の世界経済の変調、原油価格等エネルギー価格の低下、国内では消費増税の影響が挙げられていると思います。私どもとしては、目標を達成するまでこの金融緩和をやり抜くことが非常に重要だと認識していますので、今後についても、世界経済の動向など様々な逆風があると思いますが、これに負けずに頑張ってやっていければと考えています。』

 

お前の頭には気合と根性論しか無いのか。嘆かわしい。

 

(問)※7~8ページ

『物価が伸び悩んでいる理由として、講演の中で、需給ギャップの拡大が物価の上昇に効きにくくなっている可能性があると指摘されています。その一方で、緩和を強化して、需要超過幅を一段と拡大させるよう働きかけることが重要だとも述べられており、一見すると矛盾する感じもします。追加緩和する時に、例えばマネタリーベースと金利と物価上昇率の関係や、効果の再検証も必要ではないかと思いますが、それらをどうつなげられるのでしょうか。』

 

(答)

『需給ギャップの拡大が物価に効きにくくなっている理由については、昨年7月の展望レポートで再度整理した通りだと思います。それを前提として、金融緩和を強めて需給ギャップを拡大させていくことで物価が上がるのかという点については、私自身は、手段としての金融緩和の強化に加えて、コミットメントという形で、中央銀行が物価安定を達成するという約束を信認してもらう取組みをあわせて行うことで、予想インフレ率そのものに働きかけていく工夫が必要ではないかと従来から申し上げています。』

 

何をやったところでそう簡単に人々の行動様式は変わらないと思います。


『加えて、最近では、政府と日銀の連携をさらに強化させることを通じて、2%の物価予想をより強固にしていく必要があると申し上げています。(中略)デフレの状況の中で、2%のインフレ目標の達成までは非常に距離がある状況ですので、3本の矢を使っていく必要があり、そのためには、政府とのコーディネーションが重要だということです。その中で、金融緩和としては、手段とコミットメントが大事だということを申し上げています。』

 

自身の主張のみで結局質問には答えませんでした。

 

(問)※8ページ

『今回の講演では、緩和が長期化することの副作用への懸念について触れていますが、去年9月の横浜での講演では、副作用については特段の問題は生じていないと述べられています。この間に、特に認識に変化があったということではないでしょうか。』

 

(答)

『認識の変化は全くありません。前回の講演では、副作用の話を挨拶要旨には入れなかったのですが、ご質問をたくさん頂きました。今回も一部にそうした懸念があることは承知しており、副作用についても言及し
つつ私の意見を申し上げた方が、皆様にとってより分かり易いのではないかという趣旨で含めたものです。何か考え方が変わったということではありません。』

 

ああそうですか。

 

(問)※8~9ページ

『先程、財政と金融の連携につきまして具体的に申し上げることはできないというお話でしたが、先程、政府とのコーディネーションが必要であるという話もされました。これは、いわゆる「共同声明」などの見直しを視野に入れるべきであるというようにお考えでしょうか。』

 

(答)

『これについては、色々な考え方があると思います。この場で私自身が、例えば「共同声明」を見直すべきだといった点について申し上げるのは適当ではないので、具体的な話については、お答えできないと思います。ただ、一般論としては、日本は、現状、なかなかインフレ目標が達成できない状況ですので、金融緩和だけを行って財政が緊縮する形では、物価安定目標を達成するのに非常に長い期間がかかることになると思います。そういった状況を打開して、できる限り早期に目標を達成するということであれば、財政と金融が両面から息をあわせていくことが必要であるという話は、一般論としてはあり得ると思います。そのために、具体的にどういうことができるかを検討しなければいけないというのが、私が申し上げたい趣旨です。』

 

結局恨み節だったと捉えて問題なさそうです。

 

次は飛ばします。

 

(問)※9~10ページ

『片岡委員ご自身は、金融機関から副作用への懸念が出ているのは認識されているが、将来的に顕現化するかどうかについて、それほど危機意識を持たれてはいないという理解でよいでしょうか。』

