A Former Navy Cadet's Weblog &#59; focused on international relations and security matters-アブダビ港に入港したフランスフリゲート艦と乗組員

A Former Navy Cadet's Weblog &#59; focused on international relations and security matters-中近東におけるフランスの軍事基地拠点

A Former Navy Cadet's Weblog &#59; focused on international relations and security matters-アブダビ郊外のUAE空軍基地にて



UAEの首都アブダビにフランス陸海空軍基地開設して部隊を駐留、
サルコジ大統領がその式典に出席したニュース。

自分もドバイへの2回目の出張の時に、UAEの通信会社と商談でアブダビまで行ったことがありますが、栄華を誇るドバイとくらべると、港町が少し栄えた程度の印象で本当にここがUAEの首都かいなぁ・・・と思ったことがあります。

インド洋で燃料補給をしていた艦艇へ補給する海自の艦艇も結構頻繁に入港していたようです。

港のそばのレストランで食べた海鮮アラビア料理は油濃かったけど、かなり美味しかったです。

アブダビでの一番の思いでは、料理よりも、現地の広告会社の社長と、日本人でイスラム教に改教した女性社員のYさんとスイス人イベントプランナーと一緒に車で行ったのですが、

通信会社の駐車場につくなり、外国人の肉体労働者風のおっさんが寄ってきて、アラブ語で

『怪我して働けなんだよ・・・いくばくかお金を恵んでくらないか???』

みたいなことを涙ポロポオ流しながら、泣き顔でお金を無心してきたこと。

私とスイス人は無視して歩いたら、
イスラム教徒である社長と女性社員はイスラームの教えに則りお金をその労働者に施していました。

そして、ここからが本骨頂・・・

商談が終わり皆で車に乗って帰ろうと駐車場を出ようとしたところ、
クルマの前を“怪我をして歩けない”はずのそのおっさんがスキップをしながら走って道の向こう側のコンビニに入っていくではないですか・・・

あのおっさん・・・なんて迫真の演技やったんや・・・笑

こんなことはよくあるらしく、社長もYさんも苦笑いしながらまたドバイに帰る高速へ・・・


UAEは、ドバイでご存知のように建設現場の労働力も、サービス業のホワイトカラーも半分以上を国外の労働者に依存している国で、軍隊も例外ではなく、士官以上は一応みんなUAE人なのだが、下士官兵の60%くらいはパキスタン、エジプト、バングラディッシュといったような工事現場の出稼ぎ労働者と同じように外国人に依存している。

自分の国では徴兵はしないが、国として油田をはじめ守るべき財産はたくさんあるため、軍備には余念がない、またオイルマネーが潤沢なので西側の先進装備を買うお金もあり、イラクでのテロ活動、イランでの核開発などで周辺脅威(aerial threat)のキナ臭さにはことかかなく、武器市場のちょっとしたバブルが中近東では起きている。

もともと中近東はイギリス統治時代の影響が強く、シャイク(酋長)の多くはイギリスの大学に行ったり、軍隊でもイギリス陸軍の士官学校に留学してりしている。最近はウェストポイントと半々くらいらしいですが・・・

ドバイの酋長のマックトゥーム家のボスである、シャイク・マックトゥームもイギリスの士官学校を卒業して2,3年目の若い尉官時代にJALのよど号ハイジャック事件で飛行機がドバイに降り立った時に陣頭指揮をとった人だ。

現在、世界中の資本を流入させて、発展を成し遂げたドバイだが、デカイ仕事をしている金融コンサルのほとんどもイギリス系の会社だったりする。

アラブ人が石油で稼いだ資本の運用に関するコンサルティング業務はイギリス資本がほぼ独占しており、ロンドンの金融街を通じて世界にお金が飛んでいく仕組みを作っている。

ここでUAEにフランスがデバッてきた意味は非常に大きい。
まぁフランスもUAEに接近していたのは昨日、今日の話ではなく、1995年からmilitary-to-military diplomacyを展開してある程度の同盟関係をこつこつと築いてきている。

