先週の解決報告は離婚相談42件、夫婦相談46件、人生相談36件、心理カウンセリング30件でした。 

 

 

■離婚前に子供を連れ去られた場合
調停で話し合ってもどうしようもないくらい相手方が強引でまともではないと判断される場合は、調停などやってられませんから、危険性を訴えて、調停からではなく、すぐに審判と仮処分を申し立ててください。

「子の監護権者の指定」と、「子の引渡し」の2つの審判と、「審判前の保全処分(子の引渡し仮処分)」です。

 まずは「子の引き渡しの審判(本案)」の申し立てにより、連れ去った子どもを引き渡すように要求しておいて、実質「審判前の仮処分(保全処分)」により、審判決定前(実質、審判決定時)に子どもをまず自分に返すようにしてもらいます。

 そして、場合によっては、同時に申し立てていた「監護者指定」だけが認められることもありますので、取りこぼしのないようにこの3つを申し立ててください(基本的に、この3つが同時に認められるということはなく、「保全処分」の決定だけが出ることも多いです)。

 審判の申し立てにより、家裁から1週間ほどで連絡があり、2週間後には審問が開始されます。児童心理学などの勉強をしてきた家裁調査官が主体となり、双方の言い分を聞いたり、家庭訪問して養育状況を確認していきます。もちろん、審判には家裁の審判官(裁判官)も入ります。家裁調査官(担当は1~2人)は的確に状況を判断していきます。

 

■子の引き渡しの調停・審判
「子の引き渡しの調停」というものもありますが、連れ去りが起きた時は調停から話し合っても時間のムダですので、審判を申し立ててください。
審判で、あなたに子の引渡し保全処分が認められた場合は、当日すぐに引き取りに行く段取りをしましょう。
 保全決定から2週間後までは相手方は高裁への抗告を行う権利がありますので即時抗告してくるか、そのまま抗告せずに無視することになるはずです。2週間後が確定日だからとただ待っていてはいけません。

 保全処分決定当日、相手方(もしくは代理人弁護士)に引き渡しの交渉連絡をし(履行勧告)、もし引き渡しを拒否をされた場合は間接強制、もしくは直接強制の申し立てが可能になります(ほとんどは直接強制です)。

総じて、男性側からの申し立てはかなり難しいです。

■離婚後の引き渡し・親権者変更の場合

 離婚後の連れ去りのケースでも、上記のように「引き渡しの審判」や「監護者の指定の審判」、「保全処分」を申し立てます。監護者であったが親権者は相手方であったという場合には「監護者指定の審判」ではなく、「親権者変更の審判」を合わせて申し立てます。

 連れ去りであれば、離婚後は未成年者略取で逮捕されているケースも少なくありませんが、警察署によっては「離婚後とはいえ実父だから、未成年者略取での逮捕はできない」という対応の警察も多いです。しかし、一方で逮捕しているケースも最近は増えています。
 
 ただ、連れ去りではなくても、離婚後に親権者側の子どもの虐待やかなり不適切な監護状況が判明すれば、上記審判以外にも大至急「親権者変更の審判」も合わせて申し立てなければなりません。

 子供の虐待などがある場合は審判から申し立てることも可能ですが、普通に親権者変更を求める場合は調停からです。ちなみに親権者変更の審判から申し立てをしても、家裁の判断で調停からやるように変更されることもあります(付調停[ふちょうてい]という)。

  離婚後に虐待が発覚した場合は、「親権者変更の審判」と「監護者の指定の審判」、「保全処分」、そして、加えて、保全処分の一環として「親権者の職務執行停止」、「職務代行者選任の審判前の保全処分」も申し立てるという少し複雑な方法もあります。

 連れ去られた場合でも話し合いができそうなケースは「子の引き渡しの調停」から申し立てる方法があるのですが、連れ去るような相手方とはほぼ話し合いができませんので、時間のムダですから、もし調停を申し立ててしまっても、すぐに「子の引き渡しの審判)」に切り替えてもらうようにお願いしましょう。主張が認められれば、審判に移行します。子供の虐待などがあるケースでは、調停ではなく、審判から申し立ててください。

 ただし、親権者変更が難しそうなケースでは、「監護者指定の審判のみ」を申し立てるという方法もあります。「子の引き渡し」と「監護者指定」に手馴れた弁護士さんに相談の上、方針を決定してください。

