2冊の拙著にうれしい書評を稲村公望さんからいただきました。郵政省勤務時代に、国際関係学では世界最高峰のタフツ大学フレッチャー・スクールに留学された米国通です。

日本に入ってくる米国情報がほぼワシントンDCやニューヨーク、ロスアンジェルスに偏っている日本メディア空間の偏向はこの本の主要なテーマの一つですが、それを指摘していただいています。

感謝申し上げます。

 

 

稲村公望

1時間  · 

1日一冊④

 前著「アメリカの終わり」は、米国大統領選直後に出版され、ベストセラーになった。ワシントンやニューヨークからの一面的な米国情報ではなく、「さまざまな価値観をもつ米国市民のリアル」、日本のメディアが全く報道しない”本当のアメリカ”を描く著作として話題となった。本書、「アメリカの崩壊」は、その続編であり、バイデン新政権が登場してから、いよいよ国内分断が発生して、「内戦寸前」にある米国内部の事情を活写している。人種対立をはじめ、米国民の分断の進行でこれから何が起きるのか、と読者に問いかけ、引き裂かれたアメリカ、急速に崩壊しつつあるアメリカの現実に迫る好著となっている。本書は、まえがき、序章、一章から八章、終章、あとがきに代えて、との構成になっている398ページの大著である。出版社は、方丈社、価格は1500円+税。

 

 バイデン政権についての論評が大半を占めるが、激しいインフレと物品の不足、コロナワクチン接種義務化への反発、不法入国問題、犯罪の多発化、等の米国内政の深刻な対立についての実態を記録しながら、大統領選挙の不正疑惑についての最新情報と、米国外交における大失敗を列挙して、解説を加えている。表紙の裏に、バイデン大統領の成績表と見出しをつけた一俵が掲げられているが、アフガニスタンでの惨めな屈辱的な敗走、対欧州諸国ー完全に信頼を失う、対中政策、40年ぶりの激しいインフレ、ワクチンパスポートへの怒りと不信、治安悪化、ポリコレを口実にした言論弾圧と子供達の洗脳、国境開放政策による不法移民激増、支持率ダダ下がりー中間選挙の見通しの項目を F(failure)=落第、と採点している。

 

 終章は、2022年中間選挙の読み方ーアメリカは公正な選挙を取り戻せるのか?となっているが、まず、中間選挙、民主党にすでに勝ち目はない?との小見出しをつけて、今年11月8日火曜日の中間選挙について予測をたてる。2024年の大統領選挙を占う最も重要な選挙であるから、大胆に占っている。バイデン大統領の就任直後は約60%の支持率が、22年には33%まで下落している。

米国の政治経済の弱体化は、日本にとっても他人事ではない。第二次世界大戦後の米国主導の世界秩序が大きく変化している。2月24日に勃発したロシアとウクライナの軍事紛争を見ても、米国主導で成立した、国際連合の安全保障体制は、全く機能していないどころか、NATOは、紛争を却って拡大させることに繫がったか。 

 

 本書は、日本にとっても戦後の大きな分岐点であることを認識させ、米国のような内部分裂と激しい対立を日本に持ち込んではならないとする、日本国民向けの警世の書となった。著者の山中泉(やまなか・いずみ)氏は、1980年に渡米、在米40年、青森県出身の実業家である。母国日本はもとより、「愛郷無限」の人物である。