そして女性の退院が決まりました

 

喜ばしいと思う反面まだ居て欲しいと思う気持ちが有りました

自分より先に入院されて居たので当然早く退院する事は分かってはいましたが

親しいだけの女性では無かったので寂しいと感じてしまいます

 

退院が決まった事は女性が伝えに来てくれました

きっと寂しいそううな顏をしていた自分がいたのでしょう 女性が検査に来た日は

必ず見舞いに来ると言ってくれました

 

退院の日 旦那さんと家族の方が来る前に女性が部屋に来ました

見送る時だけ顏を見るつもりだったので部屋に籠っていたからです

女性は数枚のテレホンカードと番号を書いた紙を渡してくれました

 

良いのかと 尋ねる自分に うん と照れ笑いする女性に更に想いが募ります

迎えが来るまでの残りの時間を二人で他愛のない話をしました

時間だね と言って女性は部屋に戻ります繋いでいた手をゆっくりと離します

 

ベッドから降り広間に向かうと何時も会話する方々が集まっていました

皆と一緒にエレベーターのドア前で待ちます

程なくして女性と家族の方が来ました

 

看護師さんや皆が女性と挨拶を交わす姿を列の後ろから遠めに見ます

エレベーターに乗る時に女性と眼が合いました

ドアが閉まってしまう瞬間まで見つめ合っていたと思います

 

部屋に戻りベッドで渡されたテレカと番号を書かれた紙を眺めました

見舞者も無く所持金も無い自分に気を使ってくれたのでしょう

連絡先を教えてくれた女性の気持ちが嬉しくも複雑な気持ちを持たせました

 

退院しても半年は検査に来なければいけない事成っていました

一回目だけは二週間後と成っていましたので差ほど長い期間会えない訳で有りません

翌日には電話を掛けたいと思ったのですが我慢しました

 

女性が伝えてくれた事は

昼過ぎから夕方前まで家に女性だけなのでその時間は話が出来ると伝えられました

電話の事は退院の話からの会話でどちらとなく話していました

 

電話をするのは良いのですがエレベーター前に電話が有りましたので

看護師さんに見られる 他の方にも見られる と成ってしまいます

入院してから最初だけは会社と同僚に連絡していますが此処数か月は無しでした

 

女性が退院した後でそんな自分が電話に張り付けば誰が見ても相手が女性と

察しがついてしまいます

女性が検査後に此のフロアーに来た時に変な噂が持ち上がらないか考えました

 

結局二週間は電話をかけられずに過ぎてしまいました

検査日で有った当日午後過ぎに女性が部屋に来てくれました

一番最初に自分の部屋に来たんだよと またあの照れ笑いで言いました

 

お見舞品を顏見知りの方に持って行き戻って来ます

自分のお見舞いにだけ来た様な感じでベッド脇の椅子に座ってました

久しぶりに見る女性は少し顔色が良く成った気がします

 

ジッと見ていた自分に 化粧をしているのは初めて見せるね と笑みを浮かべます

病院で有る事や自分の素性も全て忘れて幸せな時間を感じてました

今すぐこの手に抱きしめたい いつの間にか握っていた手にちからが入りました

 

ドラマの様には成りませんが 痛いよ と手を握り返してきます

少し恥ずかしく成って ごめんね と言って手を握り直しました

電話をかけなかった事を聞かれるかなと思いましたが話は出ません

 

自分から切り出し電話の事を話しました

女性は気の回しすぎだと笑いながら言ってバッグから新しいテレカを差し出します

本当に電話すからね と言ってテレカを受け取りました

 

帰る時間が近づき広間に一緒に行き他の方と少し話をしました

エレベーターに送り皆で見送ります

幸せな気持ちと寂しい気持ち今は二つの気持ちでいっぱいでした