 離婚後に突然、元夫が子供を連れ去ったものは事件性が高いので、いきなり「人身保護請求」の申し立てから始めるということもできます。これはご自分の弁護士さんの考え方や経験によっても対応が異なってくるので、よく相談を上実行してください。

 面接交渉中などに子供を返してくれなくなった場合は、人身保護請求か、子の引き渡し審判と保全処分か、どちらがいいのかという質問も寄せられますが、これもケースバイケースという感じです。※判例によれば「子の現在の監護状態が実質的に不当か否か、夫婦のいずれに監護させることが子の幸福に適するか」が判断基準とされています


■子の引き渡し請求と離婚は絶対に分けて考えること
 もし、離婚調停中や円満調停中であれば、そのまま協議をすることよりも、上記の審判を先に申し立ててください。相手方が協議に応じてくれそうな状況では「子の引き渡しの調停」から始めることも基本ですが、連れ去られている以上、審判の申し立てが必要になるはずです。
 この「子の引き渡し審判」は、離婚調停と同時に進めることはお勧めできません。離婚調停は一旦ストップして、子供のことだけを争わなければなりませんので注意!弁護士さんが同時にやろうと言うケースもありますが、できるだけ子の引き渡しだけを争ってください。多くの家裁はその方が望ましいということを理解しています。

 子の引き渡しの審判と保全処分を実行するときに、離婚調停や離婚訴訟を同時にやるのは得策ではありません。離婚問題とは切り離して、まず子どもを取り戻すことだけに集中しましょう。そうなれば、審判決定も出やすくなる傾向にあります(これもケースバイケースですが)。

 一般調停(離婚)と、乙類調停(子の引き渡し)の性格の違いもありますので、子の引き渡し審判と保全だけを揃えた方がスムーズなことが圧倒的に多いです。

 子供を取り戻したら、夫婦間でしっかり離婚の協議をしましょう。

 離婚問題は家裁にとっても難しく、子どもの引き渡しと同時には認められにくいものです。離婚調停と同時にやる人は「愚か」としか言いようがありません。それほど重要です。

 あなたは離婚がしたいのですか?それとも子供を取り戻したいのですか?どちらが大事ですか?答えは明白だと思います。

■直接強制と間接強制とは
 保全処分確定後に一番良いのは、やはり直接強制で、保全処分決定後にすぐに書記官に連絡をし、地裁執行官に直接強制の申し立てを行い、数日内に執行をしていただくという方法が早いでしょう。

 これは事情等にもよるので、執行官に相談の上、実行してください。同じ執行官でも、経験がないと人身への執行に躊躇し、腰が引けてる方もいらっしゃいますので、その場合は弁護士から申し立てをしてください(弁護士を依頼している方はそのまますぐに先生に直接強制の申し立てを依頼してください)。

 しかし、経験のない家裁の書記官や家事相談室は「2週間後の確定後しかできない」とか、「高裁確定後しかできない」と間違った説明をするケースがあります(保全処分の決定後に、相手方の高裁への即時抗告を待つ必要はありません。)がそんなことはありません。

自分側の保全の執行自体は期限が2週間ですので、すぐに申し立てを行ってください。

 「保全処分」に相手方が応じない場合などに申し立てる措置の一つが直接強制というものであり、これが認められれば、家裁から執行官が相手方の家へ行き、子供を収容しますが、子の引き渡しの保全処分確定後には可能です。

 執行官は対象が子どもであるということに配慮して、強引に収容を行わない方もいますし、カギ屋を呼んで玄関を開けてしまうケースもあります(執行官によって判断が異なる)。「連れ去った側の配偶者」は玄関を開けなければよいとか、逃亡するということはムダですのでおやめ下さい。執行官にまでそのような抵抗を実行すれば、いずれ「未成年者略取」で逮捕され(留置場に入り、取り調べを受ける)、どちらにせよ子どもは必ず収容されます(裁判所の保全処分に抵抗するのだから、悪質性が強い人間と判断されるのは当然です)。

 

