「民主党支持の学者がヴァージニア選挙を正確に分析」 

 

(シカゴ発 11月14日オフィス・ファウンテン発信)

 

ジョエル・コトキン氏は長年民主党支持を表明している社会都市学者だが、いつも大変鋭い論評をしており注目している。

拙著『「アメリカ」の終わり』でも2020年の大統領選挙の前に、もし民主党がホワイトハウスを取り、上院、下院の多数をとった場合には、アメリカは「全体主義的」、「連邦政府官僚など一部エリートが支配する」「中小企業経営者やミドルクラス、ブルーカラーには暗い」「中国に親和性のある」社会がやってくるだろうと予測していた。まさにその予測は2021年、現実のものになり、2021年末現在、アメリカはそれ以下の最悪の坂を転げ落ちている状態だろう。

 

 

コトキン氏は、今回のヴァージニア州の選挙結果がでた直後の11月4日に極めて正確な分析をしているのでご紹介したい。

 

(以下、ジョエル・コトキン氏の11月4日のコラム抜粋)

ヴァージニア州での民主党の大敗、更に民主党岩盤のニュージャージー州の知事選の驚くべき接戦、そしてミネアポリスでの「警察の予算カット」政策の敗北は、今回アメリカ政治の驚くべき転換点を示したと言える。

 

それは、復活した「トランプ主義」を肯定するものではないが、伝統的な民主党政治と急進派の不自然な融合である「バイデン主義」を否定するという民意を示した。

 

ビル・クリントンの選対本部長だったジェームズ・カーヴィルが「教職員室ポリティックス」と呼んだ、批判的人種理論、人種による割当、トランスジェンダー、警察の予算削減などを強調することは、民主党の政治戦略の明らかな欠陥だ。これらの政策は、一部のメディアでは人気があるだろうが、一般の人々の間では人気はない。

 

バージニア州選挙の結果は、急進的な教育政策とトランスジェンダー政策の失敗を明らかにした。ワシントンDC郊外の富裕層を中心に、民主党ディープブルーの中心地になりかけていた州が、人種、奴隷制、ジェンダーなどを優先した急進的な教育方針に対する保護者の抵抗があり、その結果右傾化したと言える。

 

選挙直前に行われた州全体の世論調査では、知事を獲得した共和党候補グレン・ヤンキンが民主党のテリー・マコーリフに15ポイントの差で逆転していた。

 

しかし、民主党を苦しめたのは、教育政策の失態だけでなく、共和党がトランプの欠点を2020年から半減させ、バージニア北部の郊外で選挙に勝利したことも大きい。この地域は、州全体と同様に、経済の低迷と猛烈なインフレが有権者の懸念だった。出口調査によると、「税金と経済の心配」が教育よりもさらに大きな要因となり、有権者をヤングキンに押しやった。

 

 

トランプとその一党が、バージニア州の副知事選、州議会、そして司法長官選でも共和党が勝利したという共和党の成果を自分たちのものだと主張するのは当然のことです。これは、同州の地方の数々の郡の共和党支持層が圧倒的にヤンキンを選んだことにもよる。

 

しかし、全米の世論調査によれば、トランプ氏の人気は不幸なジョー・バイデン氏よりもかろうじて高い程度であり、バージニア州を失う可能性も高い。(その後ヴァージニア州を民主党は失った)

 

バイデン 氏はおそらく裕福な郊外の多くの郡を失うだろうが、テリー・マコーリフとは異なり、進歩的な有権者やマイノリティを投票所に刺激するだろう。

 

ある意味でヤンキンは、ポスト・トランプの共和党員のための秘密の調味料を見つけたのかもしれない。

民主党がトランプ氏に固執する一方で、バイデン氏は先週、マコーリフ氏の代理として選挙活動を行った際、トランプ氏の名前を24回も引用した。しかし、ヤンキン氏は、賢明にも、普通の郊外の家族にとって最も重要な問題である「治安、学校、税金」に焦点を当てた。ヤンキンは、穏健派やリベラル派の親たちでさえ、人種差別を学校に持ち込むことを望んでいないことに気づいていた。

ヤンケンのメッセージは、特に2020年にトランプ氏が多数をとることができなかった若年層や中年層の共和党の支持率を、2桁の差で獲得させた。州の人口の約3分の1を占めるマイノリティに対しては、大きな票を取れなかったが、特に旧南軍の首都リッチモンドで重要な要素である黒人票を、トランプ氏よりも30%多く獲得した。

 

 

また、GOPは、元海兵隊員でジャマイカからの移民であるウィンサム・シアーズを副知事に指名したことも賢明であり、支持率ではヤンキンを上回った。人種的マイノリティ(有色人種)を指名し、当選させることは、「形だけのこと」と見做されるかもしれないが、多くのマイノリティ、特に移民は、平均的なアメリカ人よりも文化的に「保守的である」という事実を無視してはならない。