 

(答)

『低金利を続けていくことになれば、金融機関にとっても苦しい状態が続き、リスクが起こり得る蓋然性が強まることは理解していますし、その点について全く心配していないわけでは当然ありません。ただ、現状を変えるためには、私個人は早期にデフレから脱却し、それによって長期金利を含めて、経済状態が本来の状態に復することが大事です。低金利の状態をずっと続ける、いわゆる粘り強くというスタンスでは、自己実現的に緩和を長期化させ、デフレからの脱却も長期化させることになり、結果的に副作用が累積していくということにつながるため、そうした状況からは早く脱するべきなのではないかと申し上げています。ですから、全く心配がないから、どんどんやれと言っているわけではなく、むしろ、より早いタイミングでデフレから脱却して正常化を進めるために、今、大胆なことをもっとやるべきなのではないかということが、私が申し上げたい趣旨です。』

 

言いたいことはわからんでもないですが、結局5年もやってきて全然結果が出てないわけですから、どうしても説得力を見出すことは困難ですよね。根性論の域を出ないものと判断せざるを得ません。

 

以上片岡君の金懇会見を鑑賞しました。

・・・仕事の関係で長らく更新できておりませんでした、ここから取り戻してまいります。

 

今回は片岡君の金懇挨拶を取り上げます。

 

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2019/ko190227a.htm/

 

2.経済・物価情勢 のパートの(3)物価の現状と先行き の小見出しからまいります。

 

『物価の先行きについてですが、(中略)私自身は、2%に向けて物価上昇率が高まる蓋然性は現時点では低く、モメンタムも強まってはいないと判断しており、1月の展望レポートにおける一部の記述に賛成しませんでした。こう考える理由は、大きく4つあります。』

『1つ目は、現状、需給ギャップの拡大が物価の上昇に効きにくくなっている可能性があることです5。』

 

まあ確かにそれはあるでしょうね。

 

『2つ目は、需給ギャップの拡大基調が続かない可能性があることです。需給ギャップの拡大基調がさらに強まっていけば、企業はコスト上昇や労働市場の引き締まりをより反映するかたちで商品価格や賃金を引き上げ、家計が値上げを許容する動きもより進むことが見込まれます。しかし、私は、先行きの経済動向を踏まえると、需給ギャップの拡大基調が、この先、逆に弱まる可能性も相応にあると考えています6。』

 

特に消費増税は注意ですね。

 

『3つ目は、これら2点を踏まえると、適合的な期待形成を通じた予想インフレ率の上昇が、実際の物価上昇率を押し上げる、という経路にも当面期待できないことです。』

 

まあそうなりますわな。

 

『そして4つ目は、政策委員の物価見通しの下方修正に対して金融政策が現状維持とされる状況が続く中では、物価目標実現への信認が強まるとは考えにくいため、信認強化を背景とした予想インフレ率の上昇がけん引するかたちでの物価上昇を見通すことも困難であることです。』

 

この人の言ってることは今までは切り捨ててればよかったですが、これだけ日銀の金融政策が迷走してくると、この部分に関しては逆に妙な説得力を持ってる感がありますね。

 

3.金融政策運営
『(前略)長短金利操作とコミットメントの2つに対して反対しました。長短金利操作については、できるだけ早期に物価目標を達成するという政府との「共同声明」で謳われた日本銀行の責務に鑑みますと、私は、物価目標と実際の物価上昇率に相応の距離がある現状では、金融緩和を強化することで、需給ギャップの需要超過幅を一段と拡大させるよう働きかけることが適当であり7、併せて、予想インフレ率に働きかけるかたちでコミットメントを強化することも必要であると判断しました8。さらに、経済・物価情勢に対する不確実性が強まる中で、デフレからの完全脱却を目指すうえでは、これらに加えて、財政・金融政策のさらなる連携を図る工夫を講じることで、市場や経済主体の期待や予想に働きかけていくことも重要であると考えました9。』

 

