目的は誰に対して?
不況の折、だまってショーウィンドウに従来の商品を並べていても売れません。
その為、企業は
『価格の引き下げ』 『商品力の向上』 『販促の強化』
といったことに力を入れています
確かに
『安いから買う』 『良い物だから購入する』 『宣伝を見て購入する』
といったことは往々にしてあるのですが、これらは全て販売する側から発信されたもので、決して顧客側のニーズではないように思います。
物の売買においては
『売り手 → 顧客』
だけでなくて
『顧客 → 売り手』
といった2つのベクトルあります。
すなわち、扱う商品を顧客に宣伝したり、手ごろな価格にて販売する手法が
『売り手 → 顧客』
顧客が求めるニーズを調べて(マーケティング)それにあった商品の開発や販売をおこなうのが
『顧客 → 売り手』
ということです。
マーケティングをおこない商品を開発するというと
『ある程度の大手ならともかく、個人商店では無理なのでは?』
とお考えになられるかも知れませんが、そんなことはありません。
たとえば学生街の飲食店などで昔から良くある
『学生さんにはご飯の大盛りや定食に付く小鉢を一品サービス』
等がまさに顧客のニーズに答えることです。
ようは
『誰に対して販売するのか?』
といったことが大切だということです。
戦国時代に織田信長のエピソードでこんな話があります。
京都において攻め滅ぼした、敵方の三好家に仕える坪内石斉という料理人を信長は召抱えたことがあります。
もちろん、敵方に仕えていた訳ですから本来であれば即、首を跳ねられていてもおかしくなかったのですが、京ではこの坪内は名の知れた料理人であったことから信長は坪内に対して
『料理がうまければ料理人として召抱えてやろう』
と言って坪内に料理を作らせました。
腕のある料理人なら召抱えるといったところが信長らしい、能力主義による人事のあらわれです。
ですが、この時に坪内の作った料理は味が薄く、信長は
『少しも旨くない』
といって坪内を処刑しようとしました。
すると坪内は、もう一度だけ機会が欲しいと言い出します。
それに対して信長は訴えを認めます。
そして二度目に出された料理を口にした信長は
『大変うまい』
と、その味を認めて料理人として取り立てたのです。
しばらくして、坪内はことのあらましを親しい仲間に話しました。
『最初は京風の上品な薄味の料理を出し、次は味の濃い田舎料理を作ったが、しょせん信長公は田舎者だった』
これが坪内の本音だったようですが、このことが後に信長の耳に入りました。
てっきり坪内は信長に手打ちにされると思われましたが、信長は澄ました顔でこう言ったそうです。
『坪内の料理の腕は確かなものである。したがって濃い、薄いの味付けも自在であろう。然るに物の道理は解っておらぬ。わしに仕えるならば、わしの好みに味付けをすれば良い。それを京風だ何だと小賢しき振る舞いでは所詮が坪内も二流の料理人である』
まさに
『誰に対して料理を作るのか?』
が大切だということでしょう。