各駅停車に揺られウトウトしながら暫く過ごしました

 

二時間程経って駅案内に目を向けると聞きなれた駅名が見えました

大きな街なので降りる事にします

 

改札で入場券の自分は乗り込んだ駅名を聞かれますが

反射的に数個前の頭に浮かんだ駅名を伝えてしまいます

嘘を言うつもりは無かったのですが乗車賃を一瞬だけ気にしたからでしょう

 

不足分を払い改札口を出ます罪悪感を少しは感じたと思います

実際に乗った駅からの金額を見るとかなり高額に成っていた事を目にします

なんとか払えてはいたでしょうが所持金はほぼ無くなっていたと思います

 

人混みの中を当ても無く歩き周りましたが

結局はマクドナルドでスポーツ紙に目を通して仕事を探す事に成ります

 

寮有り日払い有り履歴書不要すぐ働けます 見慣れた言葉の羅列と

電話番号 会社名 の三行広告の欄を眺めます

昨日まで勤めていた会社の広告も載っていました常時募集しているのでしょう

 

詳しい住所はほとんど書いては有りませんので電話で聞くしか有りません

数件分の広告を切り取り電話ボックスから連絡します

 

今居る場所から数駅と割と近い所で妥協します

向かわないと何も分かりません まだ日も高かったので何件か向かい気でした

着いた駅は無人駅で案内された通りの道順を歩きました

 

迷いう事無く教えられた会社名の看板が見えました

普通の二階建ての家と横に看板付きの事務所の様な建物が有りました

 

サッシ戸のドアをノックし声を掛けます

中に迎い入れられると年配の女性と男性が面接の対応をされました

条件等はいつもと同じ様な形態でした寮は先程見えた二階建ての家です

 

寮に案内され部屋を見ましたが気乗りがしません

4畳半程の部屋に二段ベッドが二個両脇に有りました

昨日までが個室でしたのでタコ部屋風の同居は我慢が出来ません

 

面接に来た輩は大体文句言わずに受け入れて働くと思われています

寝る場所も履歴書も無い連中ですから当然そう判断するでしょう

色々な寮を経験した自分でさえ此処は汚い部類でした

 

さっさと部屋を出て階下の事務所に戻りました

事務所で おじゃましました と伝え来た道を駅へと向かいます

何か声が聞こえましたが気にせず歩いて行きました

 

大きな街の駅に戻ってマンガ喫茶を探しました

当時夕方から次の日の朝までで千円程で泊まれていました

食べ物はカップ麺を買い持ち込んで本日はボーッとする事にします

 

ネット喫茶はまだ有りませんでした本当にマンガがいっぱい有るだけです

飲み物が無料なのと狭いですが個室が魅力でした

 

此処に寝泊まりし肉体労働も考えましたが風呂が無いので断念します

他に個室ビデオ鑑賞室と言う形態も有りました

此方は簡易シャワーが付いて居ましたが料金が高く成り生活出来ません

 

派遣業と今日呼ばれる業種はこの頃まだ存在してませんでした

期間工季節工と言われる大手自動車工場への案内は有りましたが

職業安定所からの斡旋紹介だけでしたし身分を証明出来なければ採用されません

 

マンガ喫茶の館内に流れる音楽と隣近所のいびきや寝言の様な音を聞き

眠たい様な眠れない様な気持ちで狭い部屋に居心地を探して目を閉じました