かつて「佃島ふたり書房」で直木賞を取った出久根達郎の新刊本を続けて読了しました。

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老いを迎えた各主人公が己の来た道を振り返るときの、その一瞬の輝きを描く手際が冴えています。


正直、短すぎて物足りないものもあります。記述不足でかんじんのラストシーンが???と思えるものも。

しかし帯にあるとおり、「どこか懐かしく、そしてほろ苦い」作品世界は健在。まさにいぶし銀の出久根ワールドを味わえます

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「将軍家の秘宝」は、わけありの坊主や手代、山女たちが「御留山」という藩主の秘密が隠された山中でてんやわんやの騒動を起こす時代活劇です。

出久根達郎の特長は、現代物でも時代物でも、作品世界があくまで明るく向日的なことです。この小説にも深刻な殺人や人斬りのシーンはありません。それでいて人生の切なさ、ほろ苦さを鮮やかに描き出す腕は職人芸と言えます。

ちょっと「看板にいつわりあり」な点があります。副題に「献上道中」とありますが、ほぼ全編、山の中を舞台としていますので、「献上山中」が正しいかと思いますね(笑)。

ちなみに、この作者の作品の中では、江戸時代に将軍に献上される書物を扱った「御書物同心日記」3部作が大好きです。この小説も、チャンバラも隠密などは登場しませんが、江戸の古本にまつわるエピソードがとてもユニークで、文化的な江戸情緒あふれる好著です。