大多数の日本人は、台北をタイペイと呼んでいる。
13歳から台湾と縁があるわたくしでも、かつて便宜上タイペイと呼んでいたことがある。
それが、ある日本語世代の老紳士に出会ってから一変した。その方は「たいほく」と呼んでいた。
たいほくの音の響きが心地よく、わたくしの中にグサっと刺さった。
実は、その方だけではなかった。その後に出会った日本語世代の皆がたいほくと呼んでいたのだ。
尚、閩南(みんなん)語では台北をたいぱくと言い、日本語に近い。
もちろん、わたくしが台湾にいる時は、現地に合わせ北京語読みのㄊㄞˊㄅㄟˇ(タイベイ)、または閩南語読みのtai-pak(たいぱく)と呼んでいる。
考えてみれば我々日本人は、台東はたいとう、台中はたいちゅう、高雄はたかお、屏東はへいとう、花蓮はかれん、日月潭はにちげつたん、金門はきんもん、膨湖はぼうこ、馬祖はばそ•••等々、枚挙に暇がないが、台湾の地名のほとんどを日本語読みで呼んでいる。
ゆえに台北は、たいほくでよろしいのだ。
国営放送局NHKも伝統的にたいほくと呼称している。その点に関してはNHKを高く評価したい。
わたくしがたいほくと呼んでから久しいが、空港のラウンジ利用の際、行き先を聞かれ、たいほくと返答したら、若い女性スタッフは、目を狼狽させ、一瞬間を置いてから、タイペイと言い直されたことがあった。(仙台空港での出来事)
残念ながらこの若いスタッフは、たいほくという呼び方があることを知らなかったのだ。
致し方ない。これまでの既成概念にどっぷり浸かり、それを刷り込まれてきたのだから、客から突然聞き馴染みのない地名を告げられ、対応に若干の戸惑いが生じたのだろう。
しかしながら、たいほくという呼び方もあることをぜひ覚えてほしい。
本題から些か脱線するが、もし仮に、この中正紀念堂を北京語読みのジョンジュンジーネンタンと呼んでしまったら、現地に住んでいる、または北京語を理解している人以外は、日本人はピンと来ない。
現地の日本人向けの観光ガイドも、しっかりとちゅうせいきねんどうと呼んでいるはずだ。北京語読みでは甚だ無理がある。
これまでの既成概念や慣例などクソ喰らえだ。
やはり台北はたいほくと呼ぼう。
た•い•ほ•く!