齊藤祐作『もう読みたい本がない!』幻冬舎ルネッサンス(幻冬舎ルネッサンス新書),2011年10月,978-4-7790-6050-2

「新刊洪水」「出版物の軽薄化および消費財化」をはじめとする多くの問題から抜け出せずにいる出版業界。本をこよなく愛する著者が、近代出版史をふまえ、出版業界が抱えている諸問題の解決策を提言する。


蝉丸のブログ

「エラく大胆なタイトルやなぁ、オレ読みたい本いっぱいあるのになぁ」と内心ブツクサ言っていたのだが、実際の中身は上記の通り、低迷の泥沼が続く出版業界の問題点を剔抉し、解決策を提示する気合いの入った本だった。しかし。


お褒めのお言葉はここまでだ(笑)。


実は、本文を読み出してからページの4枚目で早くも先を続ける気をなくした。と言うより、腹が立ってきた。というのは、「供給マイナス需要イコール返品」「刊行部数マイナス返品部数イコール実売部数」などといった、フツーの社会人にとってみれば至極当たり前のことを「D=S-K」とか「S=I×C'×P」といった数式で大仰に論じ立てるさまに辟易したから。ビジネスに縁のない学生などを読者に想定するにせよ、こんなん概念図1ページだけで充分よ。と言うより、図自体も要らんわな。第一、下手に数式を使われると、思考の流れが寸断される。


要は、「出版業界は基本的に商品の返品を認める業界で、経済成長の時代には、返品の度合はまだ問題視されず許容範囲だった。ところが出版点数が爆発的に増え、加えて経済が右肩上がりの時期が終わり購買量も減ってしまったので、大幅に返品が増えて経営が苦しくなった。そこでそのマイナスを埋め合わせるために、どんどん新刊を出して当座の売上を稼ごうとしたものの、その結果は火を見るより明らか、出した分がどっさり返品として戻って来た、でまたその場凌ぎに新刊を出して…、という負の連鎖にどっぷり漬かってしまっている」。これだけのことを言うために、数十ページも使う神経が理解できない。


出版ラッシュの説明をする際に、「ナントカ新書やホニャララ文庫が創刊され」というくだりは確かに臨場感を持たせるテクニックであり、出版社名や創刊年を事細かに記すのは許してやるがm(_ _)m、それがいま存続しているかいないか、現在のレーベル名はどうかというところまで書くのは原稿料稼ぎのためなのか、単なる著者の蘊蓄披露のためなのか。そして「セブン・イレブン(正式にはセブン・イレブン・ジャパンだが、本書ではセブン・イレブンに統一する)」とか「GHQ{アメリカを中心に、日本の占領政策を進めた連合総司令部。なおGHQはGeneral Head Quartersの略語である}」、さらには「自民党(正式には自由民主党だが、本書では自民党に統一する)」といった正式名称フルネームのご高説が延々と続くのに至っては、「ワシらをナメとんのか」(by福本豊)と声を上げる外はない。


で、極めつけは、売れ残りの出版物が増えたことに関して、「返品の流れが良くなった」と表現していることで、これでは著者の日本語が貧しいどころか、もう日本語が壊れている。これでは、後の部分で仮に良いことがいくら書かれていようとももう食指が動かん。


ここで著者にお詫びしておかなくてはならない。普通だったらテキトーに紹介してすぐ枕元へポイ、なのだがページを開いてしまったのが運の尽き、おかげでこんなクソのような記事内容になってしまいました。誠に申し訳ございませんm(_ _)m。