その結果、湾岸地域でのアメリカ・イギリスのアングロサクソン同盟がイラクでかなり傷つき、アラブ人の反感を買っている状況を見越してUAEの酋長たちは、アメリカからこれ以上F-16を買ったり、軍事的に米英に依存することを躊躇している。

なぜならばサウジのようにアメリカ軍基地を受け入れるとテロリストの標的になって国内の治安を悪化させる要因になるのと、イラク、アフガンでの米英の成功の見通しがまだまだつかない一方、イランの核開発の脅威も増してきたからだ。

★UAEにとってフランス軍のプレゼンスを自国に入れるということは、以下のような意味があると思う。
1.米英の過度依存を解消して、テロの標的となることを避ける意味。

2.同じく対米依存度を減らして、フランスという新しいパワーを入れることでイランの脅威に対して二重に保険をかけ、イランが容易にUAEを含め中東の隣国に手を出せないようする意味。

3.アメリカ以外の武器を購入して、供給源の調達先リスク分散を行う意味。

★フランスにとってアブダビに3軍の基地を開くことの意味。
1.ペルシャ湾~ホルムズ海峡(アブダビはそのちょい手前に位置する)~アラビア海~アデン湾(ジブチには既にフランス軍の半永久基地がある)~紅海~スエズ運河(NATO影響下)という重要シーレーンを自国のコントロールに置ける意味。
※世界の原油輸出の40%以上、ヨーロッパ諸国に輸出される原油(crude oil)の90%以上が通過するペルシャ湾、ホルムズ海峡を抑えることは、ヨーロッパ諸国の間でフランスの存在価値が一気に高まる。

2.対米英に対するフランスの戦略パートナーとしての相対的価値の向上。
※フランスはこれでヨーロッパ各国の原油が通過する4箇所の重要拠点(ペルシャ湾、ホルムズ海峡、アデン湾、スエズ運河)のうちの3ヶ所をおさえたことになり、アメリカに対するイギリスと同程度の影響力を湾岸・アフリカ北東部地域で確保してことになる。

3.UAE軍のフランス企業のシェア向上の意味。
※現在、アメリカのF-16と競合中だか60機のラファール戦闘機とそのavionics(戦闘機搭載の電子装備)を売込み中、総額8,000億円程度の契約。

4.UAEの時世代エネルギープロジェクトへの食い込み。(日本の競争相手になる・・・)
中東の国は現在どもそうだが、将来枯渇する原油と今のうちに、高い外貨獲得手段としてフル活用し、原油を発電ソースとして活用することを極力避けて、ソーラーや原子力エネルギーに依存しようという強い意欲を示しています。UAEもエネルギー源多様化の国家プロジェクトとして2017年までに2つの原子力発電用の原子炉開発を発表しており、実は日本のメーカーがかなり先行して食い込んでいますが、ロシアやアメリカのGE、ウェスティンハウスと競合しており、フランスがこれにも触手を伸ばし奪おうとしている。
http://www.meti.go.jp/press/20090119006/20090119006.pdf

日本の原子炉設計は、耐震設計に加え、スリーマイルやチェルノブイリで大きく事故ったロシア、アメリカの技術よりも高く評価されているので、フランスと競合しても勝てなかったらイランに売り込みにいけば言いだけです。恐らく5月に中曽根外相がイランに訪問した件も原子炉開発がらみの話しでしょう。イランは地震に強い原子炉を相当欲しがっています。
Iran Earthquake safety of Nuclear power plants
http://www.iranian.ws/iran_news/publish/article_24784.shtml

フランスは軍事のみに限らず、アブダビにソルボンヌ大学の分校やルーブル美術館の支部も立ち上げ文化面で関係も濃くする予定のようです。
Sarkozy's two-day trip includes a visit to the future site of a branch of the Louvre. The arm of the French art museum will be part of a cultural and residential district being built in Abu Dhabi. The city also hosts a branch of France's Sorbonne University.


