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ステーションデパートで駆け込み買い求め列車に滑り込む。
検 証(後 篇)
◇報告
5時40分、
閑散とした早朝の二階事務室の計画主事へ改修作業の終了報告に行く。
《 すみません1組が時間ぎれで改修できませんでした 申し訳ありません 》
< どこが残ったのですか >
《 最後の○○線のカギ箱です 》
< そこは8時、7時で大丈夫です >
《 えっ やらしていただけますか ありがとうございます 》
“目から鱗の心境”
早速作業場へ戻りその旨を作業中の二人に伝え準備を促す。
6時、改修するタイミングを確認しに再度計画主事を訪ねる。
“いない”
広い事務室には作業終了通告を交わした当務当直がいた。
《 すみません 計画主事はおられませんか 》
[ パソコンが立ち上げているので多分仮眠しているのでしょう ]
[ 7時過ぎには戻るでしょう ]
“こまった 改修するタイミングが取れない 7時開始でも改修は厳しい”
とりあえず作業場へ戻り進捗状況を確認する。
6時50分、再度計画主事を訪ねる。
“いない いるのは当務当直 当務当直に話をする訳にはいかない”
“誠実に職務を遂行している人格と人格の取り交わしである”
“どうする 改修時間がない”
◇無謀
7時00分、
なんらよりどころの無い中、あえてあるとすれば計画主事のあの一言。
魔物に取り付かれたようにとっさに最後の改修を決断した。
作業中の一人を連れ出して取外しを決行する。
取外した○○線のカギ箱を抱え車両庫出口に向かって歩く。
7時05分、
{ ○○線に車両が入線します ご注意ください }
庫天井から放送が流れる。
◇無謀の具現
車両が進入してきた、車両は庫に頭だけ入れて止まった。
動かない。
今、カギ箱を外したため連動している○○線の表示器は滅灯したためだ。
入線しようとしても車両は入れない。
“しまった 当てた”
とにかく早くこの場を離れよう。
建屋と車両の狭い間をすり抜け庫外に出た。
携帯が鳴動する、当務当直からだ。
[ ○○線の表示器が滅灯している カギ箱何かしましたか ]
《 すみません カギ箱外しました 》
[ 作業終了を取り交わしたのにどうして外したのですか ]
《 すみません 計画主事のニュアンスから今やらないとやれないと判断し無断 で外しました 》
“不本意ながら計画主事の名前を出さざるを得ない状況にあった ”
[ 今すぐ戻して下さい 戻すのにどのくらいかかりますか ]
《 30分ほどかかります 》
[ 戻し終えたらこちらに来て下さい ]
《 すみません わかりました 》
◇機転
“戻しは足回りを含め10分で可能だ”
“改修は足回りを含め全力で取り組めば40分でできる”
“これだけの事象をすでに起こしている”
“腹は決まった 改修を断行する”
7時40分、当務当直からの携帯が鳴動する。
[ 後どのくらいかかりますか ]
《 10分ほどで終わります 》
7時50分、作業場で改修を終え○○線のカギ箱へたどり着く。
7時55分、取付け終了直前に当務当直から再度携帯が鳴動する。
[ まだ終わらないのですか ]
《 今終わります 終わりました 》
[ それではそちらで待機している扱者にカギを操作させて下さい ]
《 わかりりました 》
[ 正常動作確認 ]
“現場は終わった”
◇償い
“事情聴取が待っている 無断作業の罪は重い 責めは覚悟の上だ”
“今日中に始末をつけていただければいい”
◇調書
当務当直が作成した調書が提示され確認させられる。
計画主事が無言で立ち会う。
「現場の不具合を少しでも速やかに解決しようとした行為」の一文が記されてい た。
当務当直に慰められ励まされる。
そして別室で計画主事から「申し訳なかった、8時からの営業列車仕立てに当て なかったのがせめてもの救い」とお詫びをいただく。
九死に一生を得た必死の経験と言えよう。
◇◇エピローグ
“如何なる理由があれど、今回仕上げなければ後は無かった”
このことは、これまでの手違いによる配線変更、そしてこの冬の豪雪で物流が滞 り「錠・鍵」製作が遅れ改修日を延期してきた。
その度関係する方々の寛大な御許しに甘んじてきた。
いわゆる今回がタイムリミットであった。
これだけの事象を起こして無罪放免は決してあり得ない。
◇反省
< そこは8時、7時でやれる >この時に、
《 何時から何時まで時間はいただけるのでしょうか 》
この一言の有無が明暗を分ける事になった。
計画主事の地位は車両運用を極めた者が座るポストである。
○○線は7時の車両入線後は約1時間整備点検で移動しない。
その間合いを提供しようとした好意を損なってしまった。
いわゆる“詰めの甘さ”を暴露した。
また、計画主事に会えないその後の生還の道として、当務当直に、
《 計画主事が残りをやっていいとの事、ご確認いただけますか 》
この事を言うだけの“したたかさ”があれば最後の無謀は回避されただ ろう。
その度量は持ち合わせていない。
反省は全て結果の解析である。
その時々の情況は必ずしも人を冷静沈着にしておかない。
“直き正しき真心をもちて 負い持つ業に励ましめて”場数を一歩一歩 踏みしめながら資質を高め“家おも、身おも健やかに栄しめ”と祈る他 に道はない。
心霊を深く学び理解して進み行く時、その行動はより望ましい姿として 後からついて来る。
そのことは限られた人生の日々に潤いをもたらしてくれるのであろう。
完