台湾の義妹は26歳で出家し、仏門に入った。


以来30年余り厳しい戒律を守り、玉子と牛乳、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品は除いて、動物性食品は一切口にしていない。


義妹は、玉子、乳製品は摂っているので、完全な菜食主義者、いわゆるヴィーガンではないが。


そこでわたくしが疑問に思ったことがある。肉魚を食べないで栄養が事足りるのだろうか?


義妹の答えはこうだ。特に鉄分が不足するそうで、その不足分はサプリメントで補っているという。他の法師たちもほぼ同様だとのこと。


ヴィーガンを実行している人たちを否定しないが、上述の鉄分不足でもわかるように肉魚は人類にとって必要不可欠な食料と考えるわたくしは、彼らを到底真似ることはできない。


自身20代前半に鉄欠乏性貧血で入院したことがあり、鉄分を効率よく摂るには肉魚食が適していることを入院中に学んだ。


鉄分不足の症状は、めまい、息切れ、倦怠感、集中力が続かないなど、とにかく力が出ない。踏ん張りが効かないのだ。こんな辛いことはない。


自身、身をもって鉄分不足の怖さ辛さを十分過ぎるほど知っているので、ヴィーガン食は自分にとって健康食ではない。


今のところ、健康のためにヴィーガンを推奨している国はどこもない。


ヴィーガンを実行した上で、他の必須栄養素を補うとなると、かえって高くついてしまう。



義妹はこうも述べていた。法師たちはタンパク質の大部分を大豆に頼っており、大豆の摂りすぎによる痛風患いも多いという。


普通の食生活をしていれば大豆の摂りすぎになることはまずないが。



義妹の話を聞いて感じたのは、偏食せず「何でも満遍なく食べる」これに尽きる思う。


彼女の場合、元々菜食主義者ではなく、仏門に入る前は普通に肉魚を食べていた。


今、彼女が肉魚を食べないのは宗教上の理由だけだ。


ゆえに、これまで義妹から菜食主義者になるよう勧められたことは一度たりもない。


台湾で出会ったネパール人のラマ僧たちが堂々と肉を食しているのを目の当たりにして驚いたことがあるが、チベット仏教では肉食はご法度ではないらしい。


厳しい修行と高地の自然環境に耐えるには僧侶たちも肉食が必須なのだろう。




ちなみに義妹ら法師に、お茶やコーヒーなどの嗜好品については制限がない。


義妹が務める台北の寺院を訪ねた際には、香り高いまことにうまいレギュラーコーヒーが振る舞われた。


そこでは、寺院には些か不釣り合いなコーヒーメーカーが鎮座ましていた。


仏教と茶は深い縁があり、経典の長文を唱えているとき、睡魔が襲ってきたら茶を飲み、眠気を取り払ったという。


コーヒーもまた同様の効果があるので、法師たちに好まれているのだろう。


3年前、寺院へ訪れた際に飲んだコーヒー。台湾菓子まで用意してくれた。


ここでふと思う。ノンアルコールビールなら飲んでも構わないのではないか。不謹慎だろうか?!


ただ、わたくしには、この質問を義妹にぶつける勇気はない。苦笑されるのがわかりきっているので封印しておくのが賢明だ。


職業軍人だった亡き義父は、軍人としては珍しいが、酒が大の苦手で一滴も飲めない。タバコも吸わなかった。


義弟も一切飲酒しないし、台湾の家族で酒を飲む人は誰もいない。酒とは無縁の家族だ。


わたくしが妻の実家へ行った際には、周囲の目を気にしながら、ひそひそと自分一人で飲んでいる。


上述の理由により、これまで義妹の前で酒の話をしたことがない。おそらく、これからもないだろう。



右側が義妹。左側は日本留学経験がある法師。


正面からの撮影はNGなので、これが精一杯の写真。


尚、原住民に僧侶が少ないのは、彼らのほとんどがクリスチャンだからである。わたくしもこれまで丸刈り袈裟姿の原住民を見たことがない。




こうしてブログを書いていて思い出したが、日本の仏門と同じく、台湾の法師たちもニンニク、ニラ、タマネギ、ラッキョウ、これら匂いの強いネギ科の植物は煩悩をかき立てるという理由で禁食されている。


どれも身体によい野菜ばかりだ。これらを食べないとは実にもったいない。もったいない。


動物以外に植物にまで禁食があり、やたら制限が多過ぎて、精進料理店が少ない日本だったら彼らは外食に苦労するはずだ。自ら作って自弁を携行するしかない。


義妹が来仙したら、必死になって仙台中の店を探すが(笑)


なんとも面倒くさい話である。


義妹が出家していなかったら極厚牛タン定食と、居酒屋でホヤをご馳走させたかったが。


選り好みしないで何でも食べればいいべぇ!と言いたくなるが、義妹を前にしたら、そんなこと言えない。言えない。


一緒にいる間は共に精進料理を食べることになるだろう。