 「強制」の場合はまずは間接強制となることもあるのですが、保全処分決定後(2週間を待たず)にすぐ直接強制が可能ですので間接強制よりは直接強制が手っ取り早いです。

保全まで認められずに「審判決定」だけが認められた場合は、2週間に渡る履行勧告後に直接強制に移ることが可能です。

 間接強制は期限までの子供を引き渡さない場合は、「引渡しの日まで一定額の金員を支払え」という罰金の命令が出されるものです。この場合の金額は1日あたり3万円くらいの金額となるケースが多いです。

 しかし、間接強制までに至るような相手方はこの段階でも引き渡しを拒むことがほとんどですので、やはり直接強制(もしくは人身保護請求)の必要性が出てくることがほとんどです。実際は、間接強制のことは一切考えなくてもよいというくらい直接強制だけが必要になります。

  実務上、直接強制は幼児にしかできないという一説もありますが、小学生でも執行したケースも多数あります。

■審判や保全処分の決定後に相手方に抗告されたら

 相手方が審判の決定に応じず高裁に即時抗告されれば、あなたも高裁の裁判で争うことになりますが、よほどのことがない限り原審が覆されることはないでしょう(ほとんどが棄却されています)。裁判とは言っても多くのケースでは書面の提出が1~2回あるくらいですから、そこは弁護士さんにお任せしましょう。

 高裁で確定すれば、これもまた当然すぐに引き取りに行ってください。そこでも引渡しに応じない場合は、「直接強制」か「人身保護請求」を行えば、手元に子供は戻ってきます。

 高裁判決後に相手方が最高裁への特別抗告(許可抗告)をするのを待つ必要はありません。審判が確定していることから、その時点ですぐに引き渡し日の交渉、ダメならすぐに「直接強制」、そして「人身保護請求」をかけて取り戻すことです。

 自分側の保全執行自体は保全命令が出されてから2週間以内に行わなければなりません。弁護士さんと執行官としっかり打ち合わせの上、的確な執行を実行してください。

 保全処分決定後には、基本的にはすぐに執行官に対して、直接強制の申し立てを行ってみてください。

 執行官費用は自分持ちですが、子供のためなら頑張るしかありません。なお、執行官費用は1人2万円を、2~4人分必要になりますが、当事務所では6人入ったケースまで見ています。相手方の状況と執行官の考え方で必要人数や金額は変わります。

  もちろん、虐待やネグレクト(育児放棄)など緊急性があるような場合にも当然、調停ではなく、いきなり審判決定を求めて、同じく「審判前の保全処分(子の引渡し仮処分)」、そして同時に審判「子の監護権者の指定仮処分事件」、「子の引渡しの審判」を申し立てるという方法を取ってください。

 
 ■人身保護請求とは
相手方が粗暴で子供の養育環境にも非常に問題がある虐待があると判断されるケースでは、審判などではなく、いきなり最終手段ともいえる人身保護法による「人身保護請求」を地裁に申し立てる方法があります(認められないケースもあるので通常の連れ去りでは審判の申し立てからですが、子供が虐待下にあるなどの理由があれば認められます)。

  もちろん、子どもを連れ去られたあとの「子の引き渡しの保全処分」が認められたあとで、直接強制などにも応じないような夫に対しては、虐待の有無に限らず人身保護請求を実行する必要性があります。

  この申し立ては弁護士さんを依頼しなければなりません(人身保護法…弁護士強制主義。しかし、弁護士費用を捻出できない事情がある場合や期日までに引き受け弁護士を見つけることができなかった場合は裁判所の許可により、弁護士がいない状態でも実行できます。国選代理人は法テラスの法律扶助を受けることも可能です)。

 すぐに弁護士さんをお願いして、不当に子供を連れ去り、面会もさせず、軟禁状態になる子供を救うとして、人身保護請求をかけましょう。これは疎明書の添付により行われます。申し立て先は家裁ではなく、管轄の地裁か高裁となります。

 

 申し立てから1週間以内に審問期日が決定され、審問終了から5日以内に判断が下されるのが基本的な流れです。裁判所より、国選代理人が雇われ(非拘束者の弁護人という性格)、その弁護人が非拘束者(子ども)と双方の状況を確認し、裁判所に報告書を提出したり、場合によっては連れ去った夫を説得することもあります(国選費用は申立人持ちになります。その予納金として、20万円~30万円くらいかかります。この他に審判と同様に予納切手も必要ですし、収入印紙も子1人につき2000円が必要です)。

