駅と反対方向に歩き大きな街を目指しました

 

所持金が少ないので歩くほか無いのですが知らない道を進んでいると

いつの間にか昨日まで使っていた沿線の駅に出てしまいます

田舎なので無人駅ですホームに入り到着した電車に乗りました

 

反対に歩いたつもりでしたが三つ先の駅でした各駅だけの停車駅でしたので

駅名は記憶に薄く行き先を見るまで分かりませんでした

目指す街までは暫くかかります列車の揺れにウトウトと眠りに落ちました

 

気が付くと目指す街の駅は過ぎていて停車した駅でとりあえず降りました

反対ホームに向かい後戻りをしました

街の駅に着くと先ほどの乗り換えた駅名を告げ乗車賃を払います

遠くから乗っていましたが躊躇する事無く嘘が口から出ていました

 

見慣れた街を暫く歩き回りました

新聞を購入する為にコンビニに行くと無料の雑誌が目に入ります

求人情報誌が数種類並べて有りどれもフリー無料と記載が有りました

 

缶コヒーだけを買いその求人誌を手に取ります確か二種類有ったと思います

公園を探しベンチで求人誌を見ますがページ数が少なく期待とは裏腹に

正規雇用の広告が大半を占めていました

 

その中でスポーツ新聞の求人欄並みに小さな物に 要相談と記載された広告が

有りました

業種も多種的な記載が有り電話してみる事にしました

 

年齢と名前を聞かれますが名前は偽名を名乗りました

身分を証明する物が無い事を伝えましたが問題無いと返事が返ってきます

やっぱり日雇い的な所かなと思いましたが自分には何処でもどんな仕事でも

何も問題は有りません

 

他に色々考えるのも面倒だったのでこの会社に面接に行く事にしました

今居る場所からは少し離れていましたが所持金で向かえそうです

指定の駅でもう一度連絡する事を伝えられ電話を切ります

 

駅に着いて連絡すると15分ほどで教えられた色の車が近づいて来ました

乗用車では無くワゴンタイプの車から降りて来た男性に名前を呼ばれました

ハイと答えお互いに軽く会釈をしながら挨拶を交わします

 

車に乗り込み事務所へと向かう車内で説明が始まりました

仕事は工場での勤務に成るとの事で車での送迎が毎日有る事日払いの事給料は月一回

勤務先の工場は大手自動車工場でした

 

普通の会社的内容に身分証明が無いと無理ではと思います

それに迎えに来た男性はネクタイを締めスーツを着ていたのです

スーツを着た方と面接したのは夜の仕事で会った方だけで失敗かなと思います

 

男性の話は続き危惧した身分証について説明が有りました

名前と生年月日に血液型 住所は寮の住所を使うと言う事に成る事と伝えられ

ビックリしたのは

保険証と銀行口座も用意するとの事でした

 

時代的に法律の抜け道を使い稼いでいた業界だったのでしょう

何処の馬の骨とも解らない人間を一般人に変えて大手に勤務させるのですから

自分には無くす物が何も無いので願ったり叶ったりの内容でした

 

只一点だけ文句を付けるなら給料から税金が引かれると言う事です

存在しない人間が税金を納める事に成ります今思えば不思議な事実でした

事務所で契約書等を作成しましたが此れは見慣れた形式の物で至って普通の物で

怪しい物は有りませんでした

 

給料は時給計算に早出や残業休日出勤に有給休暇制度と普通に有りました

此処で思ったのが以前から有った季節労働期間労働工と呼ばれていた工場勤務の仕事

通常は職業安定所から斡旋されて普通の方が勤務するルートを何らかの形で変化させ

法に触れない様紹介しているのでしょう

 

良くも悪くも自分には好都合で又偽名で暫く生活する事が出来るめどが尽きます

寮も此れまでで一番普通のアパートに家電製品が備わっていました

なにより嬉しかったのが新品の布団一式です

面接の方が帰り新居で真新しい布団に包まり眠りにつきました