さっきも申し上げましたように妙な説得力みたいなものがあるんですが、その一方で、この人の主張を容れたところで効果が出るとは考えにくく、袋小路感がハンパないですな。

 

『なお、私は、物価目標の達成まで粘り強く現在の金融緩和を続けるという政策運営方針に関しても異論をもっています。大胆な金融緩和のもとで、需給ギャップが拡大した状態が長期化することは、その後の景気循環や金融循環の振幅を大きくするリスクがあるほか10、金融緩和が長期化すれば、先行きの経済が様々な不確実性に直面する期間も長くなることから、物価目標達成の不確実性も増すことに留意する必要があります。また、長期化するほど、出口戦略の負荷が高まりますし、金融緩和の副作用も累積的に高まります。私は、副作用への配慮は、早期の物価目標達成により緩和の長期化を防ぐという軸に沿って検討すべきであると考えています。』

 

「言ってることはその通り」であるだけに頭が痛いです。でも片岡君は反対するだけで議案も出さないしその点では落第ですね。

 

なお、4.ドイツの産業政策とわが国への示唆 のパートについては取り上げた意図も見えてこないし、ここで触れる意味もさして感じないため割愛します。

 

以上、片岡君の金懇挨拶を鑑賞しました。

今回は2019年1月の消費者物価指数を見ていきます。

 

https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/zenkoku.pdf

 

①総合指数:前年同月比+0.2%(前月比-0.1ポイント)

②コア指数:前年同月比+0.8%(前月比+0.1ポイント)

③持家の帰属家賃を除く総合指数:前年同月比+0.2%(前月比-0.1ポイント)

④持家の帰属家賃および生鮮食品を除く総合指数:前年同月比+0.9%(前月比変わらず)

⑤生鮮食品およびエネルギーを除く総合指数:前年同月比+0.3%(前月比+0.1ポイント)

⑥コアコア指数:前年同月比+0.3%(前月比+0.2ポイント)

 

今月も生鮮食品の下落を映し、①③に関しては続落となりました。しかし、それ以外(④は除く)は、小幅ではありますが上昇しており、底堅さを実感する結果となりました。特にコアコアは0.2ポイント上昇しただけでもなかなか上がった感がありますが、果たして今後どうなるんでしょうか。注目です。

挨拶に続き、雨宮副総裁の金懇会見を取り上げます。

 

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2019/kk190201a.pdf

 

3つ目の質疑応答からまいります。

 

(問)※3~4ページ

『2点ほど伺います。まず、講演では、携帯通信料や教育無償化の物価への影響について、(中略)適切に情報発信していくというのは、どういったことを考えられているのか、具体的に何かあればその点を教えてください。
(2点目は割愛)』

 

(答)

『まず、物価の特殊要因に関する情報発信については、(中略)こうしたものは、基本的には一時的な──1 年経ってみれば前年比の影響は消える──要因です。大事なのは物価の基調判断であり、一時的な要因が物価の判断や金融政策の判断に影響を与えるということではありません。ただし、日本の物価予想の形成は、現実の物価に非常に影響されやすいため、一時的な要因で物価が下落すると、それが人々の物価予想に影響を与える可能性は十分あります。そうした点を中心によくみていくということです。』

 

いつもの感じで言えばどうせまた言い訳の材料にしそうですけど。

 

『具体的には、例えば今回の展望レポートでも、いくつかの要因については、物価に対する寄与を脚注でお示ししています。それぞれの個別要因について、物価にどの程度影響があるかをこうした形式でお示しすると同時に、それが物価の基調判断にどのような意味合いを持つかといったことも、展望レポートや講演、あるいはこうした記者会見など、色々な媒体を使いながら丁寧にご説明していくという趣旨です。』

 

雨宮さんが言うと妙な説得力があるんですが、まあおそらくのらりくらりスタイルになるんではないかと想像されます。

 

(問)※4ページ

『(前略)世界経済の先行き不透明感が高まっている中で、今後の追加緩和の時期や規模についても、副作用に留意しないといけない状況とお考えでしょうか。黒田総裁の就任当初の頃と比べて、追加緩和に関する考え方に何か副作用との絡みで変わりはあるのでしょうか。』

