
○ 下界より目的地を望む

○ 登頂成功の本屋より 雪は降り続ける

○ 登頂成功の本屋より 目的達成
寒中のいなか
◇茶の間
元気なおじいちゃんおばあちゃんを交えて四人そろっての団らんは、
日々の朝食時、いわゆる出勤前のひと時だけだと思う。
この季節の話題は決まって雪情報、七時前のテレビの気象予報、
いわゆる“だるまマーク”が気になるようだ。
特におばあちゃんは気が気でないらしく、
娘に「雪大丈夫?」としきりと投げかけるが、
娘は暇がないとか危ない等いろいろと理由を付けて、
なかなか(いなか)に行こうとしない。
一方おじいちゃんは、内心は気になっているのであろうが、
忙しい二人を見て「なるようにしかならない」と、
「十牛図」をまもなく完遂する域に達する生き様である。
都会にはない(いなか) のよさ“いやしの世界”を、
後、何年楽しむことができるのだろうか。
そして同時に後、何年これを守っていけるのだろうかとも思う。
なにせ運命共同体のわが家の合計年齢は314歳を超えた。
なんと家族の平均年齢は78歳となるではないか。
ますおさんとしては近未来に若返る環境を望むのである。
実は昨年暮れ、雪降ろしに行き退散した経緯がある。
秋に屋根のペンキを塗り替えたため滑って足が着けない。
雪止めがある屋根の中腹でしばし対応を練ったが、
その先の本屋には怖くて進めなかった。
三~四年前の雨風の強い日、
薪風呂の煙突の笠を取り換えに屋根へ上がるが固まってしまう、
進むことも退くこともできない恐怖を味わった末、
四~五m下に墜落している。
そしてこの冬、雪の事故で数十人が亡くなっている。
しかしいずれこのまま放ってはおけない。
おばあちゃんの切なる願いを何とかしてかなえたい。
二人で(いなか)に行く準備をする。
家の周りをバケット車で雪をかいてくれている隣家へのおみやげ、
屋根の雪が滑るように家を暖めるストーブ2台と灯油、
スコップ、長靴の雪対応そして一泊二日の食糧等をそろえて出発する。
◇(いなか)到着
(いなか)に着くと辺り一面が雪世界、どんよりと曇った空から
とめどもなく降り注ぐ雪にありし日の幼い頃の思い出がよみがえる。
現場をよく見、目的達成(本屋に上り雪止めエリアの雪を降ろす)
に軒下の雪を掘りながら思案をめぐらす。
雪止め足場と上るロープは本屋軒下の下屋の途中まである。
下屋の尾根に辿りつきそこから本屋に渡るのである。
当日は下屋の尾根に辿りつきまたがるため数mのハシゴを利用し、
下屋と本屋の間隙にひもで結わえ足場とするところまでできた。
風呂からあがり夕食のビールを飲みながら
二人で絵を書き話し合うがその先は見えてこない。
深々と降る雪を肴に地酒の熱燗をいただく。
幸せな気分である。
お休みなさい。
◇下準備
“本屋に上がる”夢まで見て目が覚めたのには恐れ入る。
さーて、どうしたら上れるだろうか。
ところが物置に紐でたたんだ古いマットが目に入る。
オツ、これを下屋の尾根にまたいで引けば滑らないぞ。
そして下屋から本屋に渡るのに2m程度の手造りハシゴを思い出す。
手ごろな棒きれを集めて立派なハシゴが出来上がる。
以上が朝飯前の仕事となった。
◇登頂
家内の結んだ材料を下屋の尾根にロープで引き上げる。
セットをする、完璧だ。
本屋に上る。
素晴らしい眺めだ。
圧雪された雪は1.5mはある。
雪は相変わらず降り続ける。
◇雪降ろし
本屋では雪止めの有無の境界が危険エリアである。
写真を撮る余裕もまたうれしい。
気をつけながら、楽しみながら5時間通しで雪を降ろす。
◇無事生還
無事下界に戻り、目的達成。万歳、万歳、万歳。
仙台に戻ればおばあちゃんの笑顔と熱燗が待っている。
万歳、万歳、万歳。