夏の想い出。
まだ私が学生だった頃、飼っていた犬のペコが、首輪を外して逃げ出し、迷子になってしまったことがありました。
ペコは、12才で、人間だと80才ぐらいのおばあちゃん。
目もほとんど見えなくて、足腰も弱っているので、ヨタヨタとしか歩けません。
私は、必死になって探しました。
「ペコー❗ペコー❗どこ行ったの❓」
すると、近所の女性が、
「もしかして、犬を探してる?
さっき、野良犬がいたと思ったけど、お宅の犬かも。あっちのほうに行ったよ」
と、教えてくれました。
しかし、その方向を探してもペコはいません。
車に轢かれちゃったらどうしよう…
捕まえられて殺処分されちゃったらどうしよう…
だけど、ペコはおばあちゃん犬なので、ヨタヨタとしか歩けないため、まだそんなに遠くに行ってないはず。
探しながら、ふと、
道路脇の側溝を見て、嫌な予感がしました。
田舎なので、フタもない、深さ1メートルぐらいの側溝があり、用水路につづいています。
まさか、、、
途方にくれていると、
さっきの女性が数人のご近所さんを連れてやってきました。
その中の男性の一人が、
「そこの側溝に犬が落ちてるのを見たよ。犬を捨てるなんて、ひどい飼い主だなーと思ってたけど、あんたの犬だったのかい。」
私は涙を流し、
「捨ててなんかいません。つないでおいたら、首輪をすり抜けて、いなくなってしまって、、」
と説明すると、
「そうかそうか、大事にしてたんだね。」
と言って、一緒に近くを探してくれました。
しかし、側溝をたどってみても、ペコはいません。
川に流されてしまったのかも。
最悪の想像をして、ゾッとしました。
私は、泥だらけになりながら、接続されている土管の中に潜り、必死に叫びました。
「ペコ❗️
ペコ❗」
いつのまにか、10人ぐらいの人たちが、集まってきて、一緒に探してくれています。
私は、土管の奥に進みました。
その奧は、側道があり、どうなっているのかわかりません。
その時です!
土管のトンネルのずっと奥のほうに光る2つの目が!
私が呼ぶと、少しずつ、近づいてきました。
ペコ❗
ずぶ濡れのペコが、よろよろと私のほうに歩いてきました。
目は見えなくても、耳は、まだ聞こえるので、私の声を頼りに近づいてきたのです。
しかし、その手前には、川へ流れ込む水路があり、間違って、そっちに行ってしまうと川へ流されてしまいます。
集まっていた人たちが、棒や板などを使って、ペコを安全に誘導してくれて、ようやく、私の腕の中に。
ほっとして涙があふれました。
側溝は、けっこうな深さがあるので、引き上げるのも大変で、釣り用のタモなどを使って、みなさんが救出してくれました。
本当にありがとうございました。
私は、深々と頭を下げ、お礼を言い、家に帰りました。
雨が降っていたら、水がいっぱい流れていて、助からなかったでしょう…
近所の方が気づいてくれなかったら、検討違いのところを探していたでしょう…
たくさんの方たちが、手伝ってくれなかったら、助けられなかったでしょう…
本当に感謝しかありません。
後で、知ったことですが、いろいろ助けて下さった方たちは、実家の近くにある、父が所有する長屋の人々だったのです。
その長屋の入居者さんたちは、動物好きでペットを飼っている方が多く、行方不明になったペコを、本気で心配してくれました。
今でも、2人ほど、当時から住み続けて下さってる方がいます。
ほとんど話す機会はなく、
向こうは、私が誰かは、わかっていないと思いますが、
このご恩は一生忘れません。
ありがとうございました!