【人材の開発育成が絶対に必要な時代】

応募者増でクオリティーを上げながら価格を下げている性風俗店のデフレ化は、公安委員会への届け出だけで開設ができる合法無店舗化でデリヘルが増えすぎたことが原因である。
アダルト系産業の競争が激しくなると、ジャンル特化して男性客を絞り込んで価格を維持または上げる、女性のクオリティーを上げて価格を維持、低価格化のどれかの道を選択せざるを得ない。ジャンル特化の能力がない性風俗店は、実質的な値下げを迫られている。大阪、東京などの大都市圏での価格競争が特に激しく、格安デリヘルでは30分3900円、40分ホテル代込みで6000円などの店まで登場、アナルファックが無料などのオプションに加えて女性のクオリティーも上げて、低価格化は限界値まできている。
 風俗講師・水嶋かおりん氏は、デフレの中で性風俗嬢や店が生き残るためには人材育成、研修が最も重要であると語っている。
「無店舗型になって、人材の開発育成が絶対に必要な時代になっています。それぞれの女の子がモチベーションをもって働いて、最大限に能力を活かしくことが店も女の子自身にも必須で、一度来てくれたお客さんをリピートさせる力がない女の子はまったく稼げなくなっています。女の子は自分自身と店のために指名客を増やす努力はしないといけないし、店は新人や売り上げのあがらない女の子たちに仕事を教えてあげられる人を準備しておくことが大事です。募集を出せば面接希望はたくさん来ますけど、性風俗の仕事が楽だと思っていたり、店が仕事を教えられなかったり、モチベーションを上げられずに低迷している女の子たちや店がたくさんある。経験がある女の子でもお客さんの流れに合わせるだけで、稼げないって嘆いている女の子の殆どは自分がなかったりする。自分がなにを提供できるかをわかっていなければ、お金を払ってくれる人もいないわけで。性的な技術だけじゃなくてもっと稼ぐために風俗の仕組みだったり、心構えだったり、接客だったりを教えるのが講師の仕事ですね」
 水嶋かおりん氏は技術や知識をつけたい女性たちや風俗店経営者から依頼をされて、性風俗で稼ぐための技術や知識を教えている。その内容は技術だけでなく、コミュニケーション能力の啓発まで行っている。
「性風俗は男性にお金をもらって愛情を提供する場所ですから、出会った瞬間の挨拶や会話からコミュニケーションが始まります。どんな男性とも対等に話ができるために社会問題から政治経済、法律とか国際問題とか。映画とかテレビ、お笑い、あとは年齢的にガンダムとかウルトラマンとか。趣味の面でもプロ野球、サッカー、プロレス、アニメ、萌え系とか。どんな男性にも話を合わせられる知識を持っていることが、いろんな男性からの指名に繋がるんですね。若いキャバ嬢にありがちな自分の話をするのは非常に良くなくて、そういうことも教えています。稼げない風俗嬢で多いのが、男性それぞれに寄り添っていくということができない女の子。テクニックは身につけられても、そこからどうやってお客様を楽しませるかって膨らませることができないんですね。十人十色の男性に寄り添って関係性を膨らませるって能力が必要で、引出しを持っていないとどんどん自分が苦しくなってきますから」
 無店舗化によって顕著となったのは「リピート客を呼べない女性はいらない、稼げない」ということである。店舗型時代は街や店に男性客がつき、店舗の部屋の数が決められていたため、一見のフリー客を空いている女性たちに、ある程度平等に割り振っていく運営が一般的だった。無店舗型時代になって一度来てくれたお客をいかに離さないかというのが運営の最重要課題となり、店側は次も来てもらえる可能性を少しでも高くするために能力ある女性にフリー客をつけるようになった。偏差値や意識が低くて指名客のいない女性は、採用されて出勤をしただけでは仕事がなく、風俗嬢の中で格差が広がっている。
 同じくソープランド講師の愛花氏は、性風俗嬢は個人事業主であるという意識が絶対に必要だと語っている。
「私が教えるのはプロ意識ですね。おもてなし、きづかい、心配り、技術以外の接客もソープではすごく大切なことなので。テクニックはやる気さえあれば、どんどん伸びちゃうので簡単です。ソープ嬢とか風俗嬢に一番必要なのは個人事業主って自覚と、その意識です。今は女の子の外見的なレベルはすごく上がってしまっているので、自立した意識とそれぞれの個性が大事です。ソープはいろいろ制約があるけど、他の業態だったらネットを使っていかに自分を上手に売り込んでいくか。風俗嬢は店に所属しているとはいえ、個人営業です。自営業だって自覚している女の子は、どんどん必要なことを吸収してすごく売れていく。稼いでいます。ただそこを自覚していない女の子が多いので、自営業って意識を持つことを教えたり。すべて個人だよってことを経営者側は教えないし、教えられないんですね。意識を変えてあげて、それをお店が後押ししてあげる。そういう女の子が揃っているところは最強です。女の子が力をつけた後はリレーションが大事で、お店全体でお客さんの情報を共有して、お店のファンであり、女の子のファンでありって状態を作る。店のファンが増えれば、自分の安定収入に繋がるしね」
 裸になりさえすれば、いくらかのお金になるという時代は完全に終わっている。店も女性は講習料金を投資して意識や技術を磨き、どうやって男性客をさらに満足させて自分のファンになってもらうかということを考えている。
「この数年は本当に稼げないので、生き残り競争です。今の性風俗で稼いでいる女の子は美人でコミュニケーション能力が高くて頭もいい。まだまだ社会から白い目で見られるので一般的な仕事のキャリアにすることは難しいけど、能力的にはどこの世界に行っても通用する社会資源になっています。逆にいえば、それくらい厳しいってことです」(愛花氏)
「今の無店舗型で稼げる能力がある女の子は、たぶん営業職とかで一般社会でも通用するはずです」(水嶋かおりん氏)
 二人は揃って、そう言っている。究極のサービス業といえる性風俗のレベルが志願者増やデフレによって向上して、そこで働く女性たちの能力は一般社会に肉薄している状況なのだ。