 

(答)

『私どもとしては、金融政策運営に当たっては、2%の「物価安定の目標」の実現に向けたモメンタムを維持するために、経済・物価・金融情勢を踏まえて、追加緩和も含めて、適切な政策調整を行うということをずっと申し上げています。経済・物価・金融情勢を判断するという中には、政策効果のプラス面とマイナス面をバランス良く判断するということが当然含まれていますので、今この段階でそうした基本的な政策運営スタンスに変化はありません。引き続き効果・副作用をバランス良く評価しながら、粘り強く強力な金融緩和を続け、情勢に応じて必要な政策の調整を行うという考え方も変わりありません。』

 

だそうです。まあそうでしょうなという答えですね。

 

(問)※4~5ページ

『昨年末以降、リスク回避的な動きもあり、金融市場では長期金利ですとか超長期金利が低下し、イールドカーブがかなりフラット化していると思います。金融情勢を踏まえた動きではあるかと思うのですが、この状況が長く続くことの効果ですとか、デメリット・メリットのバランスについてどのように考えるか、お考えをお聞かせください。』

 

(答)

『ご案内の通り、昨年7月の新たな枠組みの中で、長期金利の変動をより弾力化する措置を講じました。長期金利は、ゼロ%程度という目標を中心として、より弾力的な市場変動を許容していく方針のもとで、昨年の夏以降、いったん上昇し、その後また下がり、今少し戻るなど、変動が大きくなっています。市場機能という面で言えば、副作用にも配慮しながら、粘り強い金融緩和を続けるという方向で政策効果が表れてきている範囲内だと思っており、これまでの長期金利やイールドカーブの変動が、現段階における効果と副作用の私どもの判断を変えるということではないと思っています。引き続き、こうした弾力的な金利変動を許容しつつ、強力な金融緩和を継続していく方針です。』

 

想定の範囲内でありメリット・デメリットを論じるような話ではない、ということのようで。

 

(問)※5ページ

『重ねて物価についての質問ですが、展望レポートの物価の下方修正で、目標とする2%との乖離が更に広がったという点がありました。昨年7月に物価の伸び悩みの原因の説明をされましたけれども、それで今十分なのかという点です。先程の特殊要因の適切な情報発信だけではなくて、例えば本日の「主な意見」では、長短金利の水準あるいはマネタリーベースと物価上昇率等の関係について、更なる分析と検討が必要ではないか、という意見もあったと思います。物価2%について、もう一度、昨年7月より踏み込んで考えてみる、そういう機会は必要ではないでしょうか。』

 

(答)

『そもそも物価動向の評価ですとか、その背後にある要因等の分析、あるいは政策と物価の関係──今ご指摘の、例えば金利と金融の量と物価の関係等──については、私どもはずっと継続して研究をして、その研究成果をもって決定会合で議論するという取組みを続けてきています。状況に応じて、節目節目で大きな取りまとめの議論──例えば今ご指摘の昨年の検討もそうですし、2016年の「総括的な検証」もそうですけれども──をする場合もあります。継続的な議論と大きな取りまとめを組み合わせながら検討していくということですが、現段階では、まずは昨年のフレームワークと考え方、物価の上昇にどうしても時間がかかるという分析内容を踏まえながら、毎回の政策決定会合で議論していくことが基本になると考えています。』

 

本音は「お前ら何も知らないくせに」って感じでしょうかね。

 

(問)※5~6ページ

『本日の講演では、物価について、先行き押し下げ圧力が予想以上に長く作用する可能性があるとされるとともに、緩和長期化の副作用については、これまで以上に留意する必要があると指摘されました。合わせて考えますと、物価目標の実現が一段と遠のくリスクというのは大きくて、その際の政策対応の優先順位としては、追加緩和よりも副作用対策の方が重要と認識されておられるようにも読めるのですが、この点についてご所見をお願いします。』