Sarkozy opens France's first Gulf military base
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/05/26/AR2009052602238.html
First French Military Base Opens in the Persian Gulf
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/05/26/AR2009052602994.html?nav=hcmodule
アブダイ郊外の空軍基地でフランス空軍戦闘機3機の戦闘機駐留部隊。アブダビ市内の陸軍基地にいてフランス陸軍部隊をUAE軍との共同訓練部隊として駐留。アブダビ港内の海軍基地で主にフリゲート艦、補給艦の基地として合計500名程度のフランス軍部隊を常駐させる。
France opens UAE military base
http://english.aljazeera.net/news/middleeast/2009/05/20095266227614925.html
※フランス軍は現在クウェートに米英軍とともに10年更新の基地租借契約を有していますが、今回UAEに中近東では初めてのUAEとの軍事同盟で半永久的に基地使用で合意。

一方で、フランスは今後イランというアラブの嫌われ者と対峙することになりますが、先日の日記でも書いたように、イランが大至急で脅威になるということでもありません。

They May Not Want The Bomb(イランは核兵器ではなく核エネルギーが目的)
http://www.newsweek.com/id/199147

しかも、UAE内のイラン資本はかなりかものです。
UAEはもともと対岸のイランとの貿易の関係が濃く、イラン系のアルフタイムという財閥(トヨタ、ホンダ、パナソニック、キャノンや欧米のメジャーブランドの販売代理店をUAE内で一手に引き受けている会社)が噂では、ドバイのマックトゥーム家よりも金持ちらしいです。この会社は金融コングロマリットとしてシンガポールなんかにも拡大しています。

UAEとイランとの紛争発展は、フランスが入ることでより一層可能性が低くなります。

アメリカはバーレンの第5艦隊を維持して、フランスがアブダビでプレゼンスを強める。

フランスは米英と競争、牽制しつつも、サウジ、ライクから始まりアフガンに抜けるアラビア回廊を協力して作ろうという意気込みをフランスには感じる。

France to rejoin NATO military command
http://www.msnbc.msn.com/id/29639258/
サルコジ政権が1966年にドゴールがフランスをNATO軍から脱退して以来、アフガン部隊を増派してNATO軍の司令部に復活したニュース。


ちなみにフランスは人口、GDPともに日本のほぼ半分の国。

日本はマラッカ海峡の海賊対策として、国際海事局海賊情報センター設置に海上保安庁などがイニシャチブをとったり、インドネシアに巡視船をあげて海上保安大学に留学生を受け入れてアジアの治安維持にかなり貢献しているが、イマイチ空気が薄い・・・

なぜか?と考えると、やはり日本の政治家に国家戦略のような大きな枠組みを考えて作る人がいなく、外交や安全保障の対応がどうしてもパッチワーク程度に過ぎないからだと思う。

あれだけ頑張った陸自のイラク復興も、イギリス軍やオランダ軍に守られていたこともあるのか、アメリカ陸軍のレポートなかだと、本当に人道復興支援のNPOと同じようなレベルの扱い・・・

カンタンに考えただけでも、日本が将来中国の人民解放軍海軍を封じ込めれる、海軍戦略を敷くだけでも、同じコミュニケーションレーンを共有する、仲が悪い韓国どころか、台湾、フィリピンやシンガポール、東南アジアの国々が諸手を挙げて喜んでくれるはずだ。そしたらアメリカはじっくりと、内陸で発生するテロ鎮圧とソフト外交路線に専念できて中央アジアの火の粉も鎮火できる。

こういう話をすると直ぐに戦争をできる日本にするのかという意見があるか、何故日本人は”preparation of war”(紛争を未然に防ぐ準備)と”conduct of war”(本当に戦争をおっぱじめること)を一緒くたにして考えるのか??