 この判決により、子供を拘束している親に対して、子供を指定の期日に家裁・地裁に連れて来るように命令することができます。その命令に従わない場合は、拘束者を拘引して、命令に従うまで勾留することもできます。

●手続きの流れ●

1.人身保護請求の申し立て(人身保護請求書、疎明書など))

2.準備調査期日(出頭~審尋の場合も)

3.審問期日指定(申し立てから1週間以内)

4.審問日の審理(答弁書の陳述~口頭反論)

5.判決の言い渡し(最終審問から5日以内)~人身保護命令書の送達

 ※判決の言い渡し日に子どもを出頭させないケースでは、勧告がなされますが、それでも無視するケースでは2年以下の懲役または5万円以下の罰金となります。しかし、それにも応じない場合は勾留を求めてください。

 もしくは再度の直接強制を実行し、ここで「未成年者略取」と「人身保護法違反(保護法違反で立件するのは珍しいことですが)」が成立する形になるので警察官を伴って子どもの受け渡しを実行してください。

  ただ、審判をせずにいきなりの人身保護請求というのは判例上簡単にできるわけではなく、子供がかなりの虐待にあっているとか、育児放棄(ネグレクト)の状態にあるとか、危険な状況の時で、しかも他の解決方法がない場合・それは、拘束がその権限なしにされ、または法令の定める方式もしくは手続に著しく違反していることが顕著である場合(高裁判決後など)…にしか認められないので、基本的には「子の引き渡し審判と保全処分」が無視された場合に申し立てることが多いです。

  もちろん、連れ去りがあった直後にいきなり人身保護請求を申し立てるケースも結構ありますが、かなり粗暴なケースではないと逆に認められないこともあるので、多くの場合は審判と保全からの方が良いのではないかと思います。

◆人身保護請求の判断基準◆
1. 子の身体の自由が拘束されている状況であること。

2. 拘束が法律上正当な手続きによらないで行われていること。

3. 上記拘束の違法性が顕著であること(手続きに反していること)。

4. 他に救済の目的を達するのに適当な方法があるときに、その方法によって相当の期間内に救済の目的が達せられないことが明白である状況であること。

となっています。

一つ問題といえば、のんびり調停をやってから、この「人身保護請求」を申し立てても、緊急性がないという理由で認められません(最高裁判例による)。今までのんびり月1回調停をやってから、緊急性と主張しても根拠が弱くなってしまいますので、弁護士の先生と事前にしっかり作戦を練る必要があります。

 審判と保全からであれば、そののち人身保護請求ができます。調停からやってしまうと保全や人身保護は不可能に等しいです。ですから、弊社では調停からやることをお勧めしていませんが、状況によっては子の引き渡しの調停からやることもありますし、審判を申し立てても付調停となる場合もありますので、審判が絶対ということではありません。しかし、ほとんどのケースで審判が必要になりますので、調停という考えは捨てた方が良いくらいです。

 弁護士の先生でも、知識や経験がないと「監護者指定の審判」と「引渡し仮処分」を大至急申し立てる方法などを知らずに、のんびりと調停をやるように説明する方もいらっしゃいます。このあたりのことを事前にしっかり聞かないと失敗します。

くれぐれも知識のない弁護士のアドバイスを信じてしまい、離婚調停を先に申し立てるようなことがないように気をつけてください。

 まれに直接強制と人身保護請求の2つを重ねて無視して、子供をかたくなに引き渡さない夫もいますが、そうなれば再度の直接強制を行い、その場合は警察署に要請し、「未成年者略取」ということで警官を伴い執行することもできます。引き渡しを拒否すれば、逮捕ですし、結局は引き渡しに応じるしか方法はありません。的確な執行を行っていけば違法な連れ去りを行った夫が最後まで逃げ切ることはほぼ不可能です。
 判決言い渡し日に出頭しないケースも多いですが、その場合も裁判所による勧告がありますし、請求認容判決に従わない場合は2年以下の懲役または5万円以下の罰金という罰則が科されます。その上で、再度の直接強制が可能ですので、そこで「未成年者略取」による逮捕も控えています。実の親だからといって逮捕されないということはありません。