 

(答)

『必ずしもそういう意図はありません。』

 

あると思います(笑)

 

『(中略)今のご質問に絡めて申し上げると、例えば副作用に対する配慮というのも、あくまで2%の「物価安定の目標」を達成するために最も適切なパスや手段は何かを考える中で位置付けるものです。副作用だけ単独で取り出して手当てするというよりも、需給ギャップがプラスのこの状態をできるだけ長く続けるためには、どのような政策が望ましいのか、その場合に副作用にも手当てをしながら強力な金融緩和をどうやって続けるべきか、という考え方で臨むということです。政策運営の基本は、2%の「物価安定の目標」の達成にあるとご理解頂きたいと思います。』

 

誠にその通りなんですが、日銀から公式に出てくるものからはそうは読めないんですよね。

 

(問)※6~7ページ

『講演の中で、政策効果のベネフィットとコストの両方をよく吟味しながら、強力な金融緩和を押し進めていきます、とありました。非常に素朴な疑問なのですが、ベネフィットとコストという言い方を日銀幹部の方が最近よくお使いになります。これは効果と副作用というのと何か違うのでしょうか。(中略)

もう1つは、(中略)最近、日銀OBやエコノミストの一部から、金融機関にマイナスの金利で日銀が資金を供給する、マイナス金利での資金供給というやり方が合理的ではないかという指摘というのか、提案もありますが、これについてどのようにお考えか、この2つをお願いします。』

 

(答)

『まず、効果と副作用対コストとベネフィットについては、少なくとも金融政策決定会合でそういう議論をしたことがないので、個々の委員がどう判断しているか私はわかりませんが、私は違いはないと思っています。』

 

ふーん。イコールってことなのね。

 

『2つ目は、具体的な金融政策の手段について、細かくコメントすることは控えさせて頂きますが、追加緩和については、2016年9月にイールドカーブ・コントロールを導入したときに申し上げた通り、いくつかの手段があります。それぞれの手段の単独か、あるいは組合せか、あるいはその応用系も含めて、色々な可能性は排除せずに検討していくということに尽きます。』

 

具体的言及は避けましたが否定はしませんでしたね。

 

次2点は飛ばします。

 

(問)※8~9ページ

『2点あります。1点目は、人々のデフレマインドの払拭には時間がかかるとおっしゃっていて、5年前にQQEを導入するときにも、デフレマインドは常に日銀の懸案事項だったと思うのですが、5年前にQQEを導入したときよりも、やっぱり色々やったけど本当に払拭が難しいということでしょうか。6年間政策をやってみて、こういう結論に至った経緯について雨宮副総裁ご自身の印象というか、日本固有の部分がどのくらいあるのか、他の国も低インフレで悩んでいる国も多いと思いますのでお答えください。
2点目は、この追加緩和の議論の中で、どういったことが起きたら追加緩和が必要になるのかということについて、雨宮副総裁ご自身の考えを是非お願いします。』

 

(答)

『まず1つ目から申し上げますと、もともとデフレマインドということを含めて、人々の物価観や期待インフレ率は、これまでの経済学では、なかなかクリアカットに分析されてはいません。人々の物価観がどのように形成され、どういう政策でどういう風に変わるのか、変わらないのか、中にはそもそも政策で変えることはできないという見方もあります。理論的にも実証的にも、人々の物価観をどう捉え、それがどう影響するかということは、大変難しく、いわば未開の分野なのです。』

 

これは岩田規久男への恨み節でしょうか??


