お昼ご飯を食べ2時前後に電話の所に向かいました

 

周囲の視線が気に成り心臓の鼓動が大きく聞こえました

学生でも無いのにドキドキ感と嬉しさを感じます

壁を向いて女性に初めて電話をかけました

 

数回のコール音で胸の高鳴りが更に上がりました

はいもしもし と言って答える女性の声が何故か懐かしい気持ちにします

昨日会ったばかりなのに受話器から聞こえる声は想いを募らせました

 

何を話すのか考えも無く只他愛も無い会話で時間が過ぎて行きます

病院の公衆電話は1台だけだったので余り長くは話せません

それでも10分か15分ほど話して居たと思います

 

それからは歯止めが取れほとんど毎日電話をしていました

女性が渡してくれていたテレカは十分過ぎるほどの物で有ったからです

次の検査で病院に来る日は電話で教えてくれていました

 

一か月後に顏を見せてくれた時に又テレカを渡してくれました

嬉しい反面金銭に関わる事なので後ろめたい気持ちも有りました

少し回数を減らして電話すると言った自分に気にしないでと答えてくれます

 

何か金策は出来ないかと考えますが籠の鳥では何も出来ません

結局回数は減らせませんでしたが時間を短くする事に落ち着きました

二か月目三か月目と来る度におみやげとテレカを渡してくれました

 

女性が退院した後は特に親しくした方は居ません

誰も目に入らなかったのが正直な気持ちです

病状は特に変わった事も無く体重も少しづつ増えていました

 

何時か自分も退院する日が来ますその時はどうするのか

電話の会話の中で暗黙のルールの様に女性の身辺や想いには触れていません

もちろん自分の気持ちもハッキリと言葉に変えて伝えていませんでした

 

言ってしまえば困らせる悩ませる終わりが来ると自分に言い聞かせ

万が一女性が自分の気持ちに答えてくれたとしても

今の自分は女性を幸せに出来る事など微塵も無い事は判っていましたから

 

三か月目の検査で見舞いに来てくれた後の日から電話での会話に詰まる様に成ります

自分の退院が近いのが女性にも分かっていたからです

ですが二人ともそのことについて話す事は有りませんでした

 

どうしたいのかと自問自答する日々に看護師さんから報告が入りました

もう一か月ほどの期間で退院できると言う話でした検査結果が良かったとの事です

長かった入院生活に終わりが見えて来ました

 

が ここで思いもよらぬ事を看護師さんに告げられます

自分の様な住所不定者は退院後の半年を療養病院で生活を強いられるとの事でした

もちろんお金はかかりませんが収入も有りません

 

すでに手持ちのお金は有りませんでした

次の病院は隔離では有りませんので散歩や外出も出来るとの話です

どちらにしても此れから先無一文では苦しい思いをするでしょう

 

女性には今の病院から退院する日に話す事にしました

後二週間程でこの隔離棟病院から退院出来る日が決まると思えます

お金の事と女性の事が頭の中でグルグル回っていました