私の短いカウンセラー歴の中で、出会ったお客様達から私は沢山の奇跡を見せて貰いました。


本当の自分らしさを携えて自立していったお客様

もう抜け出せないと思っていたトンネルから光を掴んだお客様

当初の目標を遥かに超えて変容し、幸せを実感する事が出来るようになったお客様


目の前で奇跡を目の当たりにした直後から、随分後になって改めてその時の奇跡を噛み締めることもあります。


今日はそんな「奇跡」を起こしたお客様の1人から見せて頂いたこと、実際に何が起きたのか等についてブログを書こうと思います。



そのお客様と初めてお会いした時は、あまり表情も無く、頑なな信念をお待ちでした。


「自分が正しくて周りが間違っている」


どうしてもこの信念から抜け出せないと言うのです。


そのため周りとの衝突が絶えず、ご自身も疲弊していました。


カウンセリング初期の目標を決める際には

「衝突が起きなければ良い。周りの人間と雑談したいとも思わないし、親しくなりたいとも思わない。」

との事で、そのように日常生活に支障をきたさない最低限のラインで目標設定をしました。


しかしカウンセリングを進めていくうちにお客様は「他人を許容する」「感謝する」ことを意識し始め、実際に沢山行動を起こしていきました。


エレベーターの中で「今日もあったかいねぇ」と年配の女性に声をかけられた時、

「以前の自分なら話しかけるな、と思っていたが、こんな自分に話しかけてくれたことに感謝したいと思い、そうですねぇ花粉も沢山飛んでいますねぇ、と一言付け加えて返事をしてみました。」と報告してくれた時の、お客様の「新しいものに出会った」という心が弾んでいる感覚がとても新鮮で温かく、

私も嬉しくなったのをよく覚えています。



最終的には、カウンセリング前とは別人のように穏やかな性格を手に入れ、顔には笑顔や穏やかな表情、声のトーンや言葉遣いまでもが変わりました。



お客様は当初、

「前の自分は一度死んだ」

「変わってしまうことが怖い」

と、変容への抵抗も少し見られましたが


「初めて自分が人間になった気がする」

「人間の奥深さを初めて知った気がする」

「今、自分は人間をやり直しているんだ」

と語りました。


この言葉が、私には物凄く強烈に焼き付いています。



先日、勉強のためにある本を読んでいた時のことです。


著者は「ピーター•A•ラヴィーン博士」という方で、

医学生物物理学と心理学の博士号を保持する、トラウマ(PTSD)治療の第一人者です。


著書の一文を抜粋します。


本能と理性の間のバランスとリズムを回復することはまた、こころとからだの分裂を癒すための中心的な役割を果たす。

脳とからだの統合、左右の大脳半球の統合、原始的脳と進化した脳領域の統合が行われると、全体性が促され、人間らしい人間であることを実感出来るようになる。

言ってみればそのときまで私たちは、マーガレット•ミードが言うところの「類人猿とヒトとの間のミッシングリング(失われた環)」なのである。


この文章を読んだ時、真っ先にあのお客様のことが頭に浮かびました。



この著書はトラウマに関する本で、

「私たちも動物の端くれに過ぎない」とも書かれています。


体と心、体と脳が統合されていない状態、

分裂したり、防衛され鎧を着た状態だと「今ここに存在する」という感覚を持つ事が出来ず、他者と良好にコミュニケーションを取る事が出来なくなります。


私達はさまざまな事で傷つきますが、

その時に身を守るために「麻痺」した状態になり、そこから時が止まってしまい自分を攻撃し続け衰弱していくのがトラウマの特徴です。


恐怖に直面した時は「逃げるか闘うか」「フリーズするか」という選択に迫られ、

麻痺という反応は恐怖に対する動物的な正常な反応なのです。


少し話が逸れてしまいましたが、

私達が何らかの理由で「分裂」したままであると

真の人間らしさにはまだ到達していないという事です。


ちなみに、お客様はこれまで「闘う」一択でした。


今、闘う事が無くなったのは

そもそも相手を「敵」と認識しなくなった事

捕食者ではなく仲間という意識を持つ事が出来た事も大きいのです。



上記のお客様は

「今が一番幸せ」

「闘争心に満ちていた時が懐かしく、若者が羨ましくもあるが二度と前の自分には戻りたくない」

とお話してくれました。


この世に生を受け、ヒトとしての命を使い切る


という生き方を、私はカウンセリングのたびにお客様から学んでいます。


お客様を通して

人の奥深さ、神秘、可能性や希望を見せて頂き

心から感謝しています。



上で紹介した本からは紹介したい言葉が沢山あるのですが、今日はここまで。

読んで頂きありがとうございました。