『しかし、その一方、物価は需給ギャップや為替レート、原油価格だけで単純に決まるのではなく、人々の物価観が非常に重要だということは、世界的に共有されてきています。中央銀行や学者も、その研究を色々と深めています。実際、私どもも、この6年間の政策の経験、物価や期待インフレ率の実際の動きをみながら、新たな知見を蓄積し、新しい気付きも含めて、まだ研究を深めている段階と思っています。その意味では、6年前と比べてどうかと言えば、6年間やってみて、やはり物価や物価観、期待インフレ率というのは非常に複雑な現象であるということに、私自身は改めて思いを致しているという面はあります。』

 

それだけに、強引な政策を進めたことに対する反省の念のようなものを持っているのかもしれません。

(少なくとも雨宮さんは)

 

『どういうことが起これば追加緩和になるのかという条件については、先程申し上げた通り、私どもの基本的な政策スタンスは、金融政策の最終目標である2%の「物価安定の目標」との関連で議論していくということです。ただし、これは先程から特殊要因等々の議論でも出ていますが、物価というのは短期的には色々な要因に影響されますので、やはり物価の基調をどう判断するかが大事です。政策の用語で言い換えれば、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムがどうかを判断し、そのモメンタムを維持するために必要な政策の調整を行うということに尽きると思います。』

 

ということで実質スルーです。

 

以上雨宮副総裁の金懇会見を鑑賞しました。

今回は雨宮副総裁の金懇挨拶を取り上げます。

 

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2019/data/ko190131a1.pdf

 

最初にお断りしますが、特筆すべき部分もありませんので、いきなり4.日本銀行の金融政策運営 のパート(6~8ページ)を取り上げます。

 

『続いて、日本銀行の金融政策運営についてご説明します。これまで述べてきたとおり、景気の拡大に比べて物価は弱めの動きを続けており、予想物価上昇率の高まりにも想定以上の時間を要しています。長期にわたる低成長やデフレのもとで形成された人々の物価観が変わっていくには、それなりの時間が必要なのだと実感しています。しかも、これまで以上に、金融緩和に伴う副作用の蓄積にも留意しなければならない状況です。こうした金融経済情勢のもとで、「物価安定の目標」を実現していくには、現在の強力な金融緩和を粘り強く続け、物価上昇の原動力であるプラスの需給ギャップをできるだけ長く持続させることが大事であると考えています。』

 

つまり「物価が実際に上がる」ことよりも「物価が上がるための環境が整っている」ことに力点を置いているわけでして、物価が上がってこないことについては政策の持続性を担保するためには目をつぶらざるを得ないということだと思います。

 

『7月の政策決定から半年が経過し、副作用の軽減という所期の効果が実現しているとともに、金融市場の安定化にも一定の効果を発揮していることが確認できています。』

 

なかなかの自画自賛ぶり。

 

『フォワードガイダンスの導入以前、市場参加者の間では、「日本銀行が、近い将来、政策金利を引き上げるのではないか」との見方も少なくなく、これが市場の不安定化に繋がることもありました。7月以降、そうした見方は急速に減少しており、強力な金融緩和を継続するという日本銀行の方針は、一段と浸透してきています。』

 

浸透とは言わないと思いますが、少なくとも結果的には去年7月の微修正が悪い方には転んでないということでしょうね。

 

『ETFの買入れについては、昨年8月の買入れペースは、年率換算で約2兆円でしたが、市場が大きく変動した10月や12月は、年率10兆円程度のハイペースとなりました。こうしたメリハリのある柔軟な買入れは、この間の市場の不安定な動きを緩和する効果があったと考えています。』

 

たぶんない。

 

『なお、強力な金融緩和がもたらす影響という点では、金融機関の収益や金融仲介機能との関係がよく議論になります。日本銀行も、低金利環境や金融機関間の厳しい競争環境が続くもとで、金融機関収益の下押しが長期化すると、金融仲介が停滞方向に向かうリスクや金融システムが不安定化するリスクがあることは、十分認識しています。現時点では、金融機関が充実した資本基盤を備えていることなどから、こうしたリスクは大きくないと判断していますが、今後とも、考査やモニタリングなどを通じて、最新の状況把握に努めるとともに、必要に応じ金融機関に具体的な対応を促していく方針です。』

 

この辺の話も必ず乗っかってきますが、「まあ一応入れました」というだけに過ぎず、特に意味はないでしょう。

 

以上雨宮副総裁の金懇挨拶を鑑賞しました。