悩みましたが背に腹は代えられませんと言った所です

 

役所の担当者を呼んで貰う事にしました

後日住民票の移動を約束して保護費を貰えるように手続きをお願いしますが

前述の通り偽名で入院している為この時点では偽名のまま手続きをしました

 

幸いな事に当時はマニュアルなのか住民票移動は本人だけが行う事に成ってました

役所は課が違えば殆ど別の課の仕事に関わる事は本人に行わせます

保護費は生活課で住民票は市民課に成り来院の担当者は管轄が違いました

 

お金の問題はとりあえず解決しました病院生活で1万5千円有れば十分な額です

そして退院の実際は転院ですが日にちが決まります

7か月余りの隔離入院がやっと終わる日を迎えました

 

前日の昼間に女性に電話をかけ金銭の事と転院の事を話します

隔離病棟からの退院と病気の快復を喜んでくれました

転移先の病院は少し距離が有るのですが必ず見舞いに来ると話してくれました

 

人生初の隔離と言う言葉に現実味を持てなかった入院が決まった日は愕然とします

治療を行えば完治するが何もしなければ必ず死に向かうと伝えられもしました

期待はしてなかったけれど働いていた会社の対応のそっけなさも痛感します

 

ドラマ等で危険な状態を共にする男女が恋に落ちますが似ていたのかも知れません

そうでは無いと自分は今でも思っています

隔離と病気で不安な気持ちで沈みそうな心を癒してくれたのは彼女でしたから

 

退院と言えるのか微妙な所ですが次の病院に移る日が来ました

身寄りの無い自分の移動には役所の方が付き添ってくれます

数名の仲良くしてくれた方と看護師さん先生に挨拶を済ませます

 

久しぶりに病院の敷地から外に出ます少し歩くと軽い目まいを感じますが直ぐに

収まりました今はタバコが吸いたくてたまりません

役所の方が一緒なのでコーヒーを買うと伝えタバコも買いますが吸いませんでした

 

最寄りの駅から電車を乗り継ぎ二時間程かかりました

駅を降り立つと周りに高いビルは無く駅前も余り人は居ませんでした

病院は駅から更にバスに乗り30分程揺られやっと着きます

途中の景色はのどかな田舎と言った感じがしました

 

病院と言うよりは白い平屋の大きな旅館見たいな感じがします

自販機は有りましたが近所に店舗がまったく見当たりませんでした

静かで良い所では有りますが時間の流れが遅く感じる事に成りそうだと思います

 

一通りの手続きの後役所の方が帰ります保護費は郵便で来るとの事でした

その後お決まりの身体検査等が終わり部屋に案内されます

今回は野郎ばかりのむさ苦しい6人部屋でした

 

部屋に入って感じたのは同じ匂いがする野郎達です

病院ですので綺麗ですが部屋に漂う感じは飯場の寮そのものでした

自分が此処に来た訳を考えれば難しくも無く理解出来ます

 

特に自己紹介するで無く会釈だけで相部屋の方に挨拶を済ませます

関りを持てば悪い事が起きても良い事は絶対起きません

同じ考えなのでしょう誰も声はかけて来ませんでした

 

久しぶりの外歩きで嬉しく感じていなかったのか此処で疲れが押し寄せて来ました

ベッドに横に成り眠る事も考えますが夜寝付けないと困るので院内を散策します

病院の入り口近くに公衆電話が設置して有ったのを確認していました

 

女性には移動日は電話を掛けないと伝えていましたので我慢する事にします

後は談話室や風呂場等確認してると看護師さんに屋上にも行けると教えて貰いました

此処は三階建てでしたが周りに木々が茂っていて余り遠くは見ません

 

用意していたタバコと缶コーヒーを手に取りタバコに火を点けます

病院ですから禁煙ですが屋上だったので見つからないと考えてました

季節は夏の終わりが近づいた頃だったでしょうか

強い日差しと煩いセミの声を聴きながら